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短編2
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トントンダダダダ

何年か前の話です。

彼女と一緒にある温泉街の一番古い宿に泊まりました。(旅行会社で予約するとき一番安かったので)

宿は古さは感じるものの、宿の前の通りを眺めることもでき、これぞ温泉街といういい感じの宿でした。

その日は朝から電車で現地に行き、早めにチェックインしてから外湯めぐりをしました。

結構歩き回り、温泉にも何回も浸かり、スッキリはしてましたが、疲れたので宿でゆっくりしようということになりました。

宿に戻ってからは食事(部屋食で結構豪華で最高でした)を済まし、布団を敷いてもらい翌日に備えすぐに寝ました。

何時間経ったかは分かりませんが夜中にふと目が覚め、全身が金縛りにあい動かせなくなってました。

私自身は霊感も無く、またそんなものは信じない方だったのですが、金縛りにはよく合いました。金縛りなった際はその都度全身に力を入れとけていたので、その時もそうしました。

案の定一瞬で金縛りはとけまた眠りに落ちました。

しかしまたすぐに金縛りに合い、目が覚めたので同じ事をしましたが、一向に力も入らず、少し焦りました。

目だけは動かせたのですが彼女の寝ている背中は見えるものの声も出ず助けをこうこともできません。

何かが胸を押さえているような苦しさは感じますが何も見えません。恐怖は無いものの体の異変に焦りは募ります。

そうこうしている間に突然。、、、

バンンッッッツ!!!

寝ている右手の少し離れた襖が大きく叩かれたような音が聞こえたかと思うと、

ダダダダダダダダ!!

トントントントン!!

何かが走ってくるような音が近づいてきます。そして一瞬で頭の中を通過したような感覚があった後に、通り抜けて音は無くなりました。

その後も、金縛りは続き息苦しさも続きましたが、声は出ないもののアゴが動くことに気づき

カチカチカチカチカチカチカチカチ

と歯を鳴らし彼女を必死に呼び続けました。

少しするとその様子に気づいた彼女が身体をゆすって起してくれたのでなんとか金縛りは解けました。

その時は、彼女が怖がるといけないので、

「目覚めたら、体動かんくてさ。

なんかわからんけど苦しかったからアゴだけ動いたから歯鳴らして助け呼んだねん。笑」

とか言ってごまかしました。

彼女は、半目で目だけギョロギョロ動かしながら、歯をカチカチ鳴らす私の光景にかなりビビったらしいです、、、

その後また寝ようとなったのですが、寝る前にトイレに行こうとした私を

「N(私の名前)、、、」

と呼ぶ声がしたので

「なんや?」

と返事をすると彼女が

「何も言うてへんよ?」

と、、、

特にその後何が起こるわけでもなく、変わったことも起こりませんが私の人生で唯一の不思議な体験でした。

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