うちの実家は、霊の通り道。
玄関から入り、俺の部屋の窓へと出ていく。
実家は平屋の一軒家。玄関から居間に入る扉は木枠のガラス戸。居間から俺の部屋へは引戸でいつも開けっ放し。
ガラス戸や玄関ドア、部屋の窓は閉めてても問題はないが、俺の部屋の引戸を閉めておくと居間で足音がしたり、ものがなくなったりと大変な目にあう。だからだいたいは開けっ放しだ。ガラス戸を開けおくと、居間に入ってくる霊のシルエットが見えて気持ち悪い。
ここを通る殆どの霊は悪さをぜず、ただ通るだけだ。でも、たまーに変な事をするやつがいる。
俺には5つ下の妹がいて、その妹が先に学校から帰宅してソファーに座っていると、部屋からすね毛びっしりの2本の生足がでていたそうだ。俺の部屋の入口は食器棚の横にあり、ソファーからは引戸が見えない。だから妹はその生足を俺だと思ったみたいだ。
俺はよく ふざけてあほうな事をする。実際に部屋から足だけだしてシンクロの真似事をして妹を笑わしたりしてたので…また兄ちゃんアホな事やってるんだと思って見ていると、その生足はズズズッと引き摺られるように部屋に引っ込んだ、様子を見に行こうとソファーから立った瞬間、生足だけが俺の部屋から玄関へダダダダダダッと走り去っていったそうだ。その直後俺が帰宅して、その話しを聞いてゾッとした。
ある時、妹と親が3泊2日の旅行にいき、家には俺一人になった。さすがに慣れてるが、正直怖いので、2人の友達,AとBをよんだ。その友達は俺の家の事をよく知っていて、肝試し感覚で遊びに来てくれた。
Aが酒を大量に買い込んできたため、11時にはベロベロに酔っぱらって、俺の部屋で雑魚寝する形になった。どれくらいたったかわからないが、部屋全体が引戸がガタガタなってうるさくて目が覚めた。二人の友達もほぼ一緒に目が覚めたようだった。誰が消したかわからないが、部屋の電気は消えていて、点けようと立ち上がり紐を引っ張っても点かない。それでも月明かりが部屋を照らしていて二人が起き上がって戸の様子をみているのがわかった。
戸が閉まってるのに気づいたが、それにしても、戸がガタガタなりすぎだ。戸を閉めている時は居間で足音がするくらいなのに、ものすごく焦ってる人が引戸をうまく開けれず手こずるかのようにガタガタいわしてる。
いやな予感はしたが、悪さをするやつはいないだろうと、戸の引手に手をかけ、思いっきり戸を開いた。
いやな予感ってあたるもんだ。すぐ目の前には何もなかったが、安心して下を見た瞬間、「ひゃぁ!!!!」と思わず女のような悲鳴をあげて、後ろのAに倒れ込んでしまった。
下にはすね毛びっしりの生足2本、切断面は真っ黒。俺はその足から目が離せないでいると、俺とAから少し離れた位置からBが「んなぁぁぁぁ」っと面白い悲鳴をあげ気を失った。
目を離したすきにその2本の生足は、垂直に2本並んで立っていて突然、居間から玄関にむかって走りだし、玄関の扉の前で止まって消えた。
そのあとは特になにもなく夜が明けたが、Aと俺は一睡もできなかった。
朝方、AがBを無理やり起こした。寝ぼけていたがすぐに昨日の件を思い出したみたいだ。
Bの話によると、Aに倒れ込んだ俺とAの間の床に、禿げ散らかした四角いメガネをかけた50歳くらいのおっさんの頭部が、Bの方向を向いていたみたいだ。おっさんの目はぐるぐる回ってBを見てピタっと止まった所で記憶がなくなったみたいで、生足は見てないといった。
今夜も一人なので、AとBに泊まらせてほしいと頼んだが、2人共実家の都合でダメだというので、もう一泊してもらう事を頼むが、Bには断られた。
昼間はAの家で寝かせてもらって夕方家に行く事になった。Aがある提案を申し出た。どこの情報だかしらないが霊は卑猥なものを嫌うらしい。半信半疑だが何となくおもしろいので、近くのレンタル屋で初めてのAVコーナーで「ナースの楽園」と「奥様は19歳」を興奮しながら借りた、ちなみに行きは男性店員だったのに借りる時は女性に代わってて最悪な気分だった。
家に帰ってきて早速Aがビデオの電源いれて、「ナースの楽園」をセットしてビデオ鑑賞になった。いつあの足が現れるかわからない恐怖と、早くビデオが見たいという卑猥な気持ちで複雑だったが、すぐに恐怖なんてどっかいってしまった。っというか足なんかどうでもよくなっていた。
一本目が終了した。ちなみに俺の部屋の戸は開けてある。2本目「奥様は19歳」突入。途中Aが席をたってトイレにいった。たぶんイロイロと我慢できなくなったのだろう。俺はあとでもう一回見てからしようと決めた。スッキリした顔で居間にもどってきたAは静かに俺の部屋を見るようにとうながしてきた。
いた!!
足だ、しかも足と足の間からエイリアンが左ななめ上にチョコンと出ていた。怖さより笑いが込み上げてきてた。
Aも同じ思いだったようで、目を合わせた瞬間ゲラゲラ笑ってしまった。3本の生足はすっと立ち上がり昨日とは逆の方向にはしっていった。つまり俺の部屋の窓方向に。しばらく笑いがとまらなく、その夜はぐっすり寝れた。
それからあの生足を見ることはなくなった。
作者欲求不満