怖い、と言うより未だに納得のいかない話です。
よろしかったらご覧ください。
私は大学時代、学生寮に住んでいました。
今のように「完全個室」なんてものはなくて部屋は二人部屋、お風呂とトイレは共同で食事は食堂で。
そんな感じの女子寮でした。
廊下はリノリウムと言うんでしょうか、あのノッペリとした質感の冷たい廊下。
スリッパの音は「ペタペタペタペタ」と響きます。
足音が煩いと怒り出す先輩もいるので、廊下は基本なるべく静かに歩くように皆心がけていました。
あれは確か私が二年生の頃。季節は冬場でした。
同室の子は珍しく早寝をしていて、私はその子を起こさないよう気をつけて音楽を聴いていたように思います。
と、どこからか「リンリンリン」と言うか「シャンシャンシャン」と言うか、とにかく鈴の音がかすかに聞こえるのです。
最初は別に気にも留めてなかったんですが、なんかだんだん音が大きくなるような。
「あーあ、誰かスリッパに鈴つけてんのね?煩いと先輩から怒られるやろうに、なんでそんなスリッパ買ったかね〜(^^;;」
「しかもこの階の廊下歩きよんやろ。誰かね、1年生か?」
「でもこの階、1年生は入ってなかったよな…」
だんだん近づいてくる鈴の音を聴きながら色々考えているうちに、ふとあることに気づきました。
鈴の音しかしない。
スリッパで歩いているのなら、鈴のついたスリッパで歩いているのなら、鈴の音に重なってスリッパ独特の「ペタペタペタペタ」という音が聞こえるはずなのに。
いえ、よしんば裸足で歩いていたとしてもリノリウムの廊下で無音で歩くことはできないんじゃ?
抜き足差し足で歩けば別かもしれませんが、鈴の音はとてもリズミカルに響き、なおかつ近づいてくるのです。
まあでも、うちの部屋とおりすぎて曲がったところには共同のトイレがあるし。
トイレに行く人が素早く歩いてんだな。
きっとそうだ、そうに違いないからうちの部屋の前とおり過ぎたらこっちの窓からトイレ前の廊下覗いたろ。
誰だよ、全くもう。
そう思って鈴の音が部屋の前を通りすぎるのを待ちました。
鈴の音が大きくなります。
そして…
唐突に音が止みます。
え?
止まった、この部屋の前で?
金縛りにあったわけではなかったんですが、私は椅子に座ってドアを凝視したまま動く事ができませんでした。
ノック、されたらどうしよう?
ノックされる前にドア開けたろか?
開けて、いいのか?
どのくらいそうしていたか…多分そんなに長い時間ではなかったと思いますが、唐突に鈴の音が「リンリンリン」とリズミカルに鳴り出し、どうやら角を曲がってトイレ前の廊下へと…
なので、見てみたんです。
部屋の窓からトイレ前の廊下を。
何も、見えませんでした。
鈴の音は調子を崩すことなくリズミカルに去っていきました。
なんだかわけがわからないまま、とりあえず寝ましょうと灯りを消してそのまま眠って…
そして次の日、同室の子にその話をすると「それは多分ドアは開けなくて正解と思う。そしてそのようなことの後で部屋の電気を真っ暗にして寝るあんたがわけわからん」と呆れられたわけですが…
その後しばらくして、「寮の裏手にある小さい神社には日本人形が納められていて、その人形が夜な夜な寮の周りをぐるぐる回る」という話を聞かされたわけですが。
どうも鈴の音はその話には出てこないようでして…
あれは一体、何事だったんでしょうねぇ…
作者ぱっくん
当時は怖いようにも思ったんですが、鈴の音があまりにも陰でなく響いていたな〜と思うともうひたすら不思議としか思えずwww
そして「鈴付きのスリッパ」を誰か持ってないかと探しましたが、そんな寮生もおらず(^^;;
隠れてネコ飼ってないか⁉︎とかも寮母さんが厳しい人で有り得ず。
ほんと、一体何だったんでしょうねぇ…