以前は、あまり馴染みなかったですが、団地に引っ越してから毎日のように使うエレベーター。
私はエレベーターに乗るときはちょっとばかし、ある覚悟をして乗るようにしています。
これは私の親友が体験した話です。
親友は、学生時代にとある百貨店でバイトをしていた。
夏休みだけの短期のバイトであったが、学生に親身な従業員も多く働きやすくて親友は気に入っていたようだ。
業務内容は、物品の品だし。
百貨店の最上階が倉庫となっているため、従業員用エレベーターで最上階へ行き、物品の確認。
そして、かごいっぱいに物品を乗せ、重たいかごを押しながらエレベーターで降り、店内に並べる。
その業務をひたすら続ける。
ただ、親友は、このエレベーターに乗るのがあまり好きではなかった。
とても古いエレベーターで、時々故障することもあり、中に閉じ込められた事も何度もあった。
ボタンを押しても違う階で扉が開き、しばらくの間、停まる事もあり、仕事に支障をきたす事も度々あった。
他の従業員からは、
「古いエレベーターやけん、乗るときは注意せないかんよ。」
と、度々言われていた。
最初のうちは、エレベーターが、故障すると、
ラッキー、サボれる♪
と思っていた親友も毎日のように続くエレベーターの不調にイライラしていた。
そのたびに、
「もうすぐ、もうすぐやけん。もうすぐでエレベーターが新しくなるはずやから。」
と、言われていた。
そんなある日、事件がおきた。
親友がいつものように、エレベーターで最上階へ行き、大量の物品を調べていた。
いつもより大量だったため、時間がかかったらしい。
二時間後、ようやく物品の確認がすべてできた。
親友は、後ろ向きでかごを引っ張りながらエレベーターのボタンを押した。
狭いエレベーターなので後ろ向きで入るようにと、従業員から指導されていた。
別の従業員がつかったのだろうか、
いつもは、親友がつかうと、エレベーターは、最上階で停まったままなのだが、エレベーターの番号は最上階の七階から一階までに下がっていた。
エレベーターが来るまでの間、業務内容の確認をしながら物思いにふけっていた。
そうこうしてるうちに
「ピーン」
エレベーターの到着音がした。
親友は、確認もせず、後ろからエレベーターに乗ろうとかごを引っ張った。
だが、なんだかおかしい。
エレベーターの中から生暖かい風。
そして、いつもより「ゴォーゴォー」という機械の音が鮮明に聞こえる。
親友は、不思議に思い、エレベーター内に入る直前に振り返った。
ゾッとした。
エレベーターの中身がないのだ。
中身がないまま、エレベーターは、ひたすら、中へ入れと扉が開いてる。
確認するとエレベーターの中身は、未だに一階のままだった。
扉が開き、何も知らずにあのまま乗っていたら……
最上階の七階から一階まで転落死していたところだった。
親友は、急いで、階段で下り、従業員にエレベーターを利用禁止にするように伝えた。
事務所で、恐怖で震えてる親友に、従業員は、慰めるように優しく声をかけた。
親友は、その言葉を受け、次の日にバイトをやめた。
何を言われたのか、後で聞いたが、親友は、苦笑いしながら、知らなくて良いこともあると教えてくれなかった。
……………………………………
これは、あくまでも私が考えた事ですが、
以前にもその従業員用エレベーターで同じような事故(事故未遂)があったのでは?
従業員は、もう一度同じようなことがあれば、新しいエレベーターに変えると言われたのでは?
だって、
いくら狭くても、後ろ向きから乗れ……と、指導する従業員って、
おかしくないですか?
普段、何気なくつかうエレベーター。
携帯を夢中で見ていたり
どこかを見ていて
確認もせずに、乗っていたら………
あなたの乗るエレベーター、
中身は、きていますか?
作者黒い苺