music:1
やぁ、初めまして。
おや? 何を驚いているんですか?
あぁ、そういえば自己紹介がまだでしたね。
僕は貴方たちが死神って呼んでいる存在です。
nextpage
あぁ、貴方の名前は言わなくても結構ですよ。
さて、本日の死者116851号の死因は縊死……と。
さて、それじゃあこれから貴方に便宜上の確認を取りますね。
nextpage
いやいや、こっちもお役所仕事なのです。上にきちんと報告しないといけませんので。
さて、この度は死亡なされたと言う事でご愁傷様です。
つきましては、こちらの書類をご確認の上同意の項目にチェックをお願いしますね。
nextpage
へ?
いやいや、何を仰られているんです?
転生? あの世? 天国と地獄?
いやいや、この科学の時代に貴方はまだそんなものを信じていたんですか?
そんなものがあるはずないでしょう?
nextpage
あぁいや、確かに昔はありましたよ。
当然ながら、地球上の命の数も少なかった時代ですし、管理や維持のコストも軽かったからですがね。
そもそも年間でどれくらいの命が失われると思っているんです?
そんな途方もない数の命を全て把握して、管理して、運用するコストや労力はバカにならないんですよ。
nextpage
転生なんてさせたらまた仕事が増えるだけですし、天国や地獄があるならばそこはすぐに満員の鮨詰めになってしまうと思いませんか?
リサイクルには製造よりもコストや労力がかかるって言うじゃないですか。
ほら、この世知辛い世の中ですし、我々としても合理化を目指したいわけですよ。
nextpage
まぁ、世界の実情はそんなものですよ。
では、ご理解いただけたならば同意のチェック欄にチェックをしていただきたいのですが。
nextpage
え? 「嫌だ」ですか?
いえいえ、こちらとしましても困る訳ですよ。
そんな風に我が儘ばかり言われても、運営の方針を変更はできませんから。
nextpage
そもそも、貴方は自らの意思で首を括ったわけでしょう?
ならば、自らの意思で消えて下さいよ。
後もつかえているんです。
何時までも我が儘ばかり言わないで、ほら、チェックするだけでいいんです。
nextpage
それとも、今になって命が惜しくなりましたか?
でも、我々死神は人間の生き死にに関与してはならない決まりなのですよ。
まぁ、同意してくださらなくても結果は変わらないわけですが。
nextpage
時間ですね、それでは同意が得られませんでしたが、強制執行ということになります。
つきましては書類の最終項に記されている通り、この確認は一種の形式でしかないのです。
死者である以上は、消えなければならないわけですからね。
nextpage
さて、それでは貴方はこれから「なくなる」訳ですが……。
今生の名残は尽きましたでしょうか?
作者似非紳士@小倉百弌
怖話では初投稿です。
至らないところもあると思いますが宜しくお願いします。
ピクシブ等にも投稿していた話です。