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短編2
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不思議な母親

数年前の大阪、

看護師だった私は午後3時頃、夜勤入りのため病院へ向かうべく、自宅近くの駅にいました。

時間も時間だし人がまばらなホームで、ベンチに座って電車を待っていた時、

同じベンチの端っこにベビーカーを押した30代半ばくらいの女性が座りました。

ふと見るとベビーカーは二人乗りで、まだ赤ん坊と思われる乳児が乗るようなタイプ。

お母さんと思われる女性は、時々赤ちゃんが風に当たらないようブランケットを直したり、

日除けの位置を変えたりしていました。

『双子の赤ちゃんかー』と思った私は、何となく赤ちゃんの顔を見ようとそっちをチラチラ。

しかしブランケットなどに遮られ、なかなか赤ちゃんの顔が見えない。

普通、赤ちゃんを連れたお母さんたちは、何となくこちらの気配を察すると、自然と赤ちゃんを見せてくれたりして、『何カ月ですか?』などの会話も少ししたりするものですが、

お母さんは私の方が一切見ず、一向に赤ちゃんを見れません。

・・・・・・・・・・・・・・。

数分後、やっと私も気が付きました。

このベビーカーには、赤ちゃんがいないと。

でもこのお母さんは時折優しく微笑んで赤ちゃんの方を見ている。

相変わらずちょこちょこ日除けやブランケットを直し、赤ちゃんを気遣っている素振りをする。

だが、やっぱりどう見ても、そこに本物の赤ちゃんの膨らみは無い。

私はパッと目をそらし、電車がホームに入ってくるまでの数分間、ジッと反対側のホームを見ていた。

電車がホームに入ってくると、そのお母さんは立ちあがり、ベビーカーを慎重に電車に乗せました。

私も同じ車両に乗ってそっと伺うと、お母さんはやはり時折ベビーカーに向かって優しく微笑んでいました。

あの女性に一体何があったのか・・・・。

7~8年経った今でも時々思い出します。

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