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初めまして、雅と申します。
文章が読みにくいかもしれませんが、ご了承下さい。
私がまだ16歳の時にバイクに興味を持ち、ガソリンスタンドでバイトを始め17歳で400ccのバイクを購入。ずっとメンテナンスをし、楽しく乗って過ごしていました。 ・・・二年前のあの日まで・・・。
仕事もそこそこ、休日にはバイクの生活が続き、私が23歳になった頃のお話。
たまの休日に当ても無くフラフラ走っていると、とある車の中古車販売店(A店とする)の中古車の中に一台、ヘッドライトが点灯している車があった。
周りに人は居ないのに、ライトだけが点いてる。
「何だろ?バッテリー上がっちゃうよ・・」
と思ったが、その先の本屋に行きたくなったのでスルーした。
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帰り道、やっぱりA店のあの車のライトが点いてる。
親切心からか、「まだあの車ライト点いてるよ・・・よし、A店の人に教えてやろう」と、A店の駐車場にバイクを停め、店に入った。
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中古車が50台近く有るのに、店内には従業員が1人だけ。男性で60歳位のおじさんが座っている。
「こんにちは」と一声かけると、そのおじさんは「いらっしゃい」と小さく言った。
・・・A店は車屋だ。バイクウェアにブーツ着用、ヘルメットを片手に店に入る私を、この人はどう思っただろう。
(・・・気まずい)そう思った私は要件だけ済ませて帰るため、「すいません、あの車のライトがずっとONになってますよ」と言うと、男性はため息をつき「あぁ、またあいつか」と言った。
「あいつ?」「まぁ来れば解るさ」と言い、車の方へ歩き始めた。
前を通った時は気付かなかったが、ライトが点いてる車の横の二台も同じ車種で、その二台は「109万円」と値札が付いていた。
ライトが点いている車は「29万円」の値札が。(おかしい・・・同じ車でこうも値段が違うとは・・・まさか事故車か?)と思っていると、おじさんがライトの点いている車の運転席のドアを開けた。
「さぁ、座ってみなよ」
・・・え?いやいや車を見にきたんじゃなくて、ライトをね?あ、消せば良いのか、私が。
ハンドルの横にあるライトスイッチをOFFに・・・あれ?OFFになってる?でもライトは光りっぱなし・・・壊れてんの?
「いいから、座ってみなよ」とちょっと強めに言われたので、「じゃあ」と言って座ってみる。
(あ、これマニュアル車か、イスも変わってるし、いろいろイジってあるんだな、内装もキレイで・・・・・・・・・・ん?)
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「どうだい?この車、イイだろ?」と言うおじさんに、「はぁ・・・良いんですけど・・・助手席にいるこの女の子は誰ですか・・・?」
車の状態は良いのかもしれない、値段も良いのかもしれない、値段の理由が解ったかもしれない・・・。
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女の子の容姿は中学生くらい、長い黒髪、白のワンピースで肌は白く華奢、顔は可愛く、二重のパッチリした目。
ここまでは大丈夫、問題なのは、足がちょっと透けてる事だ。
「あの・・・この子は?」という疑問に、「ライトの正体はこいつの仕業よ」という答えが返ってきた。
(いやいやいや!そうじゃなくて!この子は幽霊ってやつですか!?)などと考えていると、左手にヒンヤリ何かが触れた。
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恐る恐る振り返ると、女の子の顔が目の前にあり「うわぁ!」と私の変な声が車内に響いた。
女の子の冷たい手が、私の手に重なっている。(ヤバい!取り憑かれる!)と思い手を払い除けようとすると、『待って』と女の子は困ったように言った。
『あなたを待っていたの。あなたがここを通るたびに、この車のクラクションを鳴らしたり、ライトを照らしたりしたけど、ようやく気付いてくれたのね』
状況が理解出来ないが、どうやら私を待っていた・・・?でもどうして、私を待つ理由って何?
聞きたい事は山ほどあるが、泣きそうな彼女を見た私はひとつだけ、「何故、私なんだ?」と聞くと、『あなたのバイクがいつも幸せそうだったから。ピカピカに磨いてもらってキラキラしてて、羨ましかった。その手入れをしてるあなたと、一度お話がしたかったのよ』と言う。
しかし彼女は『あ〜ぁ、いろいろお話しようと思ってたのに、久しぶりに生きてる人の手に触れたら、話の中身がどこかに行っちゃった』
そう言えば、私の左手を彼女は握っていて、感触は私の方にも伝わっている・・・が、これは・・・震えているのか?
『今日はね、とっても素敵な日。あなたが私に気付いてくれた、話してくれた。本当に・・・ありがとう・・・』と言った彼女は、少し悲しげな表情をした。
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理由なら解る。私がここから居なくなればまた、彼女は1人だ。
だが、その表情を見た私の心は既に決まっていた。
「あ、そう言えば名前聞いてなかった!私は雅、君は?」
『・・・マヤ、でも幽霊だから、名前なんて・・・』
「・・・マヤ、行こう」
『・・・え?』
「・・一緒に、行こう!」
後悔はなかった、彼女をこのままここに縛れば、私は一生後悔する事くらい解っていた。
『でも・・・私なんかと一緒じゃ雅さんに迷惑だし、それに・・・』と、また泣きそうになるマヤ。
「遠慮しなくていい。それとも、行きたくないのか?」
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『・・・たい』
「聞こえないなぁ」
『行きたい!』
「よし、決まり!さっきのおじさんに言ってくる!」
車を離れ、店に入りおじさんに
「あの車、売ってほしいんですが!」と言うと、「そう言ってくれると思ったさ、お金は納車の時でいい、急遽準備するよ」と言った後、小さく「彼女を頼んだよ」と言ったみたいだったが、私は彼女の元へ急いだ。
車に戻ると、マヤが外に立っていた。
「マヤ、これからよろしく!」と言うと、マヤは私に抱きつき、『グスッ・・こちらこそ・・!』と言った。
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数日後「納車の日」
A店に朝イチで向かう。と言っても、バイクと車を両方維持するのが難しいため、あんなに大切だったバイクを手放した。
貯金とバイクを売ったお金であの車を買う。
電車とタクシーでA店に着くと、おじさんが待っていた。
「納車おめでとう、これが車のキーと必要書類。くれぐれも安全運転で頼むよ」と、おじさんからキーと書類をもらい、車に積む。
そして代金を支払った。(結局29万円に、保険やら何やらでもっと高かったが・・・)
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手続きを全て終えた私は、運転席に乗り込んだ。
助手席にはマヤが座っていた。
「さぁ、行こうか」とマヤに言うと、マヤは嬉しそうに『うん!』と言って微笑んだ。
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車を発進させ、「どこに行きたい?」と聞くと、『あなたとなら、どこまでも』と言うので、これまでにバイクで行った景色の綺麗な所を、彼女に少しずつ見せてあげるつもりでいる。
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これから先、ずっとこの車で、マヤと一緒に。
作者雅-2