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初めまして。海斗と申します。
これからお話しする内容は僕がこれまでに数々経験した心霊体験の一つ、実話になります。
当時僕は、中学生最後の夏休みを
友人のK、S、Hという3人と過ごしていました。
「今がたのしけりゃそれでよし!」こんな言葉が5分に一度は飛び交っていただけあって、
宿題なんて一切やらずに毎日毎日遊んでいた。
遊ぶと言っても地元が田舎だったこともあり、
自転車で走りまわるか、家でTVゲーム…くらいしかありませんでした。
ですが流石に自転車にもゲームにも飽きた僕たちは、
何か面白い事はないかと考えた結果、
K「そういやー近くに○○の滝って所あったよな?」
僕「あるけど…」
○○の滝、それは僕の家から徒歩10分くらいの位置にある観光スポットだ。
週末になると県外からの観光客も訪れるそこそこ有名な場所ではあるのだが、
敷地内には寺と広大な墓地もあり、地元の人間しか知らない怖い話も存在する。
「○○の滝の公衆便所で自殺した女子高生の霊が現れる」
「○○の滝の電話ボックスが深夜いきなり鳴り響く」などは地元では有名な話だ。
だがKは隣町の人間なのでこの噂は知らない。
Kが○○の滝と言い出した瞬間、僕とSとHは顔を見合わせ無言になった。
僕とS、Hは心霊系が苦手なのは言うまでもない。
H「…K…お前もしかして…行きたいのか?」
K「あたりめーだろ!」
ここでSが怠そうに○○の滝に伝わる怪談をKに説明した。
僕はこれでKの行く気も無くなるだろうと信じていた。
だかKは逆に興味深々になってしまい完全に行く気満々だ。
K「どうせ暇だろ⁉︎」
この言葉を合図に各々深いため息をつきながら○○の滝へと向かった。
自転車だと5分で○○の滝に着いた。
時刻は深夜1時半、夜に来るのは初めてだ。
灯りすらなくいかにも「出そう」な雰囲気。
それに加えて昼と夜の景色のギャップに驚いた。
僕「家からそう遠くないのにまるで異世界に来たみたいだね」
H「怖いからささっと一周してすぐ帰ろうか」
先頭は勿論Kだ。一人だけ意気揚々と進んでいる。
その時Sが不機嫌そうに言った。
S「…Kのやつやっぱり公衆便所に向かってるな。」
H「Kに○○の滝の怪談を教えたのは失敗だったな」
S「間違いない」
それから数分歩くと問題の公衆便所が見えてきた。
電気もついていないその建物は闇に包まれ、
女子高生が自殺したという怖さを十分にに引き立てている。
生暖かい風が吹く中、皆想像以上の不気味さに言葉を失っていた。
Kを除いて…
Kは両手で拳銃の形を作りながらためらいもなく、
「突撃します!!」と叫びなが公衆便所へ入って行った。
そんな彼のテンションにはついて行けず、
外で待つことにした。
2分ほどしてKが戻ってきた。
S「どうだった?」
K「なにも起きねーよ!つまんねー」
H「じゃー帰りますかー?」
K「電話ボックス行ってからなっ」
正直僕はすでに限界だった。公衆便所に来てから耳鳴りが酷く、
おまけに体もやけに怠い。ここで帰ろうと言えなかった事を今では後悔している。
しばらく歩くと電話ボックスについた。中に幽霊がいないかと怖かったが中にはなにもいなく、
ただ寂しく電話ボックスはそこにあった。
電話ボックスの中は蜘蛛の巣やら、虫の死骸で散らかっている。ほとんど利用されてないことが安易に予想できる。Kは勿論、先ほどの公衆便所で慣れてしまったのか今度はS、Hまでもが電話ボックスでKと共にイタズラをしているようだ。
適当な番号を押してイタズラ電話をしたいるらしい。こんな時間に迷惑すぎるとおもい「やめときなよ〜」と言おうとしたその時だった。
「リリリリリリリリリリーン」
music:6
この場にいる全員に緊張が走った。この音は今目の前にある電話ボックスの着信音じゃないか!
そんなことを考えているとSがポケットから携帯電話を取り出し、
music:5
S「すまん、この音おれの着信音なんだ」
K「まぎらわしいな!ww」
H「ショック死寸前だったぜww」
などと今の偶然を笑っていた。だがそれは偶然じゃないとすぐに分かった。
S「…K…なんでお前…俺に電話してんだ…?」
music:3
K「は?携帯なんていじってねーよ!」
Sの携帯の画面には今も「着信中 K」と表示されている。Kが慌てて自分の携帯を確認しようとするが、何処にもない。
K「携帯がないぞ」
H「無いわけないだろ」
K「もしかして公衆便所に落としてきたとか…?」
僕「……だとしたら誰がKの携帯でSに電話してるんだ?」
皆「………。」
こんな時間にあの公衆便所で誰かがKの携帯を拾い、Sに電話をかけているとは考えにくい。
なによりKの携帯は起動と同時にパスワードを入力する必要があるのでK以外の人間がKの携帯で電話をすることは不可能だ。
相変わらずSの携帯には「着信中 K」と表示されていて、「切」を押してもまたすぐに鳴り出す。
電源も切れない、サイレントにもできない。
この恐怖心を煽る着信音をこれ以上聞き続けると気が狂いそうだ。
S「皆、とりあえず落ち着こう。でK、最後に携帯を弄ったのは何時何処でだ?」
K「公衆便所向かってる途中に彼女にメールしたから…多分それが最後」
S「それじゃ最初に公衆便所に向かった道を携帯が落ちてないかよく確認して歩いてみよう」
自分の携帯が恐ろしい事になりながらもSは冷静だった。
そしてSに言われるがままさきほど通ったばかりの道を携帯が落ちていないか確認して歩いたきたが結局見つからず、とうとう公衆便所に到着してしまった。するといままで鳴り響いていた着信音がピタリと止まり、便所の中で「カタンッ」と音がした。まるで便所の中に居る誰かが携帯電話を硬い地面に落とした音…皆がそう思った事だろう。
恐る恐る中へ入ると泥だらけになったKの携帯電話が落ちていた。
Kはそれを拾い上げ、正常に使えるか確認している。機能は問題なく使えているようだ。
問題があるとすればSへの発信履歴がないこと、Sの携帯も同様にKからの着信履歴がない。
当時の携帯はスマホなどは存在しなかったため全ての操作がボタン式である。
そのボタンの隙間にも誰かが必死にボタンを押したかのように泥が入り込んでいた。
music:5
現状がよく理解できていないまま皆、無言で僕の家に帰った。時刻は深夜3時半。玄関を開けるとそこには鬼の形相をした母親が立っていた。
母「あんたら変なもん連れて家に入るんじゃねぇー」
恐らく母親のこの怒鳴り声で我が家の半径50mの住民達は眠りから覚めた事だろう。
僕の母親は霊視や透視、除霊もできるなかなかの人物なので、怒鳴られた後すぐに除霊みたいなことをしてもらった。
その後皆変わったことはなく極めて平和だ。
唯一変わったのはKの携帯電話ぐらいでしょうか。
作者海斗
体験談なので怖くありません。