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「じよう頭様」
これは俺が小学校の高学年くらいに体験した話です。
俺の実家は海の近くにあり、自転車で五分くらい走れば、とある防波堤に着けるんだ。だからよくそこで友達Aと釣りをして遊ぶ事が多かった。ある夏休みその日も釣具を用意し、裏庭の小さな畑で取ったミミズを自転車の前かごに入れAと二人で防波堤へ釣りに出かけた。まもなくして防波堤に着いたが時間は夕方で普段、すくなくとも三人くらいの釣り人がいるのだが今日は俺たちだけだった。さっそくと釣りの準備をする俺たち。するとAが「お!?」
俺「どした?」
Aは海を指し「今なんか、おったで!」
俺「何が?」
A「なんか黒いもんが海面から、でて沈んでいきよった」
俺「そか、大物かもな」
俺はこの時あまり気にとめていなかった。そしてほどなくして竿を持ち糸を海へたらした。Aも竿を海へ振りかざすと
A「おお!?またおった!!」
俺「大物おったか?」
すると、
A「いや?ん?うぉあー!!」
俺「どした!?」
A「なんやアレ!!」
俺は急いでAのもとへ近寄ると、Aは海面に指を指していた。指の先の方を見ると、そこには髪の毛を生やした頭?が、おでこくらい上から海面に出していた。一瞬、最初に考えたのが水死体??俺は頭がパニックなり、とりあえずA二人で釣具をほったらかしに、急いで自転車でその場を逃げた。近くの釣具屋まで走り、息をきらしながら
俺「あれなんだ?水死体か!?」
A「水死体があんな浮き方するかよ!!」
俺「じゃあ、なんだよ!!」
A「しるか!!」
俺たちは興奮していた。
俺「まぁ落ち着こう」
A「ああ」
俺たちは釣具屋にある自販機でジュースを買い自転車にまたがり、ひと息ついた。
A「なあ?さっきの事、釣具屋の人に聞いてみないか?」
俺「そうだな」
Aが古ぼけたその店に入ると店のおばさん(てか、もうばぁさんだったが)がいた。そしてさっきあった事を話した。
おばさん「ほう・・・面白いのー。それは、じようず様かものー」
どうやら、おばさんがいうには盆をすぎるとこの地域の海にはじよう頭様と呼ばれる妖怪がでるらしい。
あくまでも言い伝えだが。その昔ひとりの男が借金をかかえ海に身を投げ成仏できないでいるらしい。俺は知らなかったが、ここいらの人はその妖怪をじよう頭様と呼んでるんだと。
俺「海坊主みたいな?」
おばさん「そんなもんかものー」
すると奥から風呂からあがってきたと思われる旦那さんらしきおじさんが現れ(じぃさんやったけど)「みたんけ?」と聞いてきた。
俺「・・・はい」
そのおじさんは眉間にシワをよせた。
おじさん「ちょい待っときや」
奥の電話機までいきどこかへ電話してる様子だった。そして話は終わり、俺たちに「早くわしの車に乗り!」俺はその唐突な発言にとまどった。
俺「何でです?」
おじさん「ついちょるわ!」するとAが「ちょっと待って下さい!釣具忘れたんで!」っと言うと店をでた。俺もあとについて自転車にまたがり急いでいるAを追いかけた。しかしAは防波堤ではなく反対方向へと走る。やっとこさAに追いつきAの顔をみると顔がひきつっている。
A「ヤバイぜ!」
俺「やっぱ取り憑かれとるかな?」
A「違う!!」
俺「違う?」
A「見なかったのかよ!?あのじじぃのおでこのほくろ!」
俺「ほくろ?」
A「海で見た、あの頭にも同じほくろがついてた!」
俺「じよう頭にも同じものが?」A「ああ、しかもなんでじよう頭っていう名前なのかもわかった!」
俺「??」
A「さっきの店の中に貼ってあったポスター見たか?」
俺「ああ、映画ジョーズのポスターか?」
A「ああ、じよう頭様なんて最初からハッタリだろーよ!」
俺「??考えすぎだろ。訳わかんねーし」
すると後方から、物凄いスピードで軽トラが走ってきた。中をみると運転席に凄い剣幕のあのじぃさんと助手席にはニヤニヤしたあのばぁさんが乗っていた。ヤバイと思ったのもつかのま俺たちを追い越し少し前で停車した。俺たちは逃げる事を忘れ、片足を地面に着き自転車を止めた。まもなくしてドアが開き車からじぃさんとばぁさんが降りてきて、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。ばぁさんは何故かジョーズの曲を口ずさんでいる。
ばぁさん「じゃーらん♪じゃーらん♪」
じぃさんの方は曲に合わせながらオーケストラの指揮者のように両手を動かしていた。
俺「なんだ?こいつらイかれてるんか?・・・」
だんだんと次第に距離が近くなってきた。
ばぁさん「じゃん♪じゃん♪じゃん♪」
もう訳分からん恐怖で足が動かない。となりを見るとAがガチガチ震えながら何やらブツブツ言っている。
A「・・んな・・・」
俺(やべ!壊れたんか??)
A「・・・な・・めん・・」
するとAがいきなり自転車から降た。
「・・・なめんな!!なめんなやー!!こらー!!」と発狂しがら突進したかと思えば、あのK-1のレミーボンヤフスキーに負けない、いやそれ以上かもしれないくらいの華麗なジャンピング二ーをじぃさんに食らわせた。
ガコッ!!鈍い音だった。
じぃさんは手を顔面に覆い「ごぉー!!」っと叫びながら、地面に倒れ足をバタつかせ、もがいていた。
そのスキに俺たちはなんとか逃げきる事ができた。
んで、そのあとの事は覚えてない・・・のち夫婦がどうなったか?結局、彼らはなんだったのか?すべては分からないし、知りたくもない。もしかしたら、俺の遠い昔の夢だっかも知れないが何故か鮮明に記憶に残った出来事だった。
とりあえずあれからは、もう釣りには行っていない。
終わりチャンチャン
作者バウ