wallpaper:517
music:5
数年前のことです。
一緒に暮らしていた祖母が亡くなりました。
母、祖母、わたしの三人で支え合ってきた暮らしが終わった日でした。
親戚一同が集まって、お葬式も終わり、
仏壇に祖母の写真が置かれました。
nextpage
現実を飲み込め無いまま
親戚一同が帰り、
母と2人の生活が始まりました。
nextpage
2人きりになって初めての夜、
いつも二階の自室で寝ていた私たちは
祖母が寝ていた和室で寝ることにしました。
nextpage
わたしは祖母が使っていた
折りたたみ式のベッドに、
母はその横に布団を敷いて寝ました。
いつも通りの会話、
祖母の死には触れずに
電気を消し、二人とも眠りにつきました。
nextpage
夜、ふと目が覚めました。縁側からの月明かりで照らされた時計が2時をさしています。
ぼんやり薄い月明かりの中、
ベッドに横になったまま、
隣の和室の仏壇に
自然と目がいきます。
nextpage
隣の部屋には月明かりは届かず、
仏壇も、なんとなくそこにある
というのがわかる程度しか見えません。
sound:36
......ぎしぃっ
nextpage
仏壇の方から畳のきしむ音が聞こえてきました。
それと同時に体がずんっと重くなり、
身動きがとれません。
ぎしぃ...ぎしぃ....ぎしぃ...
nextpage
見えない何かが確実に近付いてくるのを感じました。
母の頭上を過ぎてわたしの方へ、
一歩一歩、ゆっくりと。
怖くなったわたしは
ぎゅっと目をつむりました。
nextpage
ずしぃぃぃぃぃ!
顔のすぐ前、ベッドの淵に
人が座るのを感じて、
わたしの身体からは冷汗が吹き出しました。
どうしよう!どうしよう!
nextpage
混乱のさなか...
頭をよぎったのは
幼い日の記憶でした。
nextpage
祖母が部屋の電気を消した状態で、
ベッド淵に腰掛け、
テレビでワイド劇場のような番組を見る。
幼いわたしは
祖母の近くに居たいものの、
眠気に勝てずに
祖母の背中でテレビの明かりを遮って、
祖母のベッドに寝てしまう。
わたしが小学校低学年のときに
よくあった情景でした。
nextpage
じんわりとベッドに腰掛けた
"何か"から、体温のようなものを感じて
それと同時に、懐かしさ、安心感
がぶわぁぁぁ、と流れ込む感覚に襲われました。
おばあちゃん.....?
nextpage
手を伸ばしたいのに
身体は金縛りにあったままで
ぴくりとも動きません。
ゆっくりと目を開くと
そこには何もなく、
同時に、ベッドから誰かが
立ち上がるのを感じました。
nextpage
行かないで....!
声にならない声で呟いた
わたしの目には
涙が溢れていました。
窓はどこも空いてないのに
優しい風が窓の方へ流れていきました。
nextpage
わたしはその晩が
祖母とのさよならだったと
思っています。
作者月月