昔、幼稚園の頃に起きた実話です。
幽霊とかそんな話ではありませんが、幼い自分の無知さに今考えると恐ろしい体験でした。
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当時、私は幼稚園の頃、母子家庭で幼稚園が午前で終わると、今で言う学童保育園に預けられてました。
ですが、私の地域では学童に預けられている子も少なく、幼少の2〜3才の中に幼稚園児1人だったので一緒にキラキラ星とか歌わされたり踊らされたりする事が苦痛で仕方がありませんでした。
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なので、預けられて数ヶ月も経たないうちに、 幼稚園の降園に合わせて来る保育園のお迎えバスから隠れて裏門から逃げ帰り、自宅アパートの前で母親が帰ってくるまで1人遊びするようになりました。
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母に何度も説得されましたが、それでも何度も逃亡するので、とうとう母が折れて叔母(母の妹)にお迎えをお願いするようになりました。
でも、叔母にも都合があるので毎日ずっと一緒にいるわけにもいきません。
だから1人でお留守番もざらでした。
幼稚園児1人お留守番。
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今考えると自分の子供には、とてもさせられませんが、当時の私は1人でお留守番も学童に行く事に比べれば全然苦ではなく、むしろ好きなテレビを見れて遊べて天国でした。
前置きが長くなりましたが、あの日も、叔母が迎えに来てくれましたが、何かの都合で叔母は私を置いて帰ってしまいました。
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なので、いつものように1人で遊び、お小遣いの百円を持って自宅アパート前にある商店に駄菓子を買いに行ったのを覚えています。
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夏が終わりそうな、それでも暑い季節でした。
「どれにしよーかなー?」
アイスの入った冷凍庫を覗いたり、駄菓子を物色してました。
アイスバーの中でも祖父が大好きだった『エリマキトカゲアイス』はチョコが苦手な私はダントツ嫌いなもの。
冷凍庫の中に沢山積まれてました。
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「アイスはやーめた♪」
そして適当な駄菓子を買い、店を出た瞬間
目の前に見知らぬお兄さん?おじさんが立ち塞がりました。
白いTシャツ、太めの体にキチキチなGパン、それにTシャツをイン。
眼鏡を掛けて汗だくな風貌は今で言う典型的なオタクっぽい感じです。
男から漂う異様な雰囲気がインパクト強く、今でも鮮明に覚えています。
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何?この人?
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と思う束の間、ワシッと手を握ってきて、今出た商店に手を引っ張られて引き戻されました。
え?何?何?
わけ分からず引っ張られて、先ほど覗いたアイスの冷凍庫の前に連れて行かれて
「これでイイよね?」
と男の人が手に取ったアイスは私が大嫌いな『エリマキトカゲのアイス』
え、これ嫌い。
そう私が言う間もなく速攻で手を引きレジに向かう男の人。
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「え、あっ…。(このアイス嫌いなのに)」
さっさとレジで会計をして手を引っ張って店を出る男の人。
もう、1分もない位の早さ。
そして買ったアイスを私に握らせて
無言で手を引っ張る
幼稚園児の女の子の力なんて抵抗できる訳が無い。五年そこそこしか生きてない子供が今危険な状態である事を考える暇さえ与えない。
能天気な私は大嫌いなアイスをどう処分してよいか考えていた。
そうこうする内に店の前に停まる一台の軽自動車の前に連れて行かれた。
頭の中は???がいっぱい。
ドアをガチャっと開けると男の人は私を車に乗せようとした。
さすがに本能的に抵抗する。
何で車に乗らないといけないの?
アイスもいらない。
何?この人!
なかなか車に乗らない私を無理矢理に腕を引っ張り乗せようとしてる時。
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私と男の間からバシッと男の手首を掴む手。
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!?
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見上げると…仕事中であるはずの母だった。
母は無言で私のアイスをひったくり男に押し付けて、素手早く私を男から引き戻し、いつの間にか側に停めてあった母の車の助手席に私を乗せて急発進させた。
短時間に自分の身に何が起きたか理解できず、母を見るとギアを握る母の手が小刻みに震えていた…。
そこで何も言わずに黙って乗る事にした私だった。
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後日談
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あの日以降、急遽私は退園して自営業を営んでいた祖父母に預けられる事になった。
どうやら叔母の話から幼稚園で陰湿なイジメにもあっていたらしい私。
その事も兼ねて退園となった。
確かに靴が無くなったり、執拗に突き飛ばされたりされたが、靴は無くなっても歩けるし裸足で歩いて帰ってた。
突き飛ばすのに対して『何?この新しい遊び!』と転ばないようにバランスとって楽しんでた。
そうしてる時に迎えに来た叔母さんが怒鳴り込んで来た時は意味が分からなかったけど(遊んでるのに友達が怒られる意味が)イジメられていたんだよね。
そりゃ怒鳴り込むわけです。(笑)
そんな訳で、数年後…色んな事が理解できる年頃になり、母にあの日の事を覚えてるか聞いてみた。
「あんた、覚えてるの??」
凄い驚いた顔して聞き返された。
あの日、疑問に思っていたことがあったから敢えて聞きたかった。
「あの日、仕事中の時間だったよね?」
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あの日、叔母は帰る予定は無かった。
だが急遽、仕事で呼ばれて行かなければならなくなった。
1〜2時間だけ…留守番慣れしていた私は「大丈夫!」と言ったので、すぐに戻る予定で出たのだった。
その頃、何も知らない母は妙な胸騒ぎで仕事も手につかずにいた。
保険会社で働いていたので外回りすると告げ、営業に出るふりして会社を抜け出し私の様子を見に家に戻ろうと思ったらしい。
アパートに向かう道中胸騒ぎが止むことはなく、あと少しで着く…と、
ふと商店に差し掛かった時、胸騒ぎが確信に変わった。
娘が見知らぬ男に手を引っ張られて車に乗せられそうになってる!頭が真っ白になり
気がつけば男の手首を掴んでいた。
そこからは無我夢中で娘を男から引き剥がし、娘の奪還に必死だったらしい。
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幽霊団地に住んでる時は、私が心霊体験をガンガンしてるのに一緒に住んでる母は零感で「そんな事あった?」って感じだったのに…
母の第六感恐るべし。
「今更だけど、警察に通報したの?」
Σ(°Д°;)←母
「あ…だって、必死だったし…(汗)」
えぇぇーっ!通報しなかったんかい!
「ちょっと…ダメじゃん!(怒)」
でも、あれからあの地域でそんな幼女誘拐事件とか無かったから大丈夫だったのかもしれない。(大丈夫であって欲しい。)
「普通は通報するよー?」と呆れる私を尻目にションボリする母
そんな母に「…ありがとう」と小さく呟いた。
あの日、母が来てくれなかったら今の私は無かったのだから。
最悪、生きてることも奇跡なのかもしれない…。
作者Hana
投稿第二作になりますが、これも実話でございます。
私の実体験で幽霊とは無関係かもしれませんが、第六感というものがあるならば、この話もそんなジャンルの話だと思い投稿しました。
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相模原市の行方不明だった女の子が、無事保護されたと今朝15日のニュースで報道されてました。本当に良かったです。