今から四年前のこと、
高校受験を控えた夏のことです。
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市街地から40分弱、
お店もなく、周囲は
森と田んぼばかり
というような場所に暮らしていた
私たち家族でしたが、
わたしの通学(高校になってから)
母の通勤、祖母の通院を考えて、
市街地に引越すことになりました。
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引越しの話が出て程なくして
祖母は亡くなってしまい、
結局、マンションが決まり、
もとの家を売るときには、
わたしたちは2人家族になっていました。
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マンションは新築で、
天井も高く、眺めもよく、
わたしも母もとても気に入っていました。
しかし、
引越しの前日。
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わたしは悪夢をみたのです。
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まだ家具の揃わない新居へ、
うきうきしながら足を踏み入れる
わたしと母。
時刻は22時ごろでした。
母は「やっぱりいいね、ここ!」
と、嬉しそうなのに対し、
わたしは廊下で立ち止まっています。
白いワンピースに、長い黒髪を垂らした女性が目の前にたたずんでいたのです。
その女性はわたしをずっと睨みつけていて、
母には見えていないようでした。
そして一瞬、
その女性が くすっと笑ったかと思うと、女性は母に背中から抱きついて、母もろとも消えてしまったのです。
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この悪夢から目覚めたわたしは、
途端に引越しが嫌になりました。
しかし、引越しは決まったこと。
今更子供のように駄々をこねるわけにもいかず、引越しは完了してしまいました。
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そして一日目の夜、
息苦しさをおぼえ目を覚まします。
足も手も動かず、胸が押しつぶされるように苦しい.......金縛りです。
わたしのベッドは部屋の角にあったのですが、その対角となる角から視線を感じました。
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じわじわ冷たい汗が
吹き出し、金縛りを解こうと
必死になるものの、
体はぴくりとも動きません。
恐怖故か、対角から目を離す事さえも
できません。
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どうしよう、何かいる...!
叫ぼうにも声が出ず
ほとんどパニックになっていました。
すると、対角の辺りにぼんやりと
徐々に影が集まり、人の形を成します。
ああ、あの人だ...
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昨晩の夢を思い出しました。
見えるのは影だけなのに、
何故か確信を持って、
夢の中の女性がそこにいたと
言えました。
女性はただこちらを
見ています。
見ている事が見えるわけでは無いけれど、睨まれている感覚が何故かあったのです。
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気がついたら朝になっていました。
母に心配をかけたく無かったので、
この事は誰にも言わずにいましたが、
そんな夜が一週間続きました。
わたしは受験生でもあったので、
流石に若干のノイローゼ気味に
なっていました。
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もう限界だ...
明日はお母さんに相談しよう。
そう思って布団に入った夜、
わたしは対角に背を向けた状態で
金縛りにあい、目を覚ましました。
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あれ、いつもと違う...
金縛りが一瞬解け、
対角をみてみたものの、女性はいません。
わたしは再び対角に背を向け
眠りにつこうとしました。
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あ...あ....あ
すぐ背後からしわがれた声が
聞こえてきました。
そして首元に冷たい冷気を
感じ、わたしは恐る恐る
後ろを振り返ります.....
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shake
ああああああああああ!
あの女性でした。
ベッドの淵に両手を置き、
顔をのぞかせ、
ものすごい形相でこちらを睨みながら
かすれた声で叫ぶ女性。
わたしはすぐに
気を失ってしまいました。
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翌日、わたしが
部屋で怖い事があった。
とだけ母に告げると、
母はわたしの部屋の隅に
塩を持って置きました。
その日から、あの女性の姿や気配を
見る事はありませんでした。
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あの女性が何をしたかったのか
誰だったのか、
それは全くわからないままです。
作者月月