友人の話なんだが、男4人(ABCD)と女1人(E子)で心霊スポットに行ったんだ。
5人とも仲が良くて、別々に同じ事を聞いたから作り話なんじゃなくて、ガチの話だ。
その心霊スポットは今は使われていないトンネルで、そこに行ったのは夜8時ぐらい。
Aの普通車に残り4人が乗り込んで行ったらしい。
そこは、私は地方から出てきたばかりで知らなかったが、この辺りではかなり有名らしい。旧○○トンネルっていう感じで呼ばれている。
5人が着いた時には、1台の軽自動車が道路脇にあったらしい。人は乗っていなかった。
「有名な心霊スポットだからな。まだ少し早い時間だけど、この車のやつも俺らと同じ肝試しか。」
「これで知らない人が大勢いたら興ざめだよな。」
みたいなことを話しながら車を路駐して、トンネルに向かって歩いて行った。
トンネルの入り口にはロープが張られてて、それを乗り越えて中に入ったのだが、先ほど見かけた軽自動車の持ち主と思われる人物とも出会うことはなかった。
メンバーのうちA、Bは柔道部でガタイはいい。
C、Dはバイトぐらいしかしてないが、Dは身長180を超えている。
ちなみにE子は頭は弱いんだが、可愛くて巨乳。
もちろんトンネルの中は電気は通っていない。5人は携帯のライトで辺りを照らしながら中へと進んだ。どんどん奥へと進んで行ったが、特に何も起こらなった。
最初の頃は5人で互いに驚かし合いなどをして、せっかくの肝試しを盛り上げようとしていたが、やがてそれにも飽き、そろそろ引き返す事にした。
帰り道の途中、先の方に人影が見えた。
2人組でギャル男まではいかないが、凄くチャラそうな男だ。 あぁ、軽自動車の持ち主はこいつらか。
「おーい、幽霊見えた?」
見た目通りのノリでいきなり話しかけてきた。
「いやぁ、見付からないっすね。そっちはどうですか?」
Aは答える。
「こっちも全然だわぁ。」
お互い足をそこで止めて、チャラ男2人と談笑する。
チャラ男の一人が、
「なぁ、お前ら旧々XXトンネル行った事あるか?」
なんて事を聞いてきた。
A、C、Dはこの辺りが地元だからその旧々XXトンネルがどんな所か知っていた。
『旧○○トンネルはヤバい心霊スポットだが、旧々XXトンネルはもっとヤバい場所』として地元では有名な心霊スポットらしい。
話には聞いたことがあっても3人とも行った事がないと伝える。
「だったら俺らが連れて行ってやるよ。」
チャラ男たちがそう言い始めた。
「えぇっ、悪いですよ。」
「車で何回も行った事から大丈夫だって。気にすんな。」
断ろうにも俺らに着いてこい!と言わんばかりの態度でチャラ男たちは5人の前を歩き始めた。
仕方なく後をついていくが、どう断ろうかと考えている。
5人ともノリは良い方だが、さすがに心霊スポットで知り合った初対面のチャラ男と遊ぶ気にはなれない。
「うわ、俺終電の時間なんでそろそろ帰りますね。」
「あぁ、そうだなよな。お前終電早かったもんな。俺らこいつを駅まで送っていかないといけないんで。」
Cの言葉にAは同意を打つ。
もちろん今は午後九時半を回ったぐらいで、終電というのはウソ。
「おいおい、終電なんて気にするなよ。早く全員乗れって。」
「そうそう。それになんだったら俺らが家まで送ってやるから、行こうぜ。」
その時5人はやっとチャラ男がおかしい事に気付いた。
「心配するなって。もしかしてビビってんの?」
「時間は大丈夫だって、ちゃんと車で送るから。」
そんな事を言い始めて一向に食い下がらない。
仕方なく5人は半ば逃げるようにしてその場から立ち去った。
チャラ男が後ろから5人を呼びながら着いてきたが、無視をし続け歩いていたらいつの間にかいなくなった。
5人は安堵してすぐに旧○○トンネルから去った。
「あいつら絶対頭おかしい。」
「あぁ、だってそもそも軽自動車に大人7人も乗れないだろ。」
AとCはそんな話をしていた。
チャラ男の事なんてすっかり忘れていた一週間後、E子にAから電話がかかってきた。
「お前一週間前の事覚えてるか?」
「肝試しの事?覚えてるよ。」
「じゃぁ、2人組のことも覚えるよな?」
もちろんE子は覚えている。
「あの2人組…俺ら旧々XXトンネルに車で何回も行った事があるから、連れて行ってやるって言ってたよな?」
「うん、そう言ってたね。だからそれがどうしたの?」
何度も念を入れて確認するAにE子は問い返す。
「だよな、そう言ってたよな。いや実は…」
少しAは口を濁らせながら話す。
「今日聞いた話なんだけどさ、旧々XXトンネルは旧○○トンネルと違って車では行けない場所にあるだ。」
「…えっ?だってあの2人俺らの車に乗れって…」
「だからおかしいんだよ。だって、旧々XXトンネルは旧○○トンネルのすぐ近くにある階段を上って行くんだから。」
その瞬間E子はゾッとした。
もしあの時車に乗っていればどうなったんだろうか?
A曰く、「男はボコられてE子はまわされて終わりだったな。人間一番怖いわ。」
作者山田太郎