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中編4
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怪奇遭遇物語【色付き】

怪奇遭遇物語『色当て』

music:1

僕はカイキ。

いや、『怪奇』ではない。

漢字は『凱紀』だ。そしてありがちだが、小学校、中学校とこの名前のせいでいじめられてきた。よくある、触ると祟りがおこる、や呪われる、などと言った類いの悪口だ。

しかし、僕はそいつらにあまり強くは反抗しなかった。勿論、エスカレートしないようにある程度は抵抗したが。

理由は、奇しくもそいつらの言っていることは半分真実であったからだ。

なぜかは自分でもわからないが、僕はよく『怪奇現象』によく遭遇する。

それがあいつらの言う呪いや、祟りと言えば嘘ではない。

なので僕はあまり強くは反抗しなかった。

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小さい頃から怪奇現象に遭遇していた僕は、ある程度の怪奇現象には慣れてしまった。

例えばーそう、朝目覚めると、目の前に女の人の顔がある。

無表情で生気を感じない。普通の人なら驚くだろうが、僕はその顔とにらめっこをする。

顔の体操になるし、眠気も覚める。

今はもはや目覚まし時計の変わりにさえなっている。

しかし、そんなちっぽけな怪奇現象とは比較にならないほど、奇怪で怪奇な現象に時々遭遇する。

今回は、そのうちの一つ。

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その日、高校生の僕は夏休みが始まり、ろくに宿題もせず友達と遊んでいた。

友達は、簡単にAとBとしておこう。

ーいや、Aのほうは『リョータ』としておこう。こいつは、生まれた病院が一緒で、生まれてからずっと遊んでいた親友だ。

リョータとBと僕は、その日夜遅くまでスポーツをしていた。

夜まではゲームをし、夜になったら公園でサッカーやバスケをする。

なぜ夜かというと、夜の方が人がおらず広く使えるからだ。勿論、人の家が近くにない遠くの公園だ。

そしてたまたま、その日はリョータの家で泊まる予定だったからだ。

一通り遊び終わった僕たちは、リョータの家に帰ろうとしていた。

すると、家路に着こうと自転車に跨がった時、まるで図ったかのようにBが話を始めた。

music:2

「お前ら、『色付き』って知ってるか?」

僕とリョータは顔を合わせ、首を傾げた。

「『色付き』ってのは、最近ネットで見つけた都市伝説なんだよ!」

また始まった。僕とリョータはアイコンタクトでお互いにそう思っていることを理解した。

Bは、都市伝説やオカルト話が大好きなのだ。よくネットや雑誌で話を仕入れてきては、さも自分が体験したかのように話し出す。

「夜遅くに家に帰ろうとすると、道の途中に首を垂れた人が立っててな。

しかもその人の着てる服、ボロボロの雑巾のようなんだが、『まばたき』する度に服の色が変わるんだってよ!

しかも、しかもよ、その人が言うんだとさ、」

Bとは小学校から一緒に遊んでいる。そして、こいつは本当に人を惹きつける話し方をする。

それは歳を重ねる毎に磨きがかかっているようだ。この時は、声の低さや音を調整して、強調したい部分を聞き手に聞かせている。なので、いやでも話の重要な部分が聞こえる。

そして気付くと、その話に聞き入ってしまうのだ。

「『私の服は何色に見えるゥ?』と。当然、いま自分が見えてる色を答える。するとな、次は、『じゃあァ…あなたの目の色はァ?』と。で、答える。すると、

『では世界の色はァァァ?』と聞かれる。意味わからんよな!まあ、ふつーわからないわな。で、わからないと答えるとな…」

ごくり、と唾を飲む。

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「なんと、目が見えなくなるんだと!どうだ!怖いだろ!」

僕とリョータはため息をつく。

なんだ、ありがちな話じゃないか。

僕たちはようやく自転車を漕ぎ出した。

しばらく漕ぐと、Bが突然震えた声で話しかけてきた。

「な、なあ、あいつ…」

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music:3

Bが指差す方向には、先程のBが話していた、『色付き』そっくりの格好をした、ボロボロの服を着、首を垂れた人が道路の端に立っていた。

「まさか本物…」

「ばーか、んなわけないだろ。浮浪者だろふつーの。」

リョータが馬鹿にしたようにその人の前を通り過ぎようとする。

すると

shake

ガシッ!

と、リョータは腕を掴まれた。

「うわっ!」

リョータは驚いた拍子にバランスを崩し、自転車ごと倒れこんだ。

「大丈夫か!」

僕たちはすかさず駆け寄る。路肩に自転車を止めて、リョータを抱き起こす。

「なにするんですか!」

リョータがその人に叫ぶ。

その人は、髪が肩までぼうぼうに伸び切っているため、顔を見ることができない。が。

music:6

「おまんら、#@&?!#*%?」

しわがれた声でそう言った。

後半は、ぼそぼそと言っていたのでなにかは聞き取れなかったが。なにかを俺たちに聞いているようだった。

「ひ、ひいい」

Bはリョータを抱き起こすと、自分の自転車に乗って逃走してしまった。

リョータは、怪訝な顔をしながら、僕に近付いた。

「気の違った奴だとやばい。カイキ、はやく逃げるぞ。」

僕とリョータは自転車に跨がり、漕ぎ出した。

その人は、僕たちを引き止めようとはしなかった。

music:1

ある程度離れたところで、僕は後ろを振り返った。

その人はやはり、道路の端に立ち、首を垂れていた。

そういえばー

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数多の老人の視力をわざと落とし、それを回復する変わりに法外な医療費を騙し取っていた医者がここで交通事故を起こしていたなー

幸い命は助かったが、視力をなくしてしまったとか。

リョータが僕を呼んでいる。

わかった、と返事をするため、正面を向く。そして、もう一度振り返ると、もうそこにその人の姿はなかった。

その人が最後なんと言っていたのか。僕は非常に気になった。

本当にただの気の違った人だったのか。それともー。

リョータの後を追いながら、ふと思い出す。

そういえばBのやつ。

一目散に逃げるとは。

なんとも抜け目がない。

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