この話しは俺が二十歳の夏に体験した話し…
学生だった俺は夏休みにサークル仲間のSの別荘に八人で行く事になっていた。
Sは金持ちのお坊ちゃんで「T湖に別荘があるから皆で行こうぜ」と提案してきた。
俺は断る理由もなく彼女と一緒に行く事になった。
参加者は男5女3の八人…
まぁいつものメンバーってやつで気も使わないし気楽な旅行だと思っていた。
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マイクロバスを貸し切り免許持ちの3人が代わりながら別荘に向かった。
社内は免許持ち以外の5人で軽く宴会になって運転組にブーブー言われていた
俺は免許無しなんで言われる側
それもまた面白く酒もガンガン飲んでほんと楽しい旅行だった。
別荘に近づくにつれ酔い潰れて寝る奴やまだまだ飲むぞって奴がいたり運転放棄した二人も宴会に参加したりしていた。
運転は勿論Sだ。
別荘の場所を知ってるのはSだけなんだから当然なんだが本人は納得してないのかブツブツ愚痴っていた。
「もうすぐ着くぞ」
って言うSだが車はどんどん山道を上がっていく別荘?湖畔じゃねぇの?と俺は思ったが勿論口には出さない
山の頂上に一件の建物がありそれがSの別荘だった
周りに建物はなく勿論買い物する場所もない
どうりで途中のスーパーで大量に買い物する訳だと思い別荘に荷物を運び込む
確かに静かだしゆっくりできるが…静か過ぎだろ!って感じだったが皆はそれなりに気に入ったみたいだ
別荘って響きが良いんだろう
女子はワイワイ騒いでいた
「今日は遅いしゆっくりして明日は山で山菜獲りしよう!松茸もある!かもな」とSは笑いながら言う
皆も松茸と言う言葉に絶対見つけてやるとやる気満々って感じだ
俺は…めんどくせぇってのが本音だが盛り上がってる所に水を指すほどKYじゃない
晩飯は買ってきた食材でバーベキューをしそれなりに楽しんでその日は皆で早めに寝た
次の日朝早くからSに叩き起こされ山に入って行った
割りと簡単に山菜が採れ皆楽しそうだった
俺は…まぁそれなりに楽しんでいた
彼女と二人でなかったら楽しくはなかったかもしれないが…
こうなると皆は俄然松茸狙いでどんどん山の中に入って行く
帰り道はSが木に印を付けていたから心配はないがはしゃぎ過ぎて誰か怪我でもしないか心配だった
すると俺の彼女が急に腕をガッとつかんだ
転びそうになったのかと彼女を見ると頭を下げ震えていた
「どうした?」と聞くと
何も答えずある場所を指差した
何だよ?と思い指差した方を見ると…
俺も固まってしまった
首…吊り?
木に人らしきものがぶら下がっていたんだ
俺はなんとか気持ちを落ち着かせまずSを呼んだ
Sも声をあげそうになったが皆に知れてパニックになるのを考え俺が口を塞いだ
取り合えず皆にはここで休憩だと言い
俺とSは首吊りらしきものの確認をしに行く事にした
彼女はまだ震えていたが他の女子に体調が悪いみたいだと伝えあずけて行く事にした
近づくにつれそれは間違いなく首吊り死体だって思った
Sも感じたらしく足を止める
そりゃ近くで見たくはないよ!
でも警察に通報するにしてももし人形だったら大変な事になるし俺は足を進めた
Sも少し後ろを着いてくる
木の下まで来て確認した
首吊り死体だ
気持ち悪くなり吐き気がしたがなんとか我慢した
Sも涙を浮かべながら耐えているみたいだ
「早く戻って警察に通報しよう」
ここでは携帯は圏外だ
Sはうなずきその場を立ち去ろうとした時
「うわぁ!」
と叫んで尻餅をついた
何だよ?と思い「どうした?」と言うと
「今…死体の目が開いた」と目を閉じながら言う
恐る恐る振り返ってみる
が…目は閉じていた
ホッとしてSに閉じてるじゃねぇか!と怒鳴ろうとしたが辞めた
こんな状況じゃ頭が錯乱してそんな風にもなるだろうと思ったからだ
俺はSを起こしその場を離れようとした時
ドサッ!と音がし振り返ると
ロープが切れ死体が落ちていた
死体の目は見開き俺を見ているみたいに目があった
俺とSはうわぁ!と叫びながら皆の元に戻った!
「早く!別荘に戻るぞ!」
と訳も言わず皆を走らせる
叫び声を聞いたからか皆理由も聞かずとにかく走って別荘に戻った
別荘に着くと何があったかを伝え皆で帰り支度をした
早くこの場から立ち去りたかった
Sは携帯で通報しようとしていたが何故か圏外でつながらない
昨日はつながっていて親に連絡していたはずなのにだ
勿論全員の携帯が圏外だ
絶対におかしい!あり得ない状況に皆パニックで女子は泣き出して早く帰ろうと叫んでいる
とにかく携帯のつながる場所まで降りて警察に通報する事にし皆で車に飛び乗り走り出した
山道を凄いスピードで降りる
危ないが誰もスピードを落とせとは言わない!
山を半分位降りると携帯の電波がたち警察に通報する為路肩に止めSが電話し詳しい場所を伝えた
一安心し車を出そうとした時
笑い声の様なものが聞こえた!イカれた奴の笑い声の様な気持ちの悪い笑い声が!
皆も聞こえたらしくまたパニックになる!
Sは焦って車を走らせる
今までよりも早いスピードで…
その時
ボンネットにさっきの首吊り死体が降ってきた
shake
Sはハンドルを誤り木に激しく衝突したみたいだ
と言うのもこの瞬間から記憶がなく気付いたら全員病院のベットの上だったからだ
通報を受けて現場に向かう途中で事故っている俺たちを見つけた警察から木に衝突して病院に運ばれたと聞いたからだ
事情聴取は退院後と言う事になり俺たちは病院でゆっくり休養した
誰も事故の話しはしない
あの時ボンネットに降ってきたのは間違いなくあの首吊り死体だ!
近くで見た俺とSしか解らないだろうが
退院後俺とSは警察に行きあるがまま事情を話した
ボンネットに降ってきた死体の話しをした時その場にいた二人の刑事は無言で目を合わせた
そりゃ信じないだろうなと思った
だけど間違いなく降ってきたんだ!
刑事は「首吊り死体は確かにあったよ。通報してくれた場所にロープに吊られていた。身元はまだ不明だがすぐに解るだろう」と言う事だった。
………
ん?
ちょっと待てよ
死体は事故った車の近くにはなかった
納得は出来ないがまぁどうしょうもない
だけど!
首をロープに吊られていた?
そんなはずない!
俺とSは木から落ちたのを見たんだ!
俺と目があった!あの目は忘れたくても頭から離れない!
俺とSは目を合わせたが
追及はしなかった
警察が現場で見た状況を俺たちに伝えたんだ
それが現実なんだろうと思ったからだ
納得はしてないけどね!
挨拶をし帰ろうとした時…
「そうだ、さっきの首吊り死体がボンネットに降ってきたって話しなんだがね」
と刑事が言う
「信じる訳にはいかないんだが…死体は山の奥で見つかった訳だし…」
何だ?何が言いたい?と思い聞いていた
「事故をおこした車のボンネットに手形が着いていてね………首を吊った死体と一致しているんだよ」
shake
やっぱりあれは幻なんかじゃなかったんだと思ったと同時に背筋に冷たい汗がながれた。
作者キアロヒ