中編3
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ズリズリさん・9

・・・・・・・・・。

ゆっくりと道を進んでいると、ピザポが唐突に話を始めた。

「中学・・・三年生の頃の話何だけどさ。」

僕が顔を向けると、何処か恥ずかしそうに笑う。

「あんま見んなよ。自分語りなんて、慣れてないんだから。」

そして、右手を伸ばし、僕の頭をぐるりと前へ向ける。コキリ、と首から変な音がした。

「痛い。」

「ごめんな。」

ピザポが僕の頭から手を離す。

僕は今度は前を向いたまま、彼が話し始めるのを待った。

軈て、ぽつぽつとした声が、雨に混じり、頭上から降って来る。

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・・・・・・・・・。

俺が此方に越してきた理由って、話したっけ。

・・・・・・ああ。だよな。あの時はどうも。お世話になりました。

・・・。

あのな、中学三年生のギリギリまで、俺、どうすれば良いのか迷ってたんだ。

地元に残るべきか、此方に来るか。

ユキちゃんからゴーサインは出てたし、家族からも了承は得てたんだけど、何か其れでも決められなくてさ。

いや、此方に来るのが嫌だったんじゃない。

ただ、家族を残して一人逃げる・・・みたいのが、少し怖かったんだよな。

・・・・・・ほら、先の震災もあるだろ。実家は海辺の町だからさ、もしものことを考えると・・・何か、な。

いや、家族に何かって言うよりは《もし、自分が居なかった所為で何か起こったら》って感じの不安で・・・。

ただでさえ面倒な思いさせてんのに、俺のことでまた迷惑掛けたらって考えると、どうしても思い切れなくてな。

もういっそ全部止めて、グレてバイクとか乗り回してやろうか、とも考えたよ。

自棄になってたんだろうな。多分。

・・・・・・そんな時だった。

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ちょっと助けてもらった人が居たんだ。

・・・いや。助けてもらったって言うか、背中を押してもらったって言うか・・・。

其の人、言葉が不自由で、何も喋れなかったんだけどな。それでも、俺の話をちゃんと聞いててくれてて。あと、飴。飴をいっつも持ち歩いてたんだ。

俺が言いたいこと全部言い終えると、一日一本、安っぽい棒付き飴・・・イチゴアメって、コンちゃん知ってる?そんな感じ。其れを、ヒョイッてくれるんだ。小さな子供にするみたいに。

それで、俺は随分・・・・・・。

・・・・・・何て言うべきなのかな。

強いて言うなら・・・救われたよ。

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・・・・・・・・・。

ピザポは其処で言葉を切り、不意に立ち止まった。

何時の間にか女の横は通り過ぎていた。

其れでも、僕達の数歩後ろに居る。

ズリズリという音は無い。どうやら近付いて来てはいないようだ。

然し、どうしてまたこんな所で立ち止まったのだろうか。

不思議に思い、ピザポの方を見る。

彼は雨に濡れぬよう傘を肩に挟み、荷物の中をゴソゴソとまさぐってた。

鞄の横ポケットの中に手を入れ、ピザポが何か取り出す。

そして、其れをそのまま僕の方へ差し出す。

「はい、コンちゃん。これあげる。」

彼が持っていたのは、三角錐に似た青い飴がプラスチックの棒に付いている、棒付き飴だった。

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・・・・・・・・・。

「え、ああ、ありがとう・・・。」

何が何だか分からないまま、飴を受け取った。

その時だった。突然、後ろから声が聞こえた。

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「ワダシハミニグイカ…………。」

酷く聞き取り難く、一瞬何を言われたのか分からなかった。

後ろを振り返ると、女がボロボロと涙を流しながら、此方を見ていた。

「・・・・・・え?」

「ワダシハミニグイカ、ワダジハミニクイガ、ワダジハミニクイカ、ワタシハミニグイガ、ワタシハ、ワタジハ、ワダジハ、ワダシハ…………」

女が一際声高く咆哮する。

「私ハ、醜イカァァァァァァ??!!!」

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・・・・・・・・・。

「出た!ズリズリさんだ!!ほら、コンちゃん、逃げるよ!!!」

ピザポの口調が、元に戻っていた。

僕の左手首を掴み、勢い良く駆け出す。

転ばぬよう、僕も慌てて足を動かした。

走りながらピザポの顔を見ると、真底楽しそうに笑っていた。

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・・・・・・・・・。

ズリ、ズリ、ズリ

背後から聞こえて来る音は、きっと彼女の袋が地面に擦れている音。

「何時まで逃げるんだよ。」

「んーと、取り敢えず神社まで。もうちょいスピード上げて走れる?」

「・・・・・・ああ!」

僕達は神社を目指し、更に足を加速させながら、走って行った。

Concrete
コメント怖い
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紫音さんへ
コメントありがとうございます。

そう言って頂けると、此方としても嬉しいです。ありがとうございます。

(´・ω・)つ孫の手
なるべく早く書けるよう、頑張ります。

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待ってました、ズリズリさん(*゚▽゚ノノ゙☆パチパチ☆♪

続きが気になる終わり方で、全身が痒いです(*´□`*)

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