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短編2
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さよならの夜に

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数年前のことです。

一緒に暮らしていた祖母が亡くなりました。

母、祖母、わたしの三人で支え合ってきた暮らしが終わった日でした。

親戚一同が集まって、お葬式も終わり、

仏壇に祖母の写真が置かれました。

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現実を飲み込め無いまま

親戚一同が帰り、

母と2人の生活が始まりました。

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2人きりになって初めての夜、

いつも二階の自室で寝ていた私たちは

祖母が寝ていた和室で寝ることにしました。

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わたしは祖母が使っていた

折りたたみ式のベッドに、

母はその横に布団を敷いて寝ました。

いつも通りの会話、

祖母の死には触れずに

電気を消し、二人とも眠りにつきました。

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夜、ふと目が覚めました。縁側からの月明かりで照らされた時計が2時をさしています。

ぼんやり薄い月明かりの中、

ベッドに横になったまま、

隣の和室の仏壇に

自然と目がいきます。

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隣の部屋には月明かりは届かず、

仏壇も、なんとなくそこにある

というのがわかる程度しか見えません。

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......ぎしぃっ

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仏壇の方から畳のきしむ音が聞こえてきました。

それと同時に体がずんっと重くなり、

身動きがとれません。

ぎしぃ...ぎしぃ....ぎしぃ...

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見えない何かが確実に近付いてくるのを感じました。

母の頭上を過ぎてわたしの方へ、

一歩一歩、ゆっくりと。

怖くなったわたしは

ぎゅっと目をつむりました。

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ずしぃぃぃぃぃ!

顔のすぐ前、ベッドの淵に

人が座るのを感じて、

わたしの身体からは冷汗が吹き出しました。

どうしよう!どうしよう!

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混乱のさなか...

頭をよぎったのは

幼い日の記憶でした。

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祖母が部屋の電気を消した状態で、

ベッド淵に腰掛け、

テレビでワイド劇場のような番組を見る。

幼いわたしは

祖母の近くに居たいものの、

眠気に勝てずに

祖母の背中でテレビの明かりを遮って、

祖母のベッドに寝てしまう。

わたしが小学校低学年のときに

よくあった情景でした。

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じんわりとベッドに腰掛けた

"何か"から、体温のようなものを感じて

それと同時に、懐かしさ、安心感

がぶわぁぁぁ、と流れ込む感覚に襲われました。

おばあちゃん.....?

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手を伸ばしたいのに

身体は金縛りにあったままで

ぴくりとも動きません。

ゆっくりと目を開くと

そこには何もなく、

同時に、ベッドから誰かが

立ち上がるのを感じました。

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行かないで....!

声にならない声で呟いた

わたしの目には

涙が溢れていました。

窓はどこも空いてないのに

優しい風が窓の方へ流れていきました。

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わたしはその晩が

祖母とのさよならだったと

思っています。

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目頭がほんのりと熱くなる、いいお話ですね。

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コメント
ありがとうございます。

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切ない…。読んでいて鳥肌が立ってしまいました。ジワッと、いい意味で。お祖母さんの御冥福を心よりお祈り申し上げます。

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