中編3
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マイム

先日ネットで怖い話を探していると、「ジュリアナさん」という都市伝説を見つけました。その話が、高校のときの友達に聞いた話に似ていると思いました。今回はその友達に聞いた話を話したいと思います。

******

その友達をAと呼ぶことにします。これはAが中学3年の春の話です。

Aは野球部に入部していて、とても忙しく帰ってくるのは夕日がとっくに沈んだあとで、辺りはすっかり真っ暗でした。

Aは一軒家が並び建つ団地に住んでいて自転車通学でした。

そんなAがいつも通り遅くに自転車で帰ってきて、車庫に自転車を入れようとすると、家の入り口の門の少しだけ離れたところに女の人がジッと自分を見て立っていました。

女の人の外見は黒髪のロングでやたら厚化粧で、真っ赤な服に真っ赤なバッグ、真っ赤なハイヒールを履いていました。

部活で疲れていましたが、不気味だという感覚が沸々と、というより瞬時に沸いてきました。

急いで家に入りご飯を食べ終えると2階の自分の部屋から外を見て、女の様子を伺っていました。すると女はスタスタと歩き去っていきました。

その方向にはそういえば、不思議な親子が住んでいるという家がある方向だということを聞いたことがありました。

翌日、また部活からの帰途についていると昨日のことを思い出しました。恐る恐る角を曲がって自分の家の前を見てみると昨日の女が立っていました。全く昨日と同じ恰好、同じ場所、同じ立ち方で。

女の方に注意を向けながらゆっくりと、かと言って不自然じゃないようにまずは自転車を車庫に入れようとしました。 暑くもないのに車庫に入った途端に汗がドッと出る。恐らく車庫にいるときは女が見えなくなるから。

ヤツが近づいてきていないか。

ヤツが襲いかかってこないか。

閑静な住宅地に門を締める音だけが響いて、ゆっくり女の方を見ると変わらず自分をジッと見ている。

Aはそのままダッシュで家に入った。

家の鍵を急いで閉めたが、振り向くことはできなかった。玄関の脇がモザイクガラスのようになっている為、もし女がそこに写ったら…

Aはご飯を食べながら女のことを母親に伝えた。

すると母親は外を見に行ったが、誰もいなかった。

(帰ったんだ…)とAは思いました。

次の日から女は姿を現さなくなりました。

かえって不気味に思ったものの、それからずっと家の前からいなくなりました。

しかし、それから1ヶ月ほど後。

女のことを忘れていたAが部活から帰ると、家の前にあの女が立っていました。

そのときAはまたあのときのような汗が体から出ているのを感じました。

真っ赤な服、真っ赤なハイヒール…あのときと同じでした。

ただAは前のときより怯えていた。

それは女が消えたと思ったから。そしてあのときと違い女はバッグを持っていなく、仁王立ちで自分の方を向いている。

前のときはじっくり顔を見れずただ厚化粧としか思わなかったが、よく見ると女は目が異様にギョロギョロしていて、若干斜視のようだった。

Aは恐怖のせいで声を上げる気もなくどうしようか迷った。

必死になって考えたが、とにかく全力ダッシュで家に入るしかないと思った。

もし襲いかかってきても、相手はハイヒールだし逃げれると。そして家に入り親に言い警察を呼んでもらおうと。

意を決して構えました。

その直後でした。

突然女がクルクルと円を書くように歩きながら

「マイムマイムマイムマイム、マイム…」

あのマイムマイムの歌を歌いだしたのです。

Aは唖然としてまさに絶句状態でした。

一体何が起こってるんだ。

この女は何なんだ。

ただ恐怖。よく知ってるヤツがテンション上がってこんなおかしなかことをしてればただ笑うだけだろう。

でも目の前にいるのは得体のしれない女。

ただただ無表情で焦点の合わない目つきで回りながら踊っている。

後日談を聞きたかったのですが、Aは一切話してくれませんでした。Aいわく話すほどのことじゃないらしいです。

Concrete
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