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中編3
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髪の毛

 

実話ですので特定などはご遠慮ください。

困ったことは特に無いですが専門家の方など何か感じることがあればアドバイスお願いします。

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私が中学三年の頃だったと思います。

半袖だったと思うので夏休み前ぐらいでしょうか。

クラブの関係で遅くなった私は普段はあまり通らない道から帰ろうとしました。

その道は家までの近道になるのですが、かなり細い道で途中に神社があって外套がぽつんと三つほど並んでいる道でした。

民家に囲まれて密集した場所を縫う様にあるその道は舗装こそしてありましたが、人と自転車がすれ違うのがやっとなほどの細さです。

あまり通りたくないのはその道の途中が塀で囲まれていてなんだか息苦しく感じるからでした。

友達と別れた私はさっさとその道を通ってしまいたくて、自転車を漕ぎました。

漕いでいると神社のすぐ脇にある電柱に人影が見えました。

その人影は夏なのに真っ黒なコートを着ているような風貌で私はすぐに「不審者かもしれん」と警戒しました。

その頃、夕方になると不審者が出るとかで女子だけでなく男子もクラブで遅くなったときなどは警戒するように言われていました。

あまりじろじろ見ると襲ってくるかもしれんと思った私は見ないようにしてすっと横を通り抜けました。

私がその不審者の横を通った後、不思議な匂いが鼻につきました。

それはちょうど、ドライヤーをかけすぎて髪の毛が焦げるあの匂いに似ています。

「…」

私は思わず振り向きました。

その人は黒いコートを着ているわけではなく、全身が髪の毛で覆われていたのです。

今迄、そういう類の者は黒い靄のような煙のような物しか見たことのなかった私は思わず叫びそうになりました。

するとそれはぐるりと髪の毛で覆われた頭を動かし、髪の毛の奥の目で私を見たのです。

私はパニックになり、無我夢中で自転車を漕ぎました。

しかし、後ろからペタンペタンと裸足で走るような足音がして私はさらに混乱しました。

どうしよう。

頭は真っ白で指先や足ががくがく震えたのを覚えています。

なんとか大通りに出た私は少し安心して速度を緩めました。

しかしすぐに事の重大さに気づきました。

大通りには普通なら数台の車が走っているのが見えるはずなのですが、今は一台もありませんでした。

真っ暗になったとはいえ、そこまで遅い時間ではないはずです。

私の額に一気に汗が溢れました。

なんだか喉のあたりが熱く感じて、私は思わず急ブレーキをかけて自転車を止めました。

気持ちが悪くて吐きそうになっていると、後ろから声が聞こえました。

「おい」

それは無愛想な響きを含んだ声で、私はふと振り返りました。

そこには繭を寄せて怪訝な顔のA先輩がいました。

A先輩は近隣のアパートに住んでいるほぼ一人暮らし状態の高校生です。

中学は私と同じで、時々助けてもらっていました。

「何してる?」

先輩の手には犬のリードが握られ、犬がしきりに私の後ろ側に向かって吠えています。

犬はポカリと名付けらていました。

「ポカリが吠えてる。お前、何かに追いかけられたのか。」

私が事情を話すと先輩は「はぁ」と疲れたようにため息をつき、言いました。

「時々出るから気をつけろ。」

気が付けば大通りには車が走っており、歩行者も数人居る状態でした。

A先輩は「あれは不審者だ」とそれ以上の説明はしてくれません。

現在でもその正体はわからないままです。

ただA先輩は「時々、神社の柱や壁をひっかいている。」と言って笑っていました。

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