短編2
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トンネル前

私は少し霊感があるらしく、霊が近くにいると気分が悪くなったり耳鳴りがする。

いつも視えるというわけでもなく一年に一回霊体験をしたりする程度だが、小さい頃は霊と遊んだりしていて怖かったと母から聞いたことがある。

この話は、そんな私が五年前に体験した話である。

私、親、友人の母、友人、友人の妹と旅行に行った帰りのこと。

時刻は夜の8時頃だった。

私達が乗った車は、高速を走っていた。

まだ8時だというのに、周りには私達の車だけで他は誰もいなかった。

車は古ぼけたトンネルの前で急に止まってしまった。

エンストだ。

運転している私の父が何度もエンジンをかけなおしているが、キュキュキュキュキュッというだけで動いてはくれない。

まだかなぁ...と思いながら外を見ると、電柱があった。

木でできた電柱だった。

その木でできた電柱に、女の子が登っていた。

私は一瞬自分の目を疑った。

こんな人気のない場所に女の子がいる筈ないじゃないか、しかも電柱に登るなんてどういう事だ!と驚いた。

女の子は、一言で言うと江戸時代に居そうな格好だった。

黒い背中まである髪を後ろで一つに縛っていて、青い朝顔の着物を着た女の子。

しかも藁でできた草履を履いていた。

電柱から所々出ている棒に足をひっかけて器用に登って行く。

驚きで忘れていた瞬きをした瞬間、女の子は消えてしまった。

それと同時に、車のエンジンはかかった。

その後は何事もなく家に帰ったが、私は今だに何故電柱に登っていたのか気になっている。

Concrete
コメント怖い
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