中編4
  • 表示切替
  • 使い方

真っ黒い兄

私が大学生で不登校になったときの話です。

高校時代の友人が集まって私の不登校を解消するという名目でパジャマパーティしようと言うことになりました。

一人暮らしの友人Aちゃんの家に私、Kちゃん、Mちゃんの四人が集まりお菓子やゲームを持ち寄りました。

20歳をこえていたのでお酒をあけたり懐かしいあの頃に戻ったような楽しい一夜になるはずでした。

nextpage

夜も更け誰かのふざけた話からネットや携帯にまつわる怖い話大会になりました。

チェーンメールや怖い非通知着信、検索してはいけない単語や画像。

今回の企画者Aちゃんが「お兄ちゃんとすんでる人おる?」とみんなに確認してきました。

静まり返る室内。

「そうやんな、じゃあ大丈夫かな?」

Aちゃんはいきなりノートパソコンを開き、何やら検索を始めました。

唐突なことにおいてけぼりになった私たちはお菓子を食べたりしてインターネットゲームの話などして盛り上がっていました。

「あったーーー!」

Aちゃんが楽しそうに見せてきたのは動画サイト。

nextpage

shake

真っ黒い兄

埋め込み式の動画サイトで文字がでかでかと書かれていました。

どうやらもう再生されているらしく小学校低学年くらいの男の子がうつりました。

カメラを撮影しているのは男の子の妹らしい。

親からカメラを借りて撮影している微笑ましい映像である。

兄と思わしき男の子はいきなり工事中のマンホールに入ると言い出したのです。

妹にかっこいいところを見せたいと思ったのか妹が止めても聞く様子はありません。

「絶対戻ってくる!」

妹は兄の言葉に押され見送る形で撮影をはじめました。

マンホールから頭を出して、「いってきまーす!」

「いってらっしゃーい」

普通の兄弟の日常会話。

shake

次の瞬間、一瞬で兄の頭がマンホール内にすっと消え、かわりにこもったうめき声が聞こえてきました。

そこでカメラが地面に落ち砂嵐になり、動画が終わりました。

「ごめん、この動画初めて見てん。後味悪いな、ごめんね…」

さっきまで元気だったAちゃんがパソコンを切り、みんなで「良く出来た作り物だねー」と話を切り替えようとしました。ただ一人、Mちゃんをのぞいて。

nextpage

Aちゃんがいつもの調子に戻ったとき、はじめてみんなが何かに怯えているようなMちゃんの様子に気がつきました。

口元を押さえ震えるMちゃん。

「ご、ごめん。気持ち悪いからトイレに行くね。」

心配になり私はMちゃんを支えトイレまでつきそうことに。

「…止められなかった。 」

「え?」

それっきり彼女は口を閉ざしてしまいました。

Mちゃんが個室に入り鍵をしめた途端

「こないで!約束なんてしてない!」と大声を上げたので服のボタンで鍵を開けました。

便器の蓋を必死で押さえるMちゃん。

何かの封印をするかのように上に乗り体重をかけている。

リビングにいた二人も異変に気がつきMちゃんをその場から引きはがし、みんなでMちゃんを囲み固まって寝ることにしました。

翌朝Mちゃんは早朝に帰ったようで靴もありませんでした。

一番に起きたAちゃんも始発よりあとに起きたのでメールをしたらしく「ありがとう」とかえってきていたのでみんなで安心していました。

そんな中、しばらく黙っていた一番古くからMちゃんと仲がいいKちゃんが「あの子、お兄ちゃんがいたって言っていたかもしれない。」といいだしました。

思わず「いたってことは?」とAちゃんがいうとKちゃんが重々しく口を開きました。

「遮断機がない踏切がなっているときに、お兄さんが大丈夫と言いながら走って横断しようとして…」

ここからは皆さんが想像するとおりMちゃんのお兄さんは次の瞬間、目の前で事故に遭ってしまったそうです。

「本当に昔やで?だから今はお兄ちゃんと住んでいないから…返事しなかったんやで、きっと」

nextpage

あわててMちゃんの携帯に電話しても出ないのでKちゃんから実家に電話してもらうと「戻ってきてるよ」と言われたそうです。

安心して冗談ぽく「野中が不登校になるからこんな変なことになったんやでー。ちゃんと大学いきや。」とAちゃんに見送られ二人で帰宅しました。

Aちゃんに聞くとあの動画は生きている兄が死んで戻ってくるという噂があり、兄がいないなら試しに観ようという出来心だったようです。

nextpage

一週間後くらいKちゃんから「Mちゃんと連絡が取れない」と電話がありました。

「Mちゃん、お兄ちゃんのことで地元にいられなくなって引越ししてきてん。…今気がついたんだけどね、父親が海外に行っ ていてあの日電話に男の人が出るのがおかしかったの」

nextpage

地元に聞くのがいいかなと、Mちゃんの実家の近くへ行きました。

隣の家のおばさんに引っ越したと告げられました。

引っ越したのはちょうど私たちといた日。

「引っ越したとき挨拶もなくてね。あとはトラックが変わった形していてね、あれなら確実に荷物積めると思ったんだけどね。夜逃げかしら?」

「変わったトラック?」

「そうそう、はっきり覚えてるよ。一瞬電車が道上を走ってるかと思うくらいやったんやから。」

Concrete
コメント怖い
17
34
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

【山口敏太郎2013年12月怖話アワード動画書評より】

きもい動画を友達と集まっている時に見たら死者とリンクしてしまったという話ですね。たしかに、YouTubeには妙な動画が多いです。はっきり言えるのは、大部分が創作というか商業的に作られた動画です。カメラ目線の幽霊はいませんし、ターンしたら幽霊がいたとか、画面の見切りにいるとかそういうのよくあるんですけども、そんないいタイミングや構図で幽霊はこないです。というかカメラの方を向いていないですしね。

ただし、一部の動画は本当に霊が写っているということがあるんですね。そういう動画は見るのは非常に要注意かもしれないですね。

他の作品の書評はこちら http://blog.kowabana.jp/133

返信

怖女さん 探して読みました、漫画のですよね?確かに似ていたのでびっくりしました。この時代にそういったものが流行ったのかもしれませんね。日本にいたくなくなってお父さんと一緒に海外にいったと私は信じたいです。

返信

赤い妹というお話と似ていますね。
死んだ兄が戻ってくるって怖いですね。。

返信

ichiさん わたしももう怖いから嫌です。。。

返信

ryujuokさん わたしも廊下でお話を聞いていたので重なってゾッとしていました。

返信

コレおれ的にヤバい。最近では一番バイやー>

返信

電車のような乗り物とは、Mちゃんのお兄さんが最期に見た電車の記憶が霊体化したんですかね。。ちょうど、せん夏さんの怪読会で、敏太郎先生が「乗り物は霊体化しやすい」とおっしゃっていました。

返信

三遊亭幽霊さん ありがとうございますm(__)m全部嫌な方向に繋がるんですよね。

返信

あーちさん
そうだと思いたいです。

返信

テキストで読んでも怖い。ラストは単にバカでかいトラックってこと…やね…… (((( ;゚Д゚))))

返信

ロビンさん 後味が悪いです、いまだに。。。

返信

shouta.nakano.902さん
何がなんでも戻ってきてしまったみたいで、今回は死んだ兄が戻ってきたのかもしれません。
お酒の勢いとか好奇心は怖いです。

返信

蘇王 猛さん この動画今探しても見つからないのですよ。Mちゃんがもってどこかへいったのかなって思うくらい。不思議です。

返信

死んだ兄が、いきかえるのでは、なくて、いきて生きてる兄が、死んで、もどってきるの???こぇ~(T_T)

返信

第三者の何気ない一言が恐怖を誘いますね。本当に見てはいけない動画もあるんですね…。

返信