私が以前お仕えしていた東北地方のお宮でのお話し。
そのお宮は歴史ある古いお宮で、杜に囲まれた立地から関東からの参拝者や観光客が非常に多いお宮です。
ど田舎にある観光神社ではよくある話しですが、村とお宮は非常に仲が悪く、観光客がどうだと言った利権等でちょくちょく争いや諍いがあり、村の住民から「あのお宮には、絶対に行かない」というような村八分的な雰囲気がありました。
そんなお宮だから村で部屋を借りようとも誰も部屋を貸してくれず、仕様がないからお宮の一室(面談室)を借り、住み込みの旅館のような生活を過ごしておりました。
当然、雑用や夜の見回りといった事まで下っ端の仕事。
同期の神職は1カ月で退職というあり様ですべての仕事が自分に周って来るといった感じでした。
そんな雰囲気にも徐々に慣れてきたある夏の晩の事。
神職やお手伝いの人も全員帰り、戸締りをして夜の見回りをしておりました。
夜の見回りと言っても、ど田舎の格式高いお宮だけあって、むちゃくちゃ広く、見回りだけでたっぷり1時間はかかります。
その日も本殿、拝殿、参道に異常はなく、後は杜の中を見て回るだけでした。
いつも通り、白衣で杜の中を見て回るとかすかに声が聞こえてきます。
「またカップルがいるのかな?」と思い、野暮にならないように静かに歩いているとカップルなどおらず、杜の中で1人女性が木の方を見て何かをやっておりました。
当時、神職をして数年。いろいろなお祓いをしてきたつもりでしたが、こんな事は全く想像しておらず、恐怖とパニックで固まっていると、急にこちらを睨むように顔を向けると同時に
「イ゛ィエェェ゛ェァアアァ゛アァ 」と奇声を発し、こっちに向かってくると思いきや反対の方に走っていってしまいました。
私は恐怖で腰を抜かし、その場でへたり込んでしまいました。
次の日、上司と一緒にその場に行って見てみると、丑の刻参り?をしようとした跡が…
(写真と釘、ぬいぐるみ、四角い鏡、蝋燭等々)
作者黒子