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どうも、雅です。
二度目の投稿になります。
ちなみにこのお話は前作の続きです、まだ前作を読んでない方は「車に憑いてる素敵なあなた」を読んでくださいね★
(読んでなくても一応解るようにしてあります)
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中古車販売店「A店」で出会った、車に憑いてる少女「マヤ」
彼女に自由を与えるため、バイクを売り車を買った。
無事に納車され、彼女とドライブに行った。
目を輝かせて景色を追うマヤ・・・可愛かったなぁ・・・。
一日とは早いもので、家に帰らなければならない時間になった。
・・・考えないようにしていたが、親元に住んでる私に、当然家には父親・母親がいて、四つ下の妹がいる。
ちなみに私は長男だ(一人称が私なのは、接客業ゆえだ)
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勢いで車を買ったまではいい、問題は・・・家族にマヤが視えるかどうかだ。
視えなければそれに越した事はないが、視えている場合。私は23歳、マヤは亡くなったのが14歳のため、容姿も14歳。
・・・つまり、マヤに触れていなくても法に触れてるんだよ・・・主に見た目が。
『どうしたの?』と心配そうに覗き込むマヤ。
「あぁ・・・ゴメン、家族にマヤの事が視えていたらどうしようかと思ってさ・・・」
『そうだよね・・・迷惑・・・だよね』と悲しそうな顔をするマヤ。
いかんいかん!こんな辛そうな表情にさせるために連れて来たんじゃない!
しかしこのまま帰らない訳には・・・。
『あ、でも』と、何かを思いついたマヤ。
『私ね、視える人と視えない人を見抜く事が出来るの。だから私、雅さんを待ってたのよ』と。
言われてみればそうだ、『視える人』でなければ、初めてマヤに会ったときでも「車のライトが壊れてただけだった」で終わっている。
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いろいろ考えた結果、私とマヤで家に入り、多分リビングに揃っているであろう家族の所には、私1人で入る。
そして、父、母、妹に1人ずつ話し掛ける際に、リビングのドア越しに隠れるマヤがチェックし、『セーフ』か『アウト』のポーズをこっそり取る、それで判断する。
『あ、それからお願いが2つ』
「え、何?」
『私が取り憑いているのはあの車。だいたい半径1キロ位なら離れられる、でもそれ以上は無理だから覚えておいて。
それから、視えるかどうかをチェックする時に、だいたい1人につき30秒から1分くらい掛かるわ』
(なるほど、要するに俺が時間稼ぎが・・・)
「解った」
『じゃあ、行こうか』
車を走らせ家に着く。時刻は21時30分。
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「ただいま〜」
母「おかえり、どんな車買ったの?」
父「遅いぞ、暴走族に間違われたくなかったら、早く帰りなさい」
妹「お兄ちゃんおかえり〜、車買うなんて思い切ったね!」
リビングには家族が揃っている。
話し掛ける順番は、父、母、妹だ。
リビングに入り、入ってきた入口が見えるようにソファーに座る。
マヤがドア越しに『スタンバイOK』の合図を送る。
作戦開始だ。
まずは父だ、半ば説教が始まりだしたが、今は我慢だ。
(マヤの様子は・・・)
父を凝視するマヤ、そしてふぅ、とため息をつき『セーフ』のサイン。
(まずは一安心、やっぱり30秒から40秒は掛かるか・・・)
父の説教は続いているが、「そう言えば母さん!」と言って切り替える。
少し喋ったあと、マヤを見る。
(どうだ?)
また、ふぅとため息をつき『セーフ』のサイン。
(よし!良かった、両親には視えてない!このまま行けばマヤもこの家に住めるな・・・)
と、妹に話し掛けようとしたその時、
父「雅、今日は父さんと母さんの結婚記念日だ。2人で外食してくるから、留守を頼んだぞ」
(しまった・・・!忘れてた・・・っていうかお父様、空気読んで!)
父と母はそそくさと出掛けて行った。
あとは妹だけ、こうしている間にも、マヤはサインを・・・え?・・・『アウト』のサイン・・・?
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(視えるのか・・妹には・・私と同じモノが・・・)
私は少し考えたが、妹ならきっと理解してくれると信じ、「なぁ・・・トモエ(妹の名)、大事な話があるから部屋に来てくれないか?」
「大事?お金なら無いよ?」
「いいから」と妹を2階にある部屋に連れて行き、全てを話すことにした。
マヤにはジェスチャーで「付いて来い」と送ったら『OK』と返ってきた。
そして私の部屋に、私と妹。
ドアの影にはマヤがいる。
私は深呼吸をし、妹に「実はな、兄ちゃんには幽霊が視えるんだよ」
言ってしまった、後には退けない。
妹「え?幽霊?あはは引くわ〜!」
取り合ってもらえないのは解ってる。
(マヤ、こっちに来い)と合図を出すと、困ったように頷き、ゆっくり入ろうとする。
その瞬間、プツッと部屋の電気が消えた。
妹「停電?はぁ〜あ、ブレーカーかなぁ?」
月明かりに照らされた部屋は明るく、私の位置からマヤの顔が見えるくらいだった。
(やりすぎだろ・・・!)
という私の表情に気付いたマヤは、
(わ・た・し・じゃ・な・い!!)と入口付近で腕をバツにして表現している。
そんなやり取りの中、庭の植木が「ガサガサ」と音を立てている。
風はないハズ、しかし「ガサガサ」「ガサガサガサ」と音は大きくなっている。
妹「ネコかなぁ、足音するねぇ?」
「・・・」
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違う・・・ネコならもっと軽い音だ。
この音は、人が草を掻き分ける時の音に近い。
マヤの耳にも届いたのか、スッと部屋に入る。
妹「お兄ちゃん、この人誰・・・ムグッ!」
マヤが妹の口を塞ぐ。
『シッ、静かに』
音がする方をマヤはジッと見つめている。
『・・・噛鬼(ゴウキ)』マヤは小さく呟いた。
「外に何が視えるんだ?噛鬼って・・・?」
チラッと外を見た私には何も視えない。
『そうね・・・人の手足を噛み千切り、弄んでから喰らう悪趣味な化け物よ』
見た目がどんな物かも解らない私達は、ただ怯えるのみだが・・・そうだ、ケータイで助けを・・・いつの間にか圏外だ・・・。
「ヴォアアアアアアアアァ!!」という叫び声とも断末魔とも取れる咆哮が響く。
私とマヤ、そして妹にも聴こえたようだ。
妹「ヤダ・・・ヤダヤダヤダ!何?この声?
怖いよぉ・・・」怯える妹。
『マズい、こっちに向かってきてる・・・・・仕方・・・ないか・・・』
マヤは少し考え、私に言った。
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『雅さん、今から私の〔視覚の力〕を少しだけお貸しするわ。この力を使えば、あなたも噛鬼の姿が視えるはず。噛鬼の姿が確認出来たら、見つからないように逃げる、妹さんは視えない方がいい、だから力を貸すのはあなただけ。
妹さんをしっかり誘導してね』
マヤは冷静だった。
『雅さん、少ししゃがんで目を閉じて』
言われた通りにすると、マヤは私の両方の瞼の上に、両手の掌を軽く当てた。
最初はマヤの手の冷たさに身震いしたが、どんどん熱を持っていく、いや、マヤの掌の熱さじゃない・・・目の奥が・・熱い・・・!
マヤが手を私から離した。
『ゆっくり、目を開いてみて』という声に従おうとするが開かない。
『ゆっくり、ゆっくりよ』
少しずつ開いた・・・マヤの顔が見える。
『大丈夫・・・?』
「あぁ・・・多分な」
と言うと、マヤは窓の外、庭の方を指差し、『アレが視える?』
指差す方を見ると、「あぁ・・・居るな・・・」
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人型で、肌色の全身に体毛は無く、両腕は肘から先が無い。
目と口は縫ってあるようにギザギザだ。
・・・人のようにも見えるが、人の腹にあたる部分に、丸く、牙の付いた大きな口がある。
「近付いて来てるな・・・あの化け物」
私は化け物の姿を目の当たりにしたが、距離が離れているし、妹も居るので冷静を装った。
『近付いて来てるけど、音と気配を頼りに動いてるから、今は動きが遅い。でも家屋に侵入されたら・・・全滅よ、私達』
妹は蹲り、歯をガチガチさせて震えている・・・
(早くなんとかしないと、侵入されて全滅か、両親が帰ってきて巻き添いになるかだ・・・。考えろ・・・どうすれば助かる?)
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『噛鬼には弱点が二つ』と、急にマヤが切り出した。
「弱点・・・?」
『そう、1つ目は〔音〕、目と口は塞がってるけど、耳は塞がれていない。音と気配を頼りに近付いて捕食するのが噛鬼の特徴なの。アレの耳の限界を超える音を出せれば、動きを封じる事ができる』
『2つ目、あのお腹にある口、ああ見えて本体は表面が硬い・・・でも捕食に使う腹部の口だけは、人間の口の中と同じで柔らかくて弱い』
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(つまり大きな音を出しつつ、腹を狙えば倒せるのか・・・ヤツの側に行って・・・腹を何かで刺す・・・)
「ヴォアアアア!グルルル・・・」
(いやいや無理!せめてこっちが速く移動出来れば・・・速く・・・あ。)
「マヤ、考えがある、ガレージに移動するぞ」
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裏口から繋がっているガレージに移動する。
(妹は二階の部屋のクローゼットに隠した)
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屋根付き、側面と後方に壁、正面には電動シャッター。
そして、そこには父の宝物「ハーレーダビットソン」
「コイツでヤツを威嚇しつつ、この鉄パイプでヤツの腹めがけて貫く、どうだ?この作戦」
『悪くないと思うけど・・・私に刺せるかな・・・?』
「大丈夫、ちゃんと考えてあるって」
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「グルルルル・・・」
外には、あと家まで数歩の噛鬼がいる。
ガチャン、ウィーンとガレージのシャッターが徐々に開いていく。
ズドゥウウウ!ズドドドドドドン!!とハーレーのエンジン音が響く。
「おぉ、近くで見るとグロいな・・・」
鉄パイプを構え、対峙する私。
『あの・・・ちょっと・・・これ』
ハーレーに跨るマヤ。
「何が不満なんだよ?結構似合ってるよ」
ハーレーをまじまじと見つめ、
『これ・・・すごく高価なんじゃ・・・』
と、心配そうに言う。
「まぁまぁ、命には変えられないよ。さっきの話では、バイクに乗った事あるんだろう?」鉄パイプ片手に問いかける私。
『モトクロス(150cc)だったらの話だったのに・・・でも動かす位なら』と、クラッチを切り、ギアを入れる姿が様になっている。
「・・・来るぞ」
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「ヴォォォ・・・ヴォアアアアアア!!」
一直線に走ってくる噛鬼。
「スタートだ、マヤ!」
走り出すハーレー、直線が短いが噛鬼を躱しつつ、クラッチを切り、ヤツの隣で一気にアクセルを回す。
「ズドォドドドドドン!!!」
地鳴りがしながら轟音が響く、怯んだ噛鬼の目の前に、鉄パイプを構えた私がいる。
「ナイスアシスト、マヤ!」
ーーーーードスッ!
鈍い音がした、貫通はしなかったが、ヤツの腹部の口が血飛沫を上げている。
「ヴォアアアアアア!」と叫ぶ噛鬼は徐々に灰に変わっていき、燃え尽きたように消えた。
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「終った・・・のか?」鉄パイプを捨て、マヤに問いかける。
するとマヤは『すごい!倒しちゃった!雅さん、すごいよ!』と歓喜している。
「あ、そうだトモエがまだクローゼットの中だ!」
二階まで行き、クローゼットを開けると・・・あれ?寝てるよ・・・幸せそうに・・・。
(・・・鋼の神経だなぁ)
トモエをベッドに運び、ハーレーや鉄パイプを片付けた直後、眠気に襲われ床に就く。
私が眠りに付きそうな時に、両親が帰ってきたみたいだった。
(みんな無事で良かったな・・・)
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ー翌日ー
私は父の、超ロング説教を受けていた。
ハーレーはちゃんと片付けておいたが、ハーレーの爆音が隣町にまで響いたらしく、朝から苦情電話の嵐。
(結果的に、私達の命、もっと言えば両親の命も救った形になるんだがなぁ・・・)
正座をし、説教を受けながら考えている。
『でも良かったじゃない、死傷者ゼロだったんだし』と、私の隣で同じく正座して説教を聞くマヤ。
「別にマヤまで説教聞く必要ないんだぞ?」と、父にバレないようにつぶやく。
『雅さんのお父さんのバイクに乗ったのは私だから、一緒に罰を受けるわ』
と言い、長い説教を共に過ごした。
解らない事がたくさんある、あの化け物は何なのか、マヤは一体何者なのか。
しかし今、そんな事はどうだっていい。
私は今、生きてる、今はそれだけで充分だ。
『ねぇ雅さん、これからもずっと一緒だよね?』
「あぁ、ずっと一緒だ」
これから先、何があろうと、彼女と一緒にいると心の中で誓った。
作者雅-2