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中編3
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生き字引

土地の古老や生き字引と言われる方が周りにはいないだろうか?

下町の我が町にも多かれ少なかれ居る。

雷親父は減った。

もう親父達も生き字引の仲間入りをはたしているのかもしれない。

今回はさるお方から聞いた話。

俺達若人が血気盛んに神輿の前で御神酒を飲んで気合いを入れた頃、、、

神輿の後ろ側からヨロヨロと古老が出てきた。

杖は持たないが法被を着ていてもガリガリに痩せていて見るからにヨボヨボで到底力強くは無い。

だがその古老でしか唄えない地元の地域の歌をとても聞き応えのある節回しで唄う。

若人と年輩も唄の合間に合いの手を入れたりする。

唄の終わりに全員で

全員「あっそおぉ〜しましょ〜う!!」

と声を合わせ神輿に肩をいれる。

そこからトランス状態になった男達の血湧き肉躍る神輿の担ぎ合いが始まる。

今年は若い衆が増えたので俺は途中で町の地主様や神主さん達、祭りの関係者に挨拶して回る。

そして祭りも終盤に近づく頃、俺は古老に伺う。

俺「その唄はどうやって引継がれていくのじっちゃん?」

じっちゃんと呼んでいたのでここからは古老では寂しいのでじっちゃんとします。

じ「ん、あぁーそれは歳を重ねていったらわかるわぃ。、、、唄が上手い順じゃ。」

俺「答え言ってるやん(笑) 歳を重ねてなくてもわかってもーたやん 。」

じっちゃんはカッカッカと水戸黄門の様に笑う。

じ「じゃあこれは知っとるか?この神輿、、、ある年代から太鼓と呼ぶの?」

俺「うん。知ってる。神輿の上に太鼓が乗ってるから?子供の頃よく叩いたよ?」

じ「まぁそんなもんじゃな。あの太鼓はな、、、神社の境内あるじゃろ?鳥居のすぐ側にある楠の切株の上にあった木をくり抜いて作ったんやぞ。」

俺「へぇーそれは知りませんでした。じっちゃん、あんな大きな切株(直径2mはある)からこんな小さな太鼓しか出来なかったん?」

普通に疑問だった。

大木から大人でも簡単に担げそうな梵天太鼓しか出来なったのか?

残りの材木は?

やはりじっちゃんは落ち着き払った顔で話を続けてくださる。

じ「落雷、、、雷がおちてな焼け焦げたんじゃ。ワシも度肝抜かれたわ、、、子供の頃やったけどな。漏らしてもーたわ。」

またカッカッカと笑う。

じっちゃんの笑い方は大好きだ。

だが笑った後のじっちゃんの顔が急に真顔になり目付きもいつもの倍程鋭くなる。

祭りの賑やかな喧騒が遠くなる気がした。

何故か冷や汗みたいなものが額から流れる。

じ「あの雷のせいで宗介がやられた。だから唄うのはあいつへ詫びかもしれん。境内で遊ばなければと何度思ったか、、、恨み節なのかもな。上手いと言われとるらしいがなぁ、、、ワシは神も仏もおらん思ぅとる。ただただ境内で遊んだだけでその後は友達殺しやって言われ続けてきたからなぁ。だから誰より唄を上手くなり誰よりもこの神社に想いがあるんかもな。」

唄の上手い理由が恨みなんて、、、思わずゾッとした話。

ただその後興味が出て調べた郷土史にも落雷により境内の楠の木が駄目になった事、そこから太鼓を作った事は史実ではあった。

じっちゃん100歳手前でで周りに同い年の男性少ないか人が亡くなった事、友達殺しと迫害された事は不明である。

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