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雨の中を全力疾走するのは、晴れた日の其れとは比べ物にならない位、疲れる物だ。
しかも、其の日の僕はスニーカーではなく革靴を履いていた。少しでも気を抜くと、靴底が濡れた道路の上を滑りそうになる。
後ろを振り向くと、あの白い服の女性が、頭陀袋を引き摺りながら僕を追い掛けて来ていた。
・・・やはり、普通の人では無かったらしい。
ズリ、ズリ、ズリ、
袋が地面の上を這いずる。摩り切れてしまいそうな勢いだ。
あの袋に入れられるのは・・・絶対に御免だな。
僕は心の中でそう呟き、また一歩、足を踏み出し地面を蹴った。
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雨が体温を奪う。荷物が重い。濡れた所為でベタベタと張り付いた下着が、気持ち悪い。
走れども走れども、一向に距離が埋まらない。
僕が遅いのではない。女性が異常に速いのだ。
スタミナもそろそろ無くなる。早く引き離さねば・・・・・・。
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曲がり角の途中で、左足が嫌な音を立てた。
バランスを崩し、地面に叩き付けられる。
立ち上がろうとするも、もう遅い。
振り向くと、目の前に女性の顔があった。
女性が僕の方を見詰めたまま、袋の中に手を突っ込む。
僕は覚悟を決め、強く目を閉じ、質問を聞いてしまわないよう、両手で耳を塞いだ。
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体に、雨では無い、固くて小さな物がパラパラと降り注がれる。
軈て、何かを引き摺る音は遠退いて行った。
薄目で見ると、誰も居ない。
質問もされなかったし、助かったらしい。
狐にでも摘ままれた様な気分だ。
目を開け、立ち上がる。体から浴びせられた物が地面に落ちる。
見てみると、其れは幾つもの安っぽい棒付き飴だった。
僕は酷く困惑した。
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そして、次の日。僕は昨日遭ったことをピザポに話し・・・。
ピザポが初期化した。
作者紺野-2
どうも。紺野です。