ハート
私が5歳の時、当時10歳の兄は、私の目の前で、車にひかれて死んだ。両親は兄の心臓を病気の子供のために提供することにした。
レシピエントは当時11歳の少年だということだけを知らされた。
移植のこと自体、私が知らされたのは16歳になったときだった。5歳の私には兄の葬儀の日程が遅いことなどわからなかった。
親は言った。兄は別の人の身体の中で生き続けるとかなんとか。
背筋が凍った。
さて時は流れ、神は信じられない運命を用意する。
私が23歳の時、父親は通り魔に殺された。
すぐに犯人は捕まった。
裁判で、30歳の被告人は、18年前に国内で心臓移植の手術を受けた事が判明する。その手術でのドナーの年齢も明かされた。
そして、あろうことか、被告人は自分の心臓に悪魔が住み着いているとの妄想にとりつかれ、悪魔に脅迫されたと思い込み犯行を、という心神耗弱の主張をしてきた。
間違いない。
明日の公判期日に、
私は包丁を持っていく。
今度こそ、殺す。
作者SUU
解説はしない方がいいでしょう。