これはある雨の日に車を走らせていた時の話。
とは言っても、別に好んで雨の日にドライブに行っていたわけでもなく
たまたま夜釣りをした帰りに雨が降ってきた時の話です。
朝から曇り空で、降水確率も高かったのですが誘惑に負けて釣りに行ってしまい
しかも、ほとんど釣れない状態で帰ることになりました。
雷が光りだし、あっという間の土砂降りとなり海岸沿いの道路を家に向かって
走っていました、そしていくつかのカーブを抜けたさきから
視界がかなり悪くなってきていました。
それでも慣れている道だったので結構なスピードを出して走っていました。
長い海岸沿いの道路を走っていて眠気も襲ってきた頃、目の覚めるような出来事が
起こりました、全身白いカッパのような物を身にまとった人らしきものが
突然道路に飛び出してきたのです。
慌ててブレーキを踏みましたが、この時はやっちまったと思いました。
完全に間に合わず、これは確実に人をはねてしまったと思いましたね。
でも、おかしなことにぶつかったような衝撃もなく、急いで車を降りて
まわりを見回しても倒れている人もいない、念の為に車の下もくまなく確認
しましたがまったく気配がありませんでした、ずぶぬれになりながらも
一緒に乗っていた友人と二人で30分ほどまわりをみまわしました。
が、結局ガードレールのむこう側にも誰もいませんでした。
車に戻り色々考えてみるとだんだん怖くなってきて、自分たちの思考回路も
判別不能!これはもう第三者の力を借りるしかないと思い
誰に話すか色々考えた結果、その場から一番近い交番に行くことにしました。
田舎の交番だったのでおまわりさんも暇そうにしており、私達がいくとすぐに
むこうから話しかけてきました。
全身ずぶ濡れの私達をちょっと不思議そうな目で見ながらもそのおまわりさんは
私達の話に耳を傾けました。二人ともその時はかなり動揺しておりうまく話せず
に苦労しましたが、おまわりさんは「焦らなくてもいいからゆっくり話しましょうか」
と気遣いをみせてくれました。
話が人をはねたかもしれないということでおまわりさんの表情がだんだん険しくなって
くるのが感じられましたが、その事故の場所を聞いたところでおまわりさんは
私達の話を止め、こう言いました。
「君たちがはねた人ってもしかして全身真っ白な服の人じゃなかった?」
私達はそれを聞いて無言で頷きました、何故そこまで知ってるんだろう
確かに人らしきものをはねたとは言いましたが、その風貌は一切いっていませんでした。
おまわりさんは続けてこういいました。
「実はね、君達の他にも同じ場所で人をはねたって話を今まで三件ほど聞いてるんだよ、
しかもそれは決まって雨の日なんだよ」
それを聞いて私は背筋が思わずザワザワするのを感じました。
「一件目は老夫婦で、私も一緒にその場に行ったけど何も見つけられなかったから
結局お年寄りだし見間違いだろうって事で調書だけとってかえしたんだけどね」
「二件目はいつだったかなあ、家族の方が息子さんと一緒にきて、人をはねた
かもしれないということで、それもまた同じ場所だったんだよ。
偶然にしては出来すぎと思ったけれど何も出てこないんじゃこっちもそれ以上
調べようもないもんだから結局その時も返したんだけどね。」
「あれはいつのことだったかなあ、」
そう言うおまわりさんは記録をみながらそれらしき文章を探しはじめました。
しばらくすると「ああ、あったあった、え~と去年の8月26日だね」
「え~今日は・・・・・」おまわりさんの口が止まりしばらく沈黙が続いた後
口を開き「今日は8月26日だよね」
作者ルアー