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中編3
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引きこもり

男は、ポテトチップスだろうか、無言のまま貪り食っている。

食事は彼の母親がいつも用意して部屋へと運んでいるようだが…

それには全く手をつけていない。

部屋は暗いがパソコンのディスプレイの明かりでその男の顔がはっきり見えた…

髭が顔中を覆いとても人間とは思えない…

腕には無数の切り傷のあとが残っている…おそらく、自殺の跡だろう…

パソコンの画面には今人気の2chの掲示板らしきものが映し出されていた…

『呪い版』

その文字がふと見えた瞬間、ハッとこの空気の重い理由がわかった気がした。

しかも、その手の呪術に関する本などがちらほらと散らばっていたのを覚えている…

この男の母親の話によれば彼はもう十七年この部屋に引きこもっていると言う。

私はなんて場所に来てしまったのだろう…

精神科医になって約五年、いろんな患者を診てきたが彼のそれは常軌をいっしていた…

なにか病気とは別の禍々しいなにか…

霊能者では無いのではっきりした事は言えないが、素人目でもこの世のものでは無い何かを感じた。

部屋を見渡す…

ディスプレイの明かりと、目もだいぶ慣れてきたのか様子が見える様になってきた。

まず目についたのは、マネキンの首だった…正直、ビクッと体を震わせてしまった…

異様なのはそのマネキンの目だ…

マジックか何かで塗りつぶしているのだろうか、目の部分が全体的に黒く見える…

頭部の髪の毛も引きちぎったのか所々が禿げている。

もう一つ寒気を感じたものがあった…

祭壇だ…

ロウソクには火は灯ってはいなかったが、何やら供え物がしてある…近寄って見ると…

鼠の死骸がお皿にのせられ供えてあった…

…私はすぐにでも逃げ出したかったが、そうもいかなかった…

何せ、私は訪問治療を行う精神科医としてこの家にやって来たのだ。

彼の様に部屋に引きこもり、外に出ることが出来ないような患者を診てまわる仕事をしている…

今回も彼の母親から依頼を受けこの部屋へやってきた。

早速仕事に取り掛からなければ…

声を掛ける。

「シンジさん?(仮名)」

「……」

返事が無い。

当然と言える…

この手の患者は大抵言葉を発しない…さらにつづけた。

「こんにちは。私はあなたの事を助けるために来ました。

神崎という者です。宜しくね」

「……」

当然答えが無く目も合わそうとしなかった…

治療方などは、話しかけ続ける他に無いためそれに務めたが、彼の反応はその日、全く変わる事は無かった…しかし、

「また、お話をしましょうね?」

と、最後に言って立ち上がろうと手をついた時だった…

shake

急に彼は私の手を掴みすごい力で引き寄せてこう言ったのだ

「ま…た…は…お…ま…え…に…は…な…い…」

shake

music:3

怖ろしくなり手を振りほどき部屋を飛び出した…

部屋の外に出ると、念仏の様なものが聞こえてくる…

耳を塞ぎながら一階へと走り降りた。

母親が音に気がつきリビングから出てきた…

「何かあったんですか?!」

言葉が詰まって声が出せないでいると、母親はこう続けた…

「あの子を救えなかったのですね?…はぁ…また1人…生け贄が増えたのね…」

「!!!!!!!!?????」

その後あの家に行くことはなかったが、生け贄って?

。。。。。。。。。

今のところ私の身体に異常は見られない…だが、今私は自分の部屋から出る事が出来なくなっている…

勿論、祭壇には鼠の死骸を供えている…

Concrete
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