私の生まれ育った町には三年に一度の恒例の行事があります。
それは地区の小学生の4〜6年生の男子と父親達だけで、ある修行山に修行に行くものです。
(女のひとは山に入ることができない)
谷から落とされそうな体勢で良い行いをすると大人たちに誓ったり、岩の壁を登ったりとけっこう危険なものです。
日が昇る前に母親達に見送られながらみんなで貸切バスに乗り出発。
早朝にお寺に着き、みんな白い下着で池のようなところに入り、身体を清めさせられました。
季節は夏でしたが早朝かなりの寒さ。
続いて登山口までバスで向かい、みんな白装束に着替えて登山開始。(白装束といってもただの白いジャージに白いスニーカー)
何人かの登山客とすれ違いながら
「ようお参り」
と挨拶を交わしながら登っていきました。
しばらくして石の脇道が現れ、数メートル先には道がきれています。よく見るとすぐ先は断崖絶壁。
すると近所のあっさんが
「今からここで谷のぞきをやるからな」
といい、子ども達が一列に並ばせました。
先頭の子は命綱として両肩に綱引きの綱みたいなものを巻かれます。
そして谷の下を覗くように体勢で足を掴まれ落とされそうな状態で、
「悪いことせんかー!」
「親の言うこと聞くかー!」
と大人に問われています。
私の順番が回ってきて綱がまかれ、おっさんに
「顔の前で強く合掌せんと方から綱が外れるから気ぃつけろよ」
と言われ、岩の上に下向きに寝させられた状態で足を掴まれ、グイグイと押されました。
しかし、ゴツゴツとした岩の上なのでなかなか前へ進みません。
おっさんに
「自分で前いけ!」
とケツを叩かれ、周りの大人たちの笑い声が聞こえる。
むかっときた私は合わせていた手を開き、
恐る恐る手で前に進み、谷のぞきをしました。
想像以上に怖ぇ~と思っていると
「悪いことせんか!」
「親のいうこときくか!」
という問いかけるおっさんの声に返事をしながら谷の下を見ていると、霧に包まれていてほとんど見えなかったのですが、おっさんに上げられる瞬間に
河原と赤い布を巻かれたお地蔵さんが見えた気がしました。
ぞくりとしましたが、
修行の山だしそんな場所も珍しくはないと1人で勝手に納得しました。
その後私達は4メートル程の岩壁を登ったり、修行用の道を登っていき、ようやく頂上に。
しかし山頂でもだんだんと霧が濃くなって、景色は見えない。
みんなしばらく山頂で休憩してから普通の登山道から下山する予定でしたが、上級生三人が暇なのでとっとと走って下山してバスでゆっくりしようと私を誘ってきました。
私もそんなに疲れては居なかったし、
何もない山頂よりもバスでお菓子でも食べながらゆっくりしたかったので、4人で走って下山し始めました。
すると途中で霧が更に濃くなっていき、
ついにはもう2メートル先も見えなくなっていました。
光も余りささない為か肌寒い。
全員白装束だったので、先を走っていた上級生の姿も見えませんでしたが、
足おとはどんどんと進んで行くので、遅れないように走ってついていきました。
すると地面が土から岩になった瞬間後ろからグイっと腕を引っ張られました。
驚いて後ろを振り向き確認するが、誰もいない。
「ちょっと待って!」
と前の上級生たちに叫びますが先に行ってしまったのか、誰の返事もない。
怖くなって後ろを振りかえらないようにゆっくりと前に進んで行こうとすると、すぐ先の道が切れて絶壁が現れる。
ここはさっきの谷のぞきの場所で普通の登山道を下っていればここには出ないはず。しかも上級生たちはここを進んでいった。
パニックになった私は泣きながら全力疾走で山を下って行きました。
すぐに登山口に着き、バスに乗り込みましたが上級生たちの姿はない。
バスの運転手さんに聞いても私より早く戻ってきた子は居ないと言いました。
運転手がいた安心感からか落ち着きを取り戻してバスの中でみんなを待っていると、1時間程してからみんな登山口から出てきました。
そのあと私は勝手に一人で下山したと思った大人たちに怒られました。
さっきの出来事を説明しましたが信じて貰えず、
あの上級生たちに聞いても自分たちはみんなと一緒に降りてきたといっていました。
私があのとき見た上級生たちは一体何だったのでしょうか。そして私の腕を引いてくれたのは。
以上がわたしの体験した不思議な体験でした。
作者鬼豆
初です。みにくい文ですみません。