高校を卒業し就職のため東京に出てきた頃の話です。
当時、心配性の親が都会で一人暮らしなんてもっての他!!と煩かったので仕方なく友人とシェアリングで住むことにしました。その友人(以後M)は元々一人暮らしをしており、私が転がり込む形で二人暮らしが始まりました。
Mは私より5歳ほど年上で頼りがいもあり、仕事や慣れない電車通勤のアドバイスをしてくれました。そしてMの友人達も妹のように私を可愛がってくれていました。
そんな生活が半年位続いた頃、名古屋在住のMの友人のTさんが遊びにやって来ました。
その夜は3人で飲み会になり最初は他愛もない話で盛り上がっていたのですが、酒の量も進み夜も更けていつの間にか怖い話でも…という流れになっていきました。
最初はよくある聞いた話なんだけど~というような内容だったのですが、Tさんがニヤニヤ笑いながらMとヒソヒソ何やら相談を始めたのです。話に入れずにいた私は仕方なくビールをちびちびと飲むしかありませんでした。
2人の様子を見ているとMはかなり深刻な顔で私をチラチラと見て、Tさんが説得するような感じです。もしかして私が何かしてシェアリングが嫌になったんじゃないかと不安が胸をよぎります。
時間がやけに長く感じて酔いも何だか覚めていくようでした。不意にMが私の方に向き直り姿勢を正して真剣な顔で口を開きました。
M「さきょた…今まで黙ってた事があるんだ。驚かないで聞いて。信じてもらえないと思うし、理解出来ないと思う。」
隣ではTさんが相変わらずニヤニヤ笑いながら頷いています。
M「この部屋…出るんだ…」
私「ちょ!!Σ(゜Д゜) 引っ越すの?!」
M「は?なにそれ!?」
私「シェアリング嫌になった?!(つд;*)」
M「いや!!だから!!」
どうやら会話が噛み合ってない模様…。気まずい空気が会話を押し止めていました。
T「あーもう!!はっきり言わないからダメなんだよ~。M、さきょた。私が説明するから大人しく飲みながら聞け(笑)」
そう言ってTさんが新しいビールを手渡して来ました。Tさんも自分の分を開けると一口飲んで話始めました。
T「この部屋には男の幽霊が出る。とはいっても悪さはしないよ。たまにキッチンを歩いたり、部屋を覗き込んだりする。後は天井の隅に上半身だけで佇んでる時もある。ラップ音もよくある。聞いた事ないか?パシ♪ピシッ♪って」
M「さきょた…ゴメン。そういう訳なんだ…。怖がられると思って言えなかった。見えてない様子だったから黙っててもばれないかなって…本当にごめん!!」
T「でも最近見ないってMが言うから私も確認したんだよね~。今は…いないね~。いつも気配はしてたのに…それすりゃないよ~(笑)家出か!?(笑)」
M「あ、やっぱりいない?おかしいなぁ…でも今だけかも知れないし…」
2人の話を聞いてちょっと思い当たることがあったのですが…それは寝ぼけと夢だと思ってたんですよね。で、居なくなったのにも心当たりがありまして…。
実はTさんが遊びに来る1ヶ月ほど前。Mが彼氏宅にお泊まりと言うことで私一人で夜を過ごしたわけですよ。以前からピシッパシッと家鳴りがしてたので、今日は特に家鳴りが煩いな~とか思いつつ、一人でつまらないし早々に寝ることにしたんです。
部屋の間取りは1LDKなのでキッチンと平行に布団をひく形になります。布団に潜り込んでうとうとしかけた頃、キッチンから覗き込む男の姿が見えたのですが眠さには勝てずそのままスルー(笑)
しばらく爆睡していたと思うのですが、顔に何やら圧迫感があり半覚醒状態で目を覚ましました。目を開けるとわずか10㎝位の距離で覗き込む女の顔がありました。しかも逆立ちで(笑)
当然、寝ぼけてる私。脳内でおかしな変換をしたようです。覗き込む男の姿=M彼氏、逆立ち覗き込み女=M。なので声かけちゃったんですよね…。
私「いつまで見てるの~?キッチンに彼氏いたよ?寂しそうだったよ?早く行ってあげなよ~。デートするんでしょ~(笑)楽しみだね~中華街で美味しいの食べて氷川丸でジャズ聴くんでしょ~ロマンチック~♪」
みたいな話を延々と逆立ち覗き込み女にしたんですよね…。まぁいつの間にか私も寝ちゃってた訳ですが、朝起きてMは彼氏宅お泊まりデートだったと思いだし、夕べのあれは願望が見せた夢だと思ってた訳です。
ただ、それから家鳴りがしなくなってMが時々、キョロキョロ部屋を見回す事が多くなったな~と。その話をMとTさんにしたところ
M「家の中で逆立ちするっておかしいでしょ!?(笑)しかも真夜中に寝てるさきょた覗き込む為に逆立ちって…ギャハハハハ」
T「さきょた…その女ってお前に憑いて来てたんじゃ?んでこの部屋にいた男とくっついて……デートに行ったと…ギャハハハハ!!」
私「いや…だって…夢か寝ぼけかと…普通は思うでしょ!?Σ(゜Д゜)」
M&T「思わないw」
しばらくこの話は酒の肴になりました(笑)他の体験もまだ色々あるので機会があれば書きたいと思います。
作者さきょた
怖くなくてごめんなさいorz