wallpaper:234
これは私がまだ小学生だった頃のとある夏の話です。
私の家は海のすぐ近くで特に私と両親の寝室のある二階は風通しも良かった為、寝苦しくなる程の熱帯夜などは数えられる程度しか経験したことはありませんでした。
しかしその夜は何かがおかしかったのです。
nextpage
sound:8
その夜は波が高く、いつもは優しい波音が酷く騒々しく響いていたのを覚えています。
普段なら気にならない程の些細なことでしたがその日はなぜか胸騒ぎに似た感覚が私の胸を這いずり回っていました。
しかし昼間の遊び疲れはそんな違和感を気にも留めず、幼い私の体をすぐに眠りへと引きずり込んでしまったのです。
nextpage
その晩、私は奇妙な音で目覚めました。
ギィ...
ギィ...
乾いた木の軋む音、階段を誰かが上って来る音でした。
大方、両親のどちらかが一階のトイレから帰って来たのだろうと思いましたが、私の隣には父と母が気持ち良さそうに寝息を立てていました。
強盗か?
泥棒か?
様々な想像に怯えた私はタオルケットを頭から被り、そのまま震えていました。
nextpage
sound:8
そのうち階段の軋む音は止み、再び波音が私の耳に響いてきました。
諦めたのか?
そう思ってソッと階段の方に目をやった瞬間、私は確かに見てしまいました。
music:6
wallpaper:667
骨に直接皮を張り付けたような真っ白い顔が階段と寝室を隔てるドアの磨りガラスにピッタリとくっ付いて何やら苦しげに呻いていたのです。
微かに動く口元は何か言葉を発しているようでしたがあまりの恐怖に私は耳を塞ぎそのまま眠ってしまいました。
nextpage
sound:1
wallpaper:234
翌朝、私は父に名を呼ばれ目を覚ましました。
「○○(私の名前)!昨日何かしたか?」
半分怒号の入り混じった声に私が昨晩のことを打ち明けたその瞬間、父の顔が一気に青ざめたのです。
すっかり外も明るくなり父も一緒にいた為、
好奇心に負けた私は思わず昨晩白い顔の張り付いていたドアを開けてしまいました。
nextpage
鼻を突く濃い潮の臭い。
水浸しになった階段。
そして大量の海藻。
何もかもが予想外でした。
そして私が足元の海藻に手を伸ばした瞬間。
shake
sound:18
「やめなさい!」
父の制止も間に合わず私は海藻を掴んでしまいました。
いえ、
正確にはそれは海藻ではありませんでした。
「かみ...のけ?」
そう、
階段に撒き散らされていたのは海藻ではなく、おびただしい量の毛髪だったのです。
nextpage
music:1
それから数年間、地元の神社の神主さんの勧めで階段の最上段と最下段に盛り塩が置くようになり、二度とあの白い顔を見ることはありませんでした。
しかし私は今でもあの白い顔を忘れることができず、胸騒ぎがする夜は窓の方を見ることができません。
あれは一体何者だったのか。
なぜ我が家に現れたのか。
全ては闇の中です。
作者MAKOTO
私の幼い頃の体験談です。
海の近くに住んでいる、もしくは住む予定のひとはご用心...