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中編4
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美術の先生

高校の時の美術の先生が相当な変わり者だった。

有名な美大を卒業し、ヨーロッパの何処かに留学して絵の勉強をした後、日本で個展なんかもひらいた様な人だという噂があった。

そんな凄い人が田舎の高校の教員になるの?って思ったけど、どうやら日本で個展を開いても全く売れることがなかったんだって。

高校の選択授業で、美術か書道か音楽を選択させられたんだけど、一番楽だっていわれていた美術を僕は選択した。

初めての授業の時にその先生が教室に入るなり皆さんの好きな様に絵を描いて下さい。と言ってきた。

どんな絵でも良いですが、その絵を見て相手が何を描いたか分かるような絵は描かないで下さいって。

言ってる意味がみんな理解できてなかったけど、とりあえず適当に描けばいいんだって感じで、みんな思い思いの抽象画?の様なものを描き始めた。

そんな感じで月に2回程の選択授業は進んでいった。

僕らが絵を描いている間、先生は自分の部屋に閉じこもって出てこない。チャイムが鳴る数分前に出てきて、じゃぁこれでって言って授業を終わらせていた。

こんなんで教師が務まるのかぁって思ったけど、選択授業なんて誰も真面目に受けないから楽で良いやくらいに思っていた。

クラスにたまたま美術部の友達がいて、そいつにあの先生変わってるよねって話しをしたら部活動内でも相当変わってるよっていう話をされた。

普通、部活動なんだからコンクールなんかに出展する為に顧問も生徒の教育を熱心にするはずなのに殆ど何もしないんだって。部活中も自分の部屋に閉じこもって、恐らく絵を描いているらしい。けど、どんな絵を描いているかは誰も知らないんだって。

一度だけ生徒が先生の絵を見せて下さいってお願いしたらしいけど、出来上がったら見せますと言って流されたらしい。

けど不思議なのがその先生、うちの学校にきてから2年くらい経つんだけど、1度も作品が仕上がった雰囲気がないんだって。

そんな話を聞いたらどうしてもその先生の作品を見たくなって、どうにかして見れないかなってその友達と計画を練り始めた。

先生の部屋には絶対に作品があるらしいんだけど、絶対に鍵をかけるんだって。

だから、どうにかして先生が鍵をかけれない状態にして絵を見ようということになった。

友達が今度、部活の時に先生が鍵をかけれない様にして何とか外に連れ出してみるから、その間に部屋に入って僕が写メを撮るという計画を提案してきた。

本当に上手く行くかなぁって言いながらもためしてみることになった。

どういう手を使ったのか分からないが、放課後友達からメールがきて、先生を連れ出すのに成功したから15分以内に部屋で写メを撮れとの内容だった。

僕はすぐに誰もいない美術室に向かい先生の部屋を恐る恐る開けてみた。鍵は開いていて布がかけられた1メートル程ある大きなキャンパスが部屋の真ん中に置いてあった。部屋の周りにも布がかけられたキャンパスが置いてあった。

ワクワクしながら真ん中に置かれているキャンパスの布を剥いでみた。

そのキャンパスに描かれていたのは顔が潰れた男の絵だった。

全身に鳥肌がたち、あまりの気持ち悪さに吐きそうになった。

流石に写メなんて撮れなかった。

吐きそうになりながらも他のキャンパスの布をめくってみた。

そこには、恐らく友達であろう男の子が全身のいたるところから血を流している絵が描かれていた。

どの絵もグロテスクで、直視できないほどだった。

ここから出なくてはと思い、振り返ると先生が立っていた。ポケットの中では携帯のバイブが鳴っている。恐らく友達だろう。

何が怖いって先生がずっと笑っていた。

先生も部屋に入ってきて、一枚ずつ絵の解説をし始めた。

恐怖で足が震えた。一刻も早く逃げ出したかった。

殆どが見たことのある顔だった。

最後に先生が満面の笑みで、君も殺しといたよ〜。と言って、僕が首を吊っている絵を見せてきた。

僕はその後逃げ出して職員室に向かった。担任の先生を無理矢理連れ出して美術室に向かった。

担任に事情を説明し、先生に部屋から出てくるよう促しその場で絵を確認させた。

次の日、僕は校長室に呼ばれ校長からこの事は絶対に口外しないで欲しいと土下座をされた。

僕としてもあんな絵とあんな先生を見て精神的に相当まいっていた事もあり、何も言いませんと答えた。

友達はしつこいくらいに問いただしてきたので、その友達には誰にも言わないという約束で教えてあげた。

もちろん美術の先生は退職した。クビではなく自主退職という形らしい。

あの絵は持って帰ったらしい。

今も何処かの学校で絵の中で生徒を殺してると思うとゾッとする。

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