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僕の知り合いに、自称霊能者の友達がいたのだが、これはそいつから聞いた話だ。
高校三年生の春の話。
「俺さ、ひいおじいちゃんとあったことあるねんよな」
友人の家でゲームをしていた時、いきなり
友人が語り出したので僕は友人の話を聞く。
こういう時に限らず、友人が唐突に話し出す話は十中八九怪談話だ。
「どういうこと?」
と尋ねると。
「まあ聞けよ」
と制してきた。
「俺が中学2年生のお盆の時期の話…」と、友人は切り出した
「母方の曽祖父の墓参りに行こうってことになったんやけど、曽祖父と言われてもピンとこんかった俺は嫌々付いて行った。
祖父の家について、手を洗っている時、鏡に映った俺の背後右側に、坊主で神主みたいな格好した中年のおじさんが立ってた」
そこまで語ると、うおっ!と言いながら手元のゲーム機のコントローラーをガチャガチャやっている。
スクリーンの中では、主人公が体が腐敗した男に掴まれていたが、すぐにゲームオーバー
ハァ…と溜息をつき
「んでさ」
と話を再開した。
「まあ、もちろん知り合いじゃあない
誰かと思い、後ろを振り向いても誰も居なかった。」
それがひいおじいちゃんやったん?
と口を挟むと
聞けって。
と小突かれた。
「それを祖父に話したら、『そりゃお前の曽祖父やな』と笑いながら言った。」
祖父の話を要約するとこうだ。
曽祖父はある寺のお偉いさんだった、その宗教を満州に広げようと、海を渡ったのだが、満州で寺を建てたのちに、戦火で寺ごと焼かれたのだという」
僕は息を飲む。
寒気がする…。
友人の部屋の天井から、ドカドカ…ドンドンという風に足音が聞こえる。
友人は目を閉じ、その音を音楽か何かのように聞きながら、左腕を右手で摩っていた。
彼は霊的なものを感じた時は鳥肌が立つのだそうだ。
そう言えば…と僕は思う。
僕の家はマンションで上の階の住人の足音が聞こえるのは日常茶飯事だ。
だが、この家はどう見ても一戸建て、三階はないように思えた。
少しゾッとする。
「恐らくは、俺の霊感も母の霊感もルーツはそこからきとるんやろな」
足音が途絶えると、彼はニヤニヤしながらそう言ったかと思うと、ゲームに熱中していった。
話し終えたようなので、さっきから渦巻いている疑問を口にする。
「この家って、三階なんかないよな?」
友人は顔を上げ、聞こえたか?
と僕の耳元で囁いた。
友人の吐息が耳にかかったからか、鳥肌が立つ。
まだニヤニヤしている。
焦らされている。
こういう時は早く話して欲しいものだ。
「ここの屋根裏にはさ、5人目の住人が居るんだよ」
と友人は言った。
ゾクゾクする。
居るのだろうかこの天井の上に…。
そう思うと気が気じゃなくなってきたのだが
「覗いてみるか?」
と友人は言うそれも、クローゼットを開けながら。
クローゼットの奥には、縦長の鏡が服と服の間にチラリと見えた。
友人はクローゼットの天井を指差し、ほらと言うのだ。
「いえ…ご遠慮します…」
と提案を拒否すると、友人は足元の小石を蹴るフリをしながら舌打ちをした。
この屋根裏の住人に関する怪談もあるそうだが、それはまた別の話。
作者慢心亮
今回もあまり怖くなかったですね。
『俺』の霊感に関わる話でした。
クローゼットの中には、怪しいものが色々と入ってそうですね〜。
ではではー