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中編7
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霊媒体質

music:4

こんばんは。海斗と申します。二回目の投稿になります。

昔から僕の家系の人間は常人には見えないモノや音が聞こえる、

俗に言う「見える」人間が生まれてくるらしい。

僕はこの家系の人達の中ではではそれ程強い霊感を持っている自覚はない。

だが僕の母親言うには、

「あんたは霊媒体質(憑依体質とも言う)だから無意識に霊を呼んでいる、だから時々急に体調が悪くなったりするんだよ。だけど私が生きてる間は常にあんたを悪いモノから守る努力をしてるから心配するな」

僕は小さい時からそう言われてきた。

music:1

僕は中学3年の冬の夜に、友人のK、S、H、Mと近所の公園に溜まっていた。

この公園に溜まるというのは珍しくない、むしろ毎晩の恒例行事のようになっていた。

当時僕達は「真面目な人」というより「不良」と言われる側の人間で、

他の人よりズレた行動、目立った格好がカッコイイと思い込んでいた時期。

今思うと恥ずかしくてたまらない。

そんな恥ずかしい僕達は今日も公園に集まっていた。

しかし田舎であることもあり、やることもなく非常に暇だった。

暇というのは想像以上に辛いもので、誰かがなにか面白そうな事を言い出さないかと期待していた僕、その期待に応えてくれるのはいつだってKだった。

K「川行って焚き火でもしないか?」

M「いいね!ついでに焼き芋とかやっちゃうか⁈」

H「じゃ家から芋とバター調達してくるぜ♪」

僕「了解!きーつけてね」

Hの家は農家ということもあり芋ぐらいなら安易に入手できる。

20分程でHが自転車の荷台に巨大な段ボール箱をのせて大量の芋を持ってきた。

S「この量じゃ食べきるのに3日かかるぞ!」

M「芋大量だけど、バター少なすぎるだろw」

H「馬鹿野郎!バターまで大量に持ってきたら親に殺されちまうよ!」

僕「芋は大丈夫なんだ…」

K「H、お前は今日から芋野郎だ」

この日からHのあだ名は「芋野郎」になった。

そして僕達は大量の芋を手分けして自転車のカゴに入れ、近くの川へ向かうことにした。

向かっている途中Sが自転車のカゴに入れた芋の重さでハンドル操作を誤り転倒したが、ヒジを擦りむいただけだったらしいのでそのまま再度川へ向かって自転車を動かした。

川辺に到着すると適当に集めた枯葉や木にKが標準装備しているジッポオイルかけて火をつけた。

芋を濡れた新聞紙に包みさらにその上からアルミホイルを巻いた芋達を次々と火の中へと投げ入れる。焼き芋が出来上がるまで時間がかかるので各々手頃な石を見つけてそれに座り、

ただボーっと火を見つめながら他愛もない話で盛り上がった。

K「川とかそーゆー水がある所って霊が集まるらしいじゃん」

S「しかも◯◯(僕のこと)も居るし、めっちゃ霊集まるんじゃねーか?」

M「そんなとこ火なんか燃やして大丈夫なのか?w」

芋「なにか出たら焼き芋あげれば問題ないっしょ!」

K「ほんと芋野郎だなw」

ここに居る全員が僕が霊媒体質だと知っている、そして霊的なモノの存在を疑う奴はいなかった。それなのに誰も霊的なモノに対する警戒心はほぼ皆無。

今は目の前にある焼き芋に全神経を集中している…

そしてかなりの時間がたったと思う、

僕「そろそろ焼けたんじゃないかな?」

M「一つだけ見てみようぜ!」

M「…まだできてないな〜」

K「もうめんどくせぇー!最大火力だ!」

僕、S、M、芋「いや待て!!!」

時すでに遅し、Kが標準装備しているジッポオイルは全量が火の中へ注ぎ込まれた。

Kは男性が小便をするポーズをとりながら

K「俺の小便燃えるぜーー!」

などと叫んでいる。ジッポオイルはかなりよく燃えるのでもうどうしようもない。

尋常ではない勢いで燃え盛る炎を見て呆気にとられているとMがいきなり、

M「写メ撮るからKそのままにしてて〜」

と言いおもむろに携帯電話をとりだして、カメラ機能を使い写真を撮ったその時。

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M「ちょっ……なんか写ってる!」

K「は?うそつくなよ!」

芋「携帯の写メって幽霊うつんの?」

M「いやいや!まじだって!!」

K「嘘だったらぶっ飛ばすからな!」

すぐさまMのもとへ駆け寄り携帯電話の画面を確認する。

そこに何が写っているかを理解するのに時間はかからなかった。

よくTV番組の心霊特集などで紹介されている心霊写真は、

オーブと言われる白く半透明な丸い球体が浮かんでいたり、

手や足もしくは顔のような物が写る、

あるいは明らかに合成写真かと思わざるを得ないモノ(たまにかなり怖い本物の写真もある)などなどをよく見かけるが、

Mが撮った写真に写り込んでいたモノは「言われてみればそう見える」などと言った曖昧なモノでは一切なく、あまりにもハッキリと写り込んでいたためソレが何なのか一瞬で理解できた。

music:3

Mの携帯画面に写るソレは焚き火の炎に照らされていた。

特徴として、まず女性であり白い着物を着ていて異常に巨大な背丈。

真っ黒い髪を胸元あたりまで伸ばしていて顔は髪に隠れて見えない。半透明ではなく完全にそこに生きた人間が写ってるいるかのように鮮明だ。

そしてなにより驚いたのが背中の方からの赤ん坊が2人顔を出していた事。

その写真を確認した後、皆声になっていない悲鳴をあげながら一目散に各自の自転車にまたがり、力の限りペダルをこいだ。

M「とにかく明るいところに行こう!」

K「コンビニ!コンビニ!」

自転車が猛スピードで走ると風の「ゴォーゴォー」

sound:12

という音がうるさい。

その「ゴォーゴォー」という風の音に紛れて遠くからSの声が聞こえる。

S「みんな待ってくれーー!」

Sは自転車のカゴに入れた芋の重さで転ぶだけあって自転車の運転が苦手である。

Sを置いて逃げる訳にも行かないので僕は一度自転車を止めてSが追いついてくるのを待った。

自転車を止めれば当然風の音がなくなり静寂につつまれる。その時僕は聞いてしまった。

「…子供が起きちゃったじゃない…」

どこからともなく聞こえてきたその声の正体はMが撮った写真の霊だとすぐにわかった。

僕は全身鳥肌が立ち恐怖を誤魔化すためにSに向かい叫んだ。

僕「何やってんだ!早くしろ!!!」

Sが追いついてきたので僕とSはSのペースで近くのコンビニまで自転車をこいだ。

music:1

コンビニに到着するとすでにK、M、芋の三人の自転車が停めてあった、深夜のコンビニは田舎なので客がいないことが当たり前だ。店内に入ると何やら興奮したK、M、芋が店員と話している。その時の会話がこれだ。

K「川で幽霊が出たんです!」

店員「そ…そうなんだ…」

M「コレ見て下さい!!」

Mが例の写真を店員に見せた。

店員「え?…これまじで?」

店員も流石に驚いている。

芋「俺たちどうなっちゃうんすかね…」

店員「悪ふざけが過ぎたね〜御愁傷様〜。

でもまぁ、僕のおごりで清めの塩ぐらい買ってあげるよ」

K「コンビニに清めの塩なんて売ってるんですか!?」

店員が持ってきた清めの塩というのは紛れもない食用の塩、ただの調味料だった。

店員「じゃみんな外出てくれ、塩かけてあげるから」

深夜のコンビニの駐車場で男5人が店員に食塩をかけられているこの光景が可笑しくて、その時ばかりは笑ってしまった。言い忘れていたが田舎のコンビニ店員と仲良くなるケースは珍しくない。

僕達は焚き火の火の始末をしていないことに気づいて、辺りが明るくなっていたこともありその後すぐ再びあの川に向かった。

まだ薄っすら残っていた火に水をかけて消火し、皆で僕の家に帰宅したのは早朝6時頃だった。

家に入ると母親が朝食の用意をしているのか焼き魚の香ばしい匂いがした。

S「あ、そういえば焼き芋食べ損ねた!」

芋「◯◯(僕のこと)腹減ったなー」

台所から声がした。

母「みんなおかえりー!朝ご飯たべていきなさい」

芋「ラッキー♪」

K「芋野郎図々しいぞww」

僕「とりあえずご飯たべようか」

皆で朝食を食べているとMが母親に

M「ごっつい心霊写真撮れちゃったんですよ」

すると母親の表情がキツくなり「見せて」とだけ言いMの携帯を見つめていた。

しばらく画面を見つめながら、なにやら口元が微かに動いている。

何を喋っているのだろうと考えていると、母親が口を開いた。

母「この女の人の霊は随分昔の人だね。

…生前念願の赤ん坊が生まれてすごく喜んでる。

しかも双子で子供が大好きだった彼女はそれはもう幸せだったのね。

だけど旦那さんだった人は持病が悪化して早くに亡くなってる。

それでも大好きな2人の子供のために頑張り続けた彼女は、過労からか精神を病んでしまった。

それでも子供に対する愛情は絶えることはなかったみたい…だけど精神を病んだ彼女に手を差し伸べる人はおろか、彼女の住むこの土地では彼女を「頭がおかしい」っと皆が言い続けていた。

そんな中で仕事もなくなっていったのが原因でどんどん頭がおかしくなっていっちゃったのね。

である日あんた達がいたあの川で、彼女は2人の赤ん坊をおんぶしながらゆっくりと冬の川に入って行って亡くなったのよ。

それが赤ん坊のためになるのだと信じながらね」

M「……でもなんで俺たちの所に出たんですか?」

母「ただ単に◯◯(僕のこと)に惹かれたのよ」

僕「おれかっ!」

母「でもついて来てないし心配いらないわよ」

母「でもよく聞いて。あんた達には見えないかもしれないけど霊はどこにでも居るの。

常に私たちの生活するこの空間に私たちと一緒に、すぐ隣に霊が居ることをわすれないで。

だからと言って怖がる必要もないけど、馬鹿にしたりもしちゃダメよ。

何があっても気にしない事が大切なの。

特に◯◯(僕のこと)は霊媒体質だからあんたの周りには常に誰か居るけど、悪いモノは寄せ付けないから心配いらないわ」

とだけ言うと母親は何事もなかったかのように家事を始めた。

僕達はこれに懲りず、この後も数々の心霊体験をしていくことになる。

Concrete
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uniまにゃ〜 様

こんなにも沢山の方々に好評で、
芋野郎も喜んでいると思います(笑)

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芋野郎さいこー!!

新キャラじゃないところが楽しいです

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赤煉瓦 様

ご期待に応えられるよう頑張ります!

芋にはバターが王道ですね☆

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H改め「芋」…芋君のキャラ好きですよ~
これからも期待してます。

じゃがバター最高!

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ローザ 様

はい!も◯げーです。
もし見たら写メ恐怖症になりますよ…苦笑

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*chocolate 様

焼き芋が喋ったら、また違う怖い話になりますね(笑)

応援ありがとうございます!

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情景が思い浮かんで楽しい分、怖いとこもしっかり妄想出来てなお怖いです。巨大な霊って(´;ω;`)その場にいたらちびってしまう。。。
も○げーですか?
数年前までやってましたが…。見たかったような、見たら後悔しそうな|д゚)チラッ
焼き芋にバターっていうのが馴染みがないですね( ・`ω・´)美味しいんですか?((o(´∀`)o))わくわく

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怖いけど何故か笑えてしまうお話ですね。

Hくんのあだ名が”芋野郎”に変わったので、セリフの表記が”芋”になったのに、自分は勘違いして焼き芋が喋ってるのかと思いました(笑)

次作も期待してます。

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あゆ 様

芋野郎は今もなお芋野郎と呼ばれています(笑)

暇さえあれば更新して行こうと思いますので、下手な文章ですが宜しくお願いします!

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凄く面白かったです。投稿写真見たかった...
怖いのですがHの表記が芋にかわってた芸の細かさに笑っちゃいました(* >ω

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