風呂から上がり ただならぬ空気と何かの
気配を感じながらも 睡魔には勝てず
私は知らず知らずの内にベッドで横たわたっていた。
今思えばあのモーテルの部屋は全てに
おいておかしかったと思う!!
まず フロントの人がお金を取りに来た時
私にこう言った
チエックアウトは11時です
後 お子様の寝着の用意はありませんので
とか?
お子様の寝着って? この人何を言ってはるん? その時は
意味がサッパリ分からず適当に相槌を
打ち そそくさとフロントの人を追いやった
理由は単純に家出少年が一人で泊まっている
事がバレるのを恐れたからだ
次に部屋
まず全てが古い
風呂はタイルばりだが浴槽は岩作り
電話はプッシュじゃなくダイヤル電話
壁にかかってある絵は山の色が赤い富士山
他にも 部屋の端に3畳位の茶室の様な
役割の果たしていない部屋が有り
その部屋には古びた棚が有り その中には
ビールを飲むコップ
棚の上には何故かキューピー人形があった
今思えば 昭和の40年〜50年代の
客室の様な気がする
後一つ不思議に感じた事
それは 部屋に上がり靴からスリッパに履きかえた時 スリッパが3つ用意してあった事
書き出したら きりがないのでやめときますが平成には受け入れ難い部屋でした
そんな古さと 入浴中に聞こえた話し声が
私の恐怖感を煽り 私は何処の電気も消す事
なく 寝る道を選びました。
浴室 洗面 部屋の電気も全て
点けられる電気は全て こうこうと点け
ベッドに入りました。
そしていつの間にか 私は眠りについていました
ベッドに入ったのが 4時前だったと思います そしてその時はやって来ました!!
うとうとしていたら いきなり空気が変わるのが分かりました。
その瞬間 パシーン もの凄いラップ音 警告音
次に シャーン シャーン シャーン シャーン
シャーン シャーン シャーン シャーン と言う音が聞こえました。
私は迫り来るモノに恐怖は最高潮
その瞬間 電気ショックの様な金縛りに合い
頭の中はパニック状態
かろうじて 眼球だけが動く状態でした
視線を自分の脚元 ベッドの先に移すと
まず 4本の足が見えました。
自分から見て左にグレーのスラックス
自分の右手には赤いスカート
恐怖に怯えながら 徐々に視線を上に上げると そこには歳の頃40代の男と小学校低学年くらいの女の子が立って居ました。
男の顔からは精気が無く私の顔をじっと
見つめていました
女の子からはもの凄い怒りが感じられ 眼は白眼が無く真黒の眼球が私の恐怖に更に追い打ちをかけた
多分親子の霊だろう その手はしっかりと握られており 4つの眼球は私を捉えたままであった。
そして女の子が私を睨み ニタ〜っと笑った瞬間ケタケタと言う不気味な笑い声と共に二人の身体は宙に浮き私の上に覆い被さって来たのです
そしてその瞬間 女の子は私の首を絞め
耳元で
お母さんは お母さんはと聞きました
私はいつの間にか気絶していたのでしょう
意識を取り戻したのはフロントからの電話でした
お客様 お時間です
延長されますか?
私は先程体験したあの恐ろしい体験を話そかどうか思案したが何も告げず 延長しない旨を告げ受話器を置いた
そして 身支度を整え階段を降りモーテルのシャッターボタンを押して外に出ようとした
その時 脚元に1枚の紙キレが脚元に落ちていた
私は何気なくその紙キレを手に取り
シャッターを上げ外に出た
その紙キレは1枚のハガキであった
ハガキには お母さん早く帰ってきてね
美和はお母さんが帰ってくるまで
お父さんとかしこく待っています
昭和48年11月23日と記されていた
私は歩きながら 体験した事を振り返った
あれは夢だったのか それとも開かずの間だったのか?
それは今になっても分からない
あのハガキの美和ちゃんは私の前に現れた女の子だったのだろうか?
今となれば あの体験は夢だったのかもしれない
でも夢ではなかった
後日 モーテルの近くにある喫茶店のママから話を聞いた
昭和48年の冬にあのモーテルで親子が
亡くなった事
親子はモーテルに住み込みで働いていたらしい
ママの話では 女の子の名前は美和ちゃんで
小学校2年生でママの息子と同級生でママの今にも何度か遊びに来ていたらしい
美和ちゃんのお母さんは男好きで有名な人だったらしく 小さな美和ちゃんを置いて蒸発したらしい
美和ちゃんとお父さんはずっとお母さんの帰りを信じて待っていたが
お父さんは お母さんへの想いからか次第に
精神状態が不安定になり ある日美和ちゃんの首を絞め 自分もあのモーテルの一室で首吊り自殺したらしい
何故客室で自殺したのかは 疑問はあるが
当時の新聞にもひっそりと記事になったらしい
ママが言う所だが 美和ちゃんは大好きなお母さんに捨てられ
大好きなお父さんに苦しみながら殺され
成仏できてないんやろ
あんたの様な話 たまに聞くわとあっさりと
した口調で話された
私は美和ちゃんのハガキを捨てた事を凄く後悔した
美和ちゃんは今も お母さんの帰りを
あのモーテルの一室で待っているのだろう
あの開かずの間で
作者nao-3