私の家は田舎の山奥で、しかも他の民家から離れて一番奥にぽつんと建っている。
ある夜、職場の歓送迎会があり、お酒もちょっと飲んで、タクシーで帰宅した。
いつものように大きな通りで下りて、酔い覚ましに家までの300mほどをとぼとぼと歩いて帰っていると、ジャラ・・・・ジャララ・・・・と背後から音がした。
山奥の一本道で外灯も無く、木々の間からこぼれる月明かりだけが頼り。
音がしたほうをじっと見ても暗闇ではっきりとはしない。
気のせいかと思い、また歩を進めるとまたジャラ・・・・ジャララ・・・・、そしてかすかに生臭い匂いと、「ハァハァ」と息遣いも聞こえる。
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変質者?と思った瞬間血の気が引いた。
ちょっと離れた団地で、痴漢騒ぎがあったばかりの頃で、犯人はまだ捕まっていない。
家まであと200mほど。大声を出すより急いだほうが早いと思い、少し急ぎ足でまた歩き出した。
ジャラ・・・・ジャララ・・・・、ついてくる。
あと100m。家の明りが見えるようになって、私は走り出した。
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さっきまで何かを引きずるように聞こえたジャラジャラという音が、ジャンジャンと地面を叩きつけるような音に変わった。
怖さで、泣きそうになりながら、家まであと15mで足が絡まって転倒した。
音はものすごい速さで近づいてくる。
「きゃー!!!!!」と絶叫した私の声で家族が慌てふためいているのが気配でわかった。
ここまでが私の修羅場。
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こけた拍子に破れたワンピース、すりむいてあちこち血まみれ、怖くて気を失って倒れていた私の背中に
鎖を引きずって深夜徘徊していた犬(豆芝)が仁王立ちして尻尾を振っているのを見つけたのが家族の修羅場。
わたしのワンピース。。。
作者眼鏡地獄