警察からの依頼で私はある強盗犯のお祓いをする事になり、警察官に誘導され留置場へと向いました。
留置場に入ると、異様な空気が漂いましたが霊的なものでは無く、事件を犯したであろう容疑者たちが発するオーラの様なものであろうとおもわれました。
が…問題の強盗犯が留置されている場所に近づくにつれ、空間自体に変化が見られ、まるでその場所に近づくことを拒んでいる様にさえ感じられました。
わたし「冷房をかけているんですか?」
警察官に尋ねるがかけていないとの回答、
それほどこの場所には冷気がかんじられました…
その犯人はコンビニで強盗をはたらいたとの話を聞いて私はその犯行現場を聞き出して、前日にその現場に行ってみました。
コンビニに着くと、駐車場に座り込み若者が数人、談笑しながらこちらをうかがっているのが見えました…
あれ?
彼らのウチの1人に何か違和感を感じたのです。
嫌だなぁ…と思いつつたむろしている若者の横を通り過ぎると彼らの1人が声をかけて来ました。
そちらを見ると先ほど違和感を感じた青年でした。
「お・ね・え・さ・ん!可愛いねぇ!俺たちとさぁ!メシ行かね?」
ヤダ!ナンパ…?あら?意外と良い男…
いわゆるイケメンでチョット、キュンとしたのですが…
彼をよく見ると肩口に何か禍々しいものが…あ、ダメだこいつ…と思い私は彼にこう言ってあげました。
「あなた、昨日か一昨日?心霊スポットって呼ばれてる場所に行かれませんでした?」
すると彼は、「え?何で知ってんの?確かに昨日行ったけど?でも何も無かったぜ?」
さらに私は、「あなたの肩口に若い女性の霊が憑いてますけど?
早いウチにお祓いした方がイイかも。
あなたには危害を加えようとはしてないみたいだけど…
どうやら、あなたが関係を持った女性には危害を加える可能性があるわね。
もし、その気になったらここに電話頂戴。」
と彼に私の事務所の名刺を渡しコンビニの店内へ入りました。
後ろでウオ!あいつ名刺貰ってやがる!いいな〜!みたいな声が聞こえる中私は調査を開始。まず、店内をぐるりと見回してみました…が、何の違和感もありません。
トイレも見てみたのですが異常なし。
店員さん…店長さんと思われる男性にもなにひとつ異常は見られませんでした。
ここに来れば何か手がかりがと思ったのですが、半ば諦め掛け、一応店員に話を聞くことにしました。
すると、丁度あの事件の日、アルバイトで働いていたとゆうAさんと話をすることが出来ました。
彼によると、肉眼では見えなかったがガラスに何だか奇妙なものが写っていたと聞かされました。強盗が来た後、それは居なくなったと…
ちょうどこの辺と場所を教えてもらいましたが、特に異常はありませんでした。。。が。。。
やはりこの場所から彼に憑いたのか。そう確信しました。
幾つかの鉄格子を抜け彼が居る牢に着きました。
彼はブツブツと何かをつぶやいていましたが特に暴れる様子は見られませんでした。
「まさか霊媒師に頼む事になるなんて…異例の処置っすよ」
若い警察官はそう言って牢の鍵を開けました。
牢の中は意外と清潔感がありスッキリしていました。
「私もまさか強盗犯に祓いをするなんて夢にも思いませんでしたよ(笑)」
そんな会話を交わし彼をもう一度見ました。
強烈な怨念が彼を取り巻いていました…
医者にも見てもらったんですが異常ないって言われた…
そう警察官が言った時です。
急に彼は立ち上がり壁に頭をぶつけ始めたのです!
あまりに急だったため、警察官は動けず、彼は二三回壁に頭をぶつけた後、そこに倒れこみました。
恐る恐る警察官は彼に近づき彼を抱き起こした時でした…
また急に彼は立ち上がり、今度は警察官の顔に頭をぶつけ始めたのてす。
すでに壁にかなり強くぶつけていたためか頭蓋骨が砕けていて、『ぐしゃり、ぐちゃり』と嫌な音が響きました。
警察官は完全にパニックに陥り、うわぁああ!と牢から飛び出して行き、私と彼の二人きりになりました。
流石の私も少し焦りましたし、それに、たとえ彼に憑いた彼女を剥がす事に成功したとしても、彼の事は救えないかもしれないと頭をかすめましたが
そうも言っていられません。
まずは、彼の動きを止める必要があります。
祓いに使うために持ってきた道具をカバンから出し、今まで学んで来た術を精一杯施しました。
かろうじて彼、いえ、彼女を止めることに成功しましたが、ここからが本番で、祓いの儀式をしなければなりません…
ふう、と呼吸を整え、彼女に札を貼り付け術をかけ始めました。
「あなたはこの方に恨みがあるのですか?」
この問をしたのは私ではありません。
男性とは思えない完全に女性の声でこの人間の身体を使い喋りかけてきたのです。
私はいいえと答えました。
すると彼女がこう続けました。
憑き者「ならばこの男をこのままにしなさい。」
私「なぜ?」
憑き者「救えぬぞ?この者は私なしでは生きられない、この通り頭蓋骨は砕けちり完全に致死量の出血もしている。」
私「ええ、彼は救えないかもしれない。でも私はあなたは救う事が出来るわ。」
憑き者「え?ほ、本当?」
私は彼女の目を真っ直ぐ見て大きく頷きました。
術が効き始めたのは開始から約3時間は経過した頃でした。彼女は最後、『あ……り……が…と…ぅ』と笑みを浮かべ消えて行きました。
ガクッと力が抜け私はそこに崩れ落ちました。
牢のそとから警察官が身を震わしながら、お、終わったんすか?と尋ねて来ました。
ハイと返事をすると血がベットリとついた顔が安堵の表情へと変わるのがみえました。
後から聞いた話ですが、強盗を働いた彼は一命をとりとめたそうです。
作者退会会員