実体験の話です。
もし専門家の方などいらっしゃいましたら、特に困ってるわけじゃないですがアドバイスお願いします。
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私がまだ小学校高学年あたりの時です。
ある日、そっとクローゼットを開けたら黒い人影みたいな物が見えました。
ぼんやりと煙草の煙の塊みたいな物で、自然と怖さは感じない雰囲気です。
50センチほど地面から浮いていること以外は特に変わっていると思うことはありませんでした。
私は両親が共働きで兄弟は居たのですが、歳が離れていたためすでに家を出た後です。
一人で夜遅くまで留守番する私にとってその人影はなんだか自分のそばにいてくれる力強い存在のように思えました。
今から思えば、あの黒い人影は首を吊っていたんだろうなと思います。
それからお菓子を黒い人影にあげようと思って置いてみたり、クローゼットを開けては人影を確認したりとやりたい放題してました。
子供だったんでそこに黒い人影があることに特に疑問がわかず(高学年になってそんな疑問が沸かないのもどうかと思いますが)友達の様に思っていました。
一方的に延々と話しかけることもよくあったように思います。
特にその人影は動くことはなく、言葉を発することもありません。
ただ時々、その手を首元に持って行っては体を小刻みに揺らすぐらいでした。
今思えば首を吊っていて、縄が巻き付いた首元が苦しかったのかなと申し訳なく思います。
その間にもいろいろありましたが、私が中学一年の時だったでしょうか。
なんだか、黒い人影が薄くなっていることに気づきました。
前の日、私の母は天気がいいからとクローゼットを開けっ放しにしていたのです。
もしかしてそのせいで?と私は思いました。
中学一年になっても、私はあまり黒い人影のことを疑問に思ってはいませんでした。
私の母はたぶんそう言った類の能力は無いだろうと思います。
父は妖精を見ることがあると発言するぐらいちょっとメルヘンな人でした。
だから私は両親には黒い人影のことは言いませんでした。
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「母さん、クローゼット開けっ放しにすんなよ。」
私がそう言うと母は繭を寄せて言いました。
「あのクローゼット、なんかじめじめしてるでしょ。この間もお菓子置きっぱなしにしたでしょ。」
「…ごめん」
「なんであそこにお菓子置いとくかね。臭くなっちゃうよ。」
母は呆れたようにぶつぶつと言いだしました。
私はこのまま黒い影が消えていくのは嫌だと思たので、母に頼み込みました。
「せめて、短い時間だけ開けるとかにしてくれね?」
「なんで?」
「あそこ、あれだよ…日差しに弱い物とか置いてるし。」
「日差しに弱い物って…」
母は急に青い顔になってテレビに視線を向けました。
何だろうと思ってると母はテレビを見たまま言いました。
「あれ、あんたが連れて来たんでしょ。」
「え?」
「母さん、わかるの。あれはわかる。だってあれは人間でしょ。」
「は?」
「あんたずっと天然ボケだと思ってたけど…あの黒い影、よく見てきなさい。
あれがどうして宙に浮いてるのか、まだわからないの?
っていうかあんた、いつからあれを見てたの?」
私が正直に答えると母はテレビを見たまま、怒鳴りました。
「H(義理の兄)を呼びなさい!」
母の剣幕に負けた私は電話で兄を呼び出しました。
会社に勤めていた兄がけだるそうに電話に出てきます。
その時、初めて知ったのですが兄は家族公認の見える人だったらしいんです。
昔からそういう類の時は頼りにしてたけど、家族公認だったのは初めて知りました。
「あの、ごめん、仕事中に。」
『え、別にかまわんけど。』
「ほら、この間遊びに来ただろ?」
『あのクローゼットの?』
「え?」
『違うのか?』
「そうだけど…見えてたの。」
『当たり前だのクラッカー!』
ふざけんな。
『母さんに、何もせんでも消えるって伝えて。
それとお前、あんまり同情すんな。
お前が一番危ないんだからな。』
意味深げな言葉を残して兄は電話を切りました。
母にそのままを伝えるとテレビを消して言いました。
「あんた、同情しちゃだめだよ。」
結局、母に問いただしても母が見える人かどうかは明らかになりませんでした。
っていうか見えてたなら言えばいいのにといまだに思っています。
それから数か月して、あの人影はうっすらと薄まって消えてしまいました。
最後の方は本当に薄くなってしまって悲しくなりました。
兄は「そういう定めってやつだよ。」って笑ってましたが今もあの人影がいるんじゃないかって時々、クローゼットを開けて見たりします。
でも今から思えばあれは首吊りしてた人で。
昔飼っていた猫が木に登って首輪が引っ掛かって、首を吊ったように死んだことがありました。
私は無意識にその猫の死に様をあの黒い人影に重ねていたのかもしれません。
作者ten
どうも、初めて実体験を書かせて頂きました。
実体験ですので身元の特定はご遠慮ください。
ちなみに猫の首輪ですが、現在は強く引っ張ると外れる様になってて、そういう事故を防げるようになってます。
もし木に登っちゃうアクティブな猫を飼っている方がいらっしゃったら、そういう首輪を選ぶようにしてあげてください。