中学生の時のことです。
当時、僕は電車通学をしていました。その日も電車に揺られていたのですが、急な眠気に襲われ、つい眠ってしまいました。
ハッと目を覚ますと、見知らぬ駅のベンチに座っていたんです。電車を降りた記憶もないのに…。
その駅には僕しかおらず、ガランとしていて寂しい場所でした。帰らなくちゃと思い、とりあえず駅員さんに帰りの電車について訪ねようと腰を上げた時でした。
「あんちゃん。迷ったんか?」
舌足らずな子どもの声がしました。目をやると、おかっぱ頭に赤い着物を着た小さな女の子が立っていたんです。
「あんちゃん。なしてここにいると?迷ったんか?」
「う…うん。何か間違えて電車を降りちゃったみたいで」
「ここはな、生きとる人間が来るところじゃないとよ。あんちゃんはまだ生きてるやないの。まだ来ちゃあかん」
「え…?それってどういうこと?」
「帰りたい?」
「……」
「帰りたいかと聞いてるんよ!」
女の子が急に声を荒げたのにびっくりして、慌てて頷くと、女の子はニヤリと笑いました。
「ええよ。帰したるよ。次に会う時は。あんちゃんがヨボヨボの爺さんになった時やで…」
次に目を覚ました時には、僕は電車に揺られていました。あれは夢だったのでしょうか。
しかし、女の子の姿や声が妙に生々しくて…。未だに忘れられないのです。
作者まめのすけ。