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ピンポーン
17時55分。
チャイムが鳴った。
俺はドア穴を覗き、誰かを確認するとドアを開けた。
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「お待ちしてました。田所さん」
「お邪魔します」
田所さんを家の中に入れる。
「ここに座ってください。コーヒーでいいですか?」
「すいません。ありがとうございます」
コーヒーの匂いが部屋中を漂わせる。
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「田所さん…」
「はい…」
「昨日は急に話したいことがあると言って、わざわざ家にまで来ていただきありがとうございました…」
「いえ、そんなことは」
「田所さんしかいないから…」
「え?」
「いや、なんでもないっす」
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「実は私も、小林さんに話したいことがありまして…」
「そうですか…」
「では…私からお話しますね」
「はい…」
「昨日の三浦さんのこと…なんですが」
「あ、はい…」
「山中夏実さんの時と同じ死に方でした」
「それって…」
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「裏返しです」
「…空が…」
「私は、山中さんを殺害した犯人と同一人物だと判断してます」
それはお前だろう?
俺はそう思った。
口にしたいが、今は我慢しなくちゃいけないと思った。
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「そ、そうですか…」
「あと…家島さんの事件は覚えていますか?」
「…家島?」
「はい。山中さんと同級生の方です」
「あ…覚えてます」
「その事件の犯人のことで…」
「は、犯人がわかったんですか?」
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「はい。家島さんを殺害した犯人は山中夏実さんです」
「え…?」
「山中さんが犯人です」
「夏実が…?」
「はい」
「しょ、証拠とかあったんですか!?夏実が犯人という…」
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「…はい」
「ど、どんな証拠ですか!?」
「…小林さん」
「は…はい…」
「何か隠してますよね?」
「え!?か、隠すって…なにを…」
隠している?なんのことだ?
一瞬にして頭が真っ白になった。
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「本当に隠していませんか?」
「だ、だからなんのことですか?何言ってるのかさっぱり…」
「小林さんは知っていたはずです」
「…へ?」
「みつけましたよね。穴」
「…あ、あな…」
「隣の部屋と通じてる穴です」
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「…さぁ…」
穴。
穴って前見つけたあの穴か?
「その穴を覗きましたよね?」
「なんのことだか…」
「小林さん…私は本当のことを聞きたいだけなんです。もちろん、何故私に言わないで秘密にしてたかはよく分かりませんが…」
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「…穴がなんですか…?」
「小林さんの隣の部屋から異臭がすると110番された方がいまして。警察が確認しに部屋に入ったんです。そしたら…大量のゴミ袋の中に死体がありました」
「…そ…そうですか…」
「その時、小林さんの部屋と通じてるような穴を見つけました。覗いてみると、小林さんの部屋が見えました」
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「それで…」
「結構な大きさの穴だから…気付かない訳ないかと思いまして…」
おかしいと思った。
俺は穴を覗いた後、塞いだ記憶がある。
…剥がれたのか。
「…知ってました」
「やはりそうでしたか…」
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「知ってはいましたけど、別に田所さんに言うほどじゃないと思いまして」
「覗かなかったんですか?」
「覗きましたけど…ゴミしかなかったから…」
「そうですか…それは失礼致しました」
「それで…夏実が犯人という証拠はなんですか?」
「本当に知らなかったんですか?隣の部屋に住んでいた人物は山中夏実さんだと」
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「……え?」
夏実が隣人だった?
「会ったことはないんですか?」
「会ったことは……あ…」
前、隣から結構の音が聞こえた時、俺は…
「会ったこと…あります」
「その時に気づかなかったのですか?」
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「その時は…なんというか…深夜だったという事もあって顔が全然みえなかったんです…女性ってことは分かったんですけど、寝ぼけてましたし…」
「服装を、覚えていますか?」
「服装ですか…?えっと…白だった気が…すいません。あまり、覚えてないです…」
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「いえ、大丈夫です」
「あの…それで、どうして夏実が犯人だと…?」
「指紋が出たんです。ゴミ袋の中に入っていた死体から」
「あ…そうなんですか…」
「はい」
ピロリーン♪
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「あ、すいません」
「いえ、みていいですよ」
「すんません」
携帯をみてみると、LINEが来ていた。
適当に返信をして携帯を机に置く。
「いいんですか?」
「あ、はい。大丈夫です…」
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「じゃあ私は小林さんに話したかったことを話したので、次は小林さんが」
「あ…」
なんて言おう?
夏実と空を殺した犯人はお前だ。
と、言うのか?
それとも…
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「あの…夏実と空を殺した犯人のことなんですが…」
「はい」
「何か、分かっている事とかはあるんですか…?」
「…分かっている事…」
「…はい」
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一瞬。
ほんの一瞬だが田所さんの顔が…
この前みた、殺意が湧いたような顔になった。
恐い。恐かった。
「そうですね…まぁ、少しは」
「そ、そうなんですか…」
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「…小林さん」
「はい?」
「何も…なにも覚えてないですか?」
「…え?」
田所さんが思いもよらぬ事を言ってきた。
なにも覚えてない?なにを覚えてない?
「…忘れたんですか?」
「なにを言ってるのか…わからないです」
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「じゃあ、この子覚えてますか?」
そう言って田所さんが出してきたものは写真だった。
「え…写真?」
「みてください」
みてみると、そこには1人の女の子が写っていた。
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小学1年生ぐらいだろうか?
あどけない笑顔が目に映る。
「この子は…?」
「知らないですか?」
もう一度みてると、どこかでみたことがあるような気がした。
「…みたことあるような…」
「この子は、私の娘です」
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「娘さん…いたんですか」
「亡くなってしまいましたけどね…」
「え…亡くなったんですか?」
「ええ…階段で足を滑らせて転落してしまって即死だったらしいです」
「階段で…」
「転落した時、頭に直撃だったらしく…」
「頭…」
「娘が亡くなったって知ったのは、亡くなった次の日に聞いたんです」
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「え?」
「娘が小学生になる前に、妻とは離婚してたんです。でも、1ヶ月に1回程度娘に会いに行ってました。やっぱり、妻とは離婚しても娘は娘ですから」
「あ…」
「…なんか、すいません。変なお話をして」
「いえ。そんなことないです」
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「あの…でもなんで俺に写真をみせたんですか?」
「それは…」
〜♪
その時、俺の携帯に母親から電話がきた。
「あ…すいません」
「いえ、出ていいですよ」
「ありがとうございます。あ、外に出て電話します…」
「お構いなく」
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俺は外に出ると、電話に出た。
適当に返答して、電話を切ったのが10分後だった。
「すいません…長引いて…」
部屋に戻ると、田所さんがいなかった。
「…田所さん?」
その時、田所さんが俺の部屋から出てきた。
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「…」
「どうしたんすか…?俺の部屋で何を…」
「小林さん…我々はもう、全部知っているんです」
「さっきからなにを言ってるのかわからないんですけど…」
「小林さんは、私が犯人だと思っているんでしょう?」
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ビクッとした。
「…そ、そんなこと」
「そんなこと?」
「思ってなんか…ないですよ」
心臓がバクバク鳴っている。
「まぁ…あながち間違ってはいませんが」
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「え?」
なんて言ったのか、聞き取れなかった。
「小林さんは本当に何も覚えてないんですか?」
「さっきからなんなんですか?本当にわかりません」
「ご自分の病気もわかりませんか?」
病気?
「何のことだか…」
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「あなたは高次脳機能障害ですよね?」
高次脳機能障害。
聞いたこともない。
「俺…が?」
「ご自分のしたことを覚えてないんですよ」
「何が言いたいんですか?」
「山中さんと三浦さんを殺した犯人は…
小林さん。あなたですよ」
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なにを言ったのか俺は理解できなかった。
は?
俺が犯人?
俺が夏実と空を殺した?
そんなわけがあるわけない。
何故俺が夏実と空を殺す理由なんてある
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「そんなことないじゃないすか…証拠でもあるんですか?」
「ありますよ」
「どこに…」
「申し訳ございませんが、小林さんのお部屋を詮索させてもらいました」
そう言って、田所さんは俺の部屋に入っていった。
俺も後から入る。
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部屋に入ると、クローゼットの前に田所さんがいた。
田所さんがクローゼットを開けた。
「ここに、証拠があります」
クローゼットの中にあったのは、包丁、ノコギリ、他にも色々入っていた。
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「…なんだこれ…そんなの俺…買った覚えないし…クローゼットの中にいれた覚えないですけど…」
「ちゃんとみてください。このノコギリ…血痕がついてるんです」
「…知らない」
「この血痕を調べれば、誰のか分かります」
「俺は…知らない」
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「知らないということは、調べてよろしいですか?」
「知らない…知らない」
「小林さん…」
「俺は本当に何も知らないんだ!!!田所さんが…田所さんがいれたんじゃないすか?俺を犯人にしたてあげる為に…」
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「…」
「俺は…本当に…」
その時、俺の頭の中であの日の出来事が浮かびあがった。
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あの日のこと。
そう、夏実と待ち合わせをしていた日。
俺は夏実に電話をした。
夏実「え?待ち合わせ時間を19時じゃなくて、18時にしてほしい?」
俺「できる?」
夏実「いーよー。じゃあまたね」
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俺がついた時には夏実はもう来ていた。
夏実をみた瞬間、首を絞めていた。
何故だか分からない。
ただ耳元で何かを囁かれたんだ。
小さい女の子に。
気付いた時には、夏実はもう夏実じゃなくなっていた。
血と肉の塊になっていた。
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空と別れた後。
俺は空に話したいことがあった。
空を見つけて話しかけようと思った時。
また囁かれたんだ。
小さい女の子に。
気付いたら、空だけど空じゃなかった。
血と肉の塊。
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「…小林さん、殺人容疑の疑いで逮捕します」
「…」
俺は…何をしてしまったんだ。
ずっと田所さんが夏実と空を殺したんだと思っていた。
…
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〜エピローグ〜
「田所警部!頼まれていた資料です!」
「あぁ…麻生くん。ありがとう」
麻生くんから受け取った資料に目を通す。
「…そういえば…小林容疑者は落ち着いたかな?」
「はい!睡眠薬が入った飲み物を飲ませたので、今は寝ています」
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「そうか。それは良かった…」
「でも、田所警部本当危なかったですよね。高次脳機能障害の病気をもつ犯人と2人きりだったなんて…」
「まあ、危なかったよな」
「本当尊敬します!」
「ありがとう」
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「…さて、小林容疑者の取り調べでも行うかな…」
「それなら…他の警部がしてますから田所警部がしなくていいと思いますよ?」
「あぁ…少し、彼に話したいことがあってね」
「そうなんすか…分かりました!」
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小林さんに会いに、留置場に行く。
留置場に行く間に、色々なことを思い出していた。
「…田所さん?」
「小林さん。落ち着きましたか?」
「あ、まぁ…はい…」
その時、すいません。と看守に声をかけられた。
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「田所警部お疲れ様です」
「お疲れ様」
「小林容疑者に用事でも?」
「まあ。…少しお願いがあるんだけどいいかな?」
「なんでしょう?」
「小林さんと少し2人だけでお話がしたいんだ。少し、外に出てもいいかな?」
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「あ…じゃあ私も着いて行きます。何があるのか分からないので」
「大丈夫大丈夫。一応、上の方にも許可とったから」
「それなら…分かりました」
「ありがとう」
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「小林さん。話したいことがあるんで、少し外の空気でも吸いに行こうか」
「あ…はい…」
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小林さんと外に出ると、小林さんがぽつりと呟いた。
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「小さい女の子が…」
「…女の子?」
「毎晩毎晩夢に出てくるんです…俺、本当恐くて…」
「…その女の子はなんて言ってるんですか?」
「それは…聞こえないんですが…」
「…小林さん」
「はい?」
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私はポケットから写真を取り出した。
「この写真覚えてますか?」
「あ…は、はい…娘さんですよね…」
「この子…亡くなったと言いましたよね」
「階段から落ちて…でしたっけ…」
「警察側は事故だと判定したんです。でも私は…」
「…」
「事故じゃなく、殺されたんだと思いました」
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「…え?」
「この子、虐められていたんです」
「虐め…」
「名前は、康子って言うんですよ」
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「康子…」
「思い出しましたか?あなたが殺した子ですよ」
「…俺が…?」
「階段から落としたでしょう。私は忘れていませんよ」
そう。私はみてしまった。
娘…康子がこいつ、小林に落とされた所を。
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あの日は、康子の担任に話したいことがあった。
康子が虐められているんじゃないかって。
でも、あのクソ担任はそんなことはない。と、適当にあしらった。
その帰り、康子をみつけた。
頭がグチャグチャになっている康子を。
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誰が落としたなんて、すぐ分かった。
康子の隣で不気味に笑っている男の子を。
その時は。
まだその男の子は未成年だったから。
未成年だとちゃんと罪を償えないから。
私は黙っていた。
いつからか、Twitterを始めた。
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康子で。
そしたら、あいつもみつけた。
小林大介。
私の最愛なる娘を殺した男。
平凡に暮らしている姿をみて、殺してやろうと何度思ったことか。
小林大介のことを気持ち悪くなるぐらい調べた。
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高次脳機能障害という病気を持っていることも、後から知った。
いつからか、康子ぐらいの子をみると連れ去っては可愛がっていた。
でも、私がいくら可愛がっても女の子達は泣いた。
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なぜお前は康子じゃないんだ?
何回この言葉を女の子達に言っただろう。
用が無くなったら、腹を抉ってやった。
女の子の阿鼻叫喚と腹を抉るたびの快感。
たまらなかった。
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気づいたら、警察も幼女殺害事件の犯人を探し始めていた。
だから…
「小林さんには、感謝してます」
「…は…?」
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10日後のことだった。
小林大介が死刑判決を下されたのは。
4 完
作者リン
やっと書き終わったー!( ´o` )ノ
お待たせしてすいません(*。・ω・`*)
今回で、Twitterは終わりです。
読者の皆様、ありがとうございました!
なんかあまりTwitter関係なくなってる気がしますけど、そこは突っ込まないで下さい笑
最後らへん、グダグダな気がしますが…笑
次回作も楽しみにして頂けたら、嬉しいです(´∀`*)♡