wallpaper:23
music:4
《サウンドノベルモードでの閲覧もお勧めします》
これは、私が中学生の時に体験した実話です。
中学一年生の冬の深夜。
私はすでに当日にとせまった期末試験にむけて、一夜漬けを決行中だった。
nextpage
私は一夜漬けをしている時、凄まじい集中力を発揮する。
一分一秒の時間も惜しく、ただひたすらに勉強をする。
この集中力が普段からでれば苦労しないのだが、なぜか一夜漬けの時にしかでないから不思議だ。
nextpage
あのことが起きたのは、たしか午前三時を少し過ぎた頃だったと思う。
私は家の中で一番暖かい居間で勉強していた。
ちなみに居間の隣では襖でしきられた部屋に父親が寝ていた。
nextpage
sound:30
教科書とノートを交互に見て、テストに出そうな場所を必死に覚える。
木で作られた壁掛け時計の振り子が左右ゆれる際にはっせられる、ギッギッとゆうわずかな音だけが静かな部屋に響いていた。
nextpage
music:3
と、その時
……らぁ…ら~らら…
せわしなくシャープペンを動かしていた手をとめる。
どこからか人の声が聞こえた気がした。
それも女の人の声。
その声に意識を集中させる。
かすかにだがたしかに聞こえる。
なんの歌かはわからないが歌っている。
聞いたことのない歌のはずなのに、なぜだかその旋律は子守唄のように感じた。
nextpage
私は寒さの厳しい地域に住んでおり、家の窓はすべて二重だった。
もちろん冬真っ只中のその時は全ての窓を締め切っていた。
ゆえに外からの声の可能性は考えにくい。
そもそも真冬の深夜に外にでて歌うという行動じたいが意味不明だ。
だがあいかわらず歌声は聞こえる。
nextpage
「……………」
しばし考えた私がだしたこたえは、空耳だった。
前日学校から帰ってからご飯と風呂以外はずっと勉強をしている。
疲れもかなりたまってるし、そのせいできっと空耳が聞こえるんだ。
空耳だからほっとけばそのうち聞こえなくなる。
そう結論づけ私は再び勉強にとりかかった。
nextpage
ギッギッ
…ら~るぅ…ら…
ギッギッ
ら~らる…ら…
ギッギッ
ら~ら…るら~
ギッギッ
ら~らる~る~
nextpage
sound:21
私は再度体の動きをとめた。
最初に声が聞こえてから数分はたったのにいっこうに空耳は終わらない。
それどころか、あきらかに少しずつ歌声が大きくなっている。
こんなに長い空耳なんてあるのか。
もう耳をすまさなくてもはっきり聞こえる。
しかもどちらかとゆうと右耳のほうが大きく。
music:3
wallpaper:532
まるで、耳元で歌われているかのように……
らーらるぅらーらぁー
一際歌声が大きくなった次の瞬間、私は立ち上がるとダッシュで父親の部屋の襖を開けた。
nextpage
wallpaper:157
ガラッ
目の前には規則的な寝息をたてスヤスヤと眠る父親の姿。
nextpage
wallpaper:52
ギッギッ
ギッギッ
ギッギッ
聞こえるのは振り子時計のゆれる音だけ。
さっきまで聞こえていた歌声は嘘みたいになくなっていた。
それでも一度芽生えた恐怖心は消えず、すぐさま父親を起こしにかかる。
nextpage
music:1
wallpaper:49
「お父さんお父さん」
「うわっ、な、なんだよ」
起こした父親に私は今さっき自分が体験した事を必死に話した。
しかし父親から返ってきたのは
「気のせいだって」
の一言だった。
そして
「まったく今日も仕事だってゆうのに……」
ぶつくさ言いながら再び眠りにつく父親。
nextpage
その頃には私もだいぶ冷静さを取り戻していたが、もう一度勉強する気にはどうしてもなれず、勉強道具を片付けると二階の自分の部屋に行き寝ることにした。
けれど暗闇は怖かったので居間も階段も自分の部屋も電気を煌々とつけたまま寝た。
nextpage
朝母親に起こされた時に
「なんであちこち電気をつけっぱなしで寝たの?」
と問われ、起こった出来事を交えながら理由を一生懸命話したが、母親にはけっきょく電気代の無駄遣いと怒られてしまったのだった。
作者夕顔
初投稿です。
拙い文章を最後まで読んでくれてありがとうございます。
誤字脱字はどうか御容赦下さい。
ちなみにこの出来事から一年後ぐらいに今回の話しと関連があると思われる現象に遭遇するんですが、文章におこしても全然怖くなさそうなのでどうしようか迷ってます。
追記:
この話しの後日談にあたる『未成年限定』を投稿しました。
もしよかったら見てください。