私が小学校の頃、エンジェルさんが大流行しました。
エンジェルさんとは、名前だけで内容はこっくりさんと同じです。
ただ、名前がエンジェルさんと言う響きに、こっくりさんみたいな禍々しい感じが無いので気軽に出来る感じが流行った要因と思われます。
あと、こっくりさんと違うのは名前だけではなく、五円玉を使わず鉛筆を使うと言うことと、『はいorいいえ』ではなく『Yes or No』でした。
そんな感じで思春期の高学年の女の子の中で大流行。
45分の長時間の休み時間になれば廊下には4、5組のグループがエンジェルさんをやっていました。
今思うと異常な光景が毎日繰り広げられてたのに先生に注意されないのが不思議でした。
多分、大半がエンジェルさんを恋のキューピッドのエンジェルみたてていたからでしょうか?
「私は何才で結婚しますか?」
「◎◎くんは好きな人いますか?」
「3組の先生と1組の先生が付き合ってるって本当ですか?」
…等々。恋バナ的質問が中心でしたし、
そして、それの答えを聞いてキャーキャー言う女の子達を大人から見たら微笑ましい感じに見えていたのかもしれません。
私は、一緒に笑って見ているだけのギャラリーにすぎず、興味はあったものの参加はしてませんでした。
しかし、ある日の放課後。
ねぇ、エンジェルさんやろうよ!
と友達から誘われて魔がさしたと言うか、いつも見ていて危ないと思わなかった事もあり、興味があった私は参加する事に同意してしまいました。
今思えば軽率でした。
今でも忘れません、夏休みに入る前の真夏の暑い日でした。
放課後。
先生も居なくなり、一つの机を3人で囲むと残っていた生徒も集まりエンジェルさんがスタートしました。
何を聞くか、何て答えが出るかワクワクしていたのを覚えています。
どんな風に呼び出すかは忘れましたが、3人の握っていた鉛筆が動き出しました。
ギャラリーからは、おぉ!といつもながらの事でも驚きの声が漏れます。
最初は結婚は何才でしますか?とか、他愛もない質問をしていました。
しかし、ある質問から事態が急変します。
「ねぇ、エンジェルさんって名前あるのかな?」
「どんな名前だろうね〜?」
「聞いてみようよ〜!」
ギャラリーも興味津々。
そこで、私達は聞きました。
「エンジェルさん、エンジェルさん、貴方のお名前はなんですか?」
すると、鉛筆が走りだしヘンテコな名前が出てきました。
もう忘れましたが、『じゅげむじゅけむ』に出てきそうな名前です。
可愛い名前を想像していたので、ギャラリーも思わず吹き出し、つられて私も爆笑してしまいました。
その時です。
鉛筆がぐるぐる回り始め、初めての事態に教室の皆が静まりかえりました。
ギャラリーからは
「怒ったんじゃないのか?」
「ヤバくないか?」
とざわつき始め、私達は慌てて帰るように言いましたが、答えは
『No』
ますますパニックです。
落ち着け落ち着けと自分に言い聞かし、何とか帰ってもらおうと質問しました。
「どうしたら帰ってくれますか?」
しかし、答えは
『ゆるさぬゆるさぬゆるさぬ』
一緒にやっていた友達も泣きそうです。
しかし途中で投げ出すとダメと言うこっくりさんと同じ理由がエンジェルさんにもあり、辞めるわけにもいきません。
「お願いです!どうしたら帰ってくれますか?」
答えは
『さんじゅっぷんみずにかおをつけろ』
30分水に顔をつけろ?死ぬでしょ!
ギャラリーもわーわー!騒ぎ始め
やっている当事者の私達は尚更生きた心地がしません。
「他の方法はありませんか?」
しかし答えは
『まどからとびおりろ』
四階の教室から飛び降りるとか無理!
もう何を聞いても死を連想させる言葉しか出ません。
3人顔を見合わせて
誰か悪戯なら止めてよ。と同じ顔。
どっかで3人の誰かが動かしているのではと疑心暗鬼。
しかし、続きます。
ギャラリーもいつの間にか他の教室で残っていた子達も来てどうしようと教室中がパニック。
3人で「すいません!すいません!ごめんなさい!ごめんなさい!」と必死。
3人ガタガタ震えてきました。
恐怖もありますが、寒いのです。
ギャラリーも異常な寒さに誰かが温度計を確認したところ17度
沖縄の真夏の教室
ありえません。
その時、1人の男子が教室に飛び込んできました。
「サン作って持ってきた!大丈夫かー!?」
ギャラリーから歓声が湧きました。
“サン“とは草を結んだようなものですが、沖縄では魔除けのような効果があるとされてるものです。
その男子は以前から霊感があると言われてる子で、教室に飛び込んだはいいが、天井を見て「うわっ」と驚いてサンだけ置いて出て行ってしまいました。
しかし、ここからコレが良かったのか
エンジェルさんの答えが変わりました。
『たがいにほほをじゅっかいぶて』
『ももをぶて』
『うでをぶて』
何とかこなせそうな答えが返ってくるようになりました。
ゴメン!と言いながら3人で空いてる手を使い叩き合いました。
「やりました。帰ってくださいお願いします!」
3人とも泣きながら懇願しました。
それでも『〜ぶて』は続きます。
周りも心配で帰るに帰れない状況。
あんなに尖った鉛筆もそろそろ芯が無くなりそうです。
心の中で笑ったことを心底後悔して、もうどうしたら許してくれるのか頭の中グルグル。
最初はパチンッくらいだった叩き合いも、手加減してるから許してくれないんじゃないかと言う答えになり、3人は早く終わらせたいから思いっきりぶてば終わるかも!と後半は本気の叩き合いでした。
見てるギャラリーの女の子も泣き出す異様な光景。
必死さが伝わったのか
ようやく『Yes』へ
そして帰ってくれました。
約二時間以上かかりました。教室は夕陽に照らされ赤く染まっています。
教室には20名以上いたにもかかわらず、温度計は16度にまで下がっていました。
3人とも頬や太股は赤く腫れ。
終わった後は抱き合って泣きました。
それから、あんなに流行ったエンジェルさんはパッタリする人が居なくなり
その時のことを皆忘れたがっているように見えました。
しかし、私は霊感が強いと言われてた男子が、あの日に何を見たのか気になっていたので後日聞きました。
「教室の外からでもヤバイってわかっていたけど、何とかしないとと思っておばぁから習ったサンを作って持って行った」
そして教室に入ったら
「お前達の上をぐるぐる廻る大きい目が浮いていた」
もう絶対やらないと心に誓ったのでした。
今やキューピッドさんやらエンジェルさんやら名前は変わっても降霊術なんて遊び半分でやるものではないって言う本当話。
作者Hana
私が最初で最後にした『エンジェルさん』
こっくりさんと同じ降霊術の実話です。
こう言う書物は慣れてないので誤字脱字あるかも知れませんが、ご了承下さいませ。
※今回は効果音無しです。