短い話ですが。
俺はバイクを転がすのが趣味で、良くツーリングとかに行くのだが、もう一つ、趣味がある
廃墟めぐりだ。
3年も前の事。
友達と横須賀にある、有名な廃村にバイクで行った。
その廃村ってのが、都市開発の為に、住人は立ち退きをしたのだが、
取り壊し寸前で、中止になったらしい。
まぁ、中には立ち退きを拒否した人も居るので
20メートル離れた所に、普通に暮らしてる人もいるから、
心霊スポットとか、ヤクザが居るとか
そんな噂もない、ただの半廃村で
只々、ノスタルジックに酔いたくて、その廃村を探索したんだ。
語り出すと止まらないので、要点だけ。
あらかた、廃墟を回った後、いよいよ最後の一軒
問題はこの一軒家で起きた。
「ここで、最後だな」
友「最後は二階建てか、階段が腐ってるかも知れないから慎重にな」
「そん時は、道ずれだな」
友「ざけんな(笑)」
そんな、馬鹿な事を言いながら、勝手口から進入して。
一階を見て周り、二階の部屋を探索してる時
友達が不意に呟いた。
友「うっわ……やべぇ」
「どした? 死体でもあった?」
友「あったら泣くわ(笑) これ見ろよ」
「写真じゃん、ここの元住人のだな」
友「なんか、物悲しいよなぁ〜」
「確かに……
sound:14
…………あれ?」
足音……だったかも知れない
木を叩く様な音が下の階から聴こえた。
友「下からだよな? 」
「どうするよ? 管理人とかだったらやべぇぞ」
友「ちょっと、様子を見るべ……いざって時は窓から逃げるぞ」
「ああ……」
二人とも、黙り込んで耳をすませたら
やはり、聴こえる。
確信した。 足音だ、人間の。
一階を徘徊してる様に聴こえる。
廃墟に響く、その音は、あまりにも不気味だったよ
……やがて、その足音は階段を登り始めた。
sound:14
「やべぇ! 逃げるぞ!」
sound:14
窓から飛び出そうと、慌てて窓に手をかけた。
……今でも後悔してる。
窓枠に足をかけ体を半分、外に出した時、
向かいの廃墟に人が居た。
そいつらが、窓からこっちを見てるんだ。
なんて言うのか……雰囲気が普通じゃない。
汚れたフィルターを通して見た様な
不気味な男と女、それに子供がジーっと……俺を見てた。
「うおぉ!! おい! ヤバいヤバいぞ!!」
そう叫んで、振り返ったら
友達が居ない。
「おい!! どこ行っ……」
絶句したよ、本当に。
今まで居た部屋が変わってたんだ。
いや……同じ部屋だが
メチャクチャだった、部屋が綺麗になってる。
ただ、全体的に黄ばんだ雰囲気なんだ。
何というか、古いビデオテープを再生した様な
古惚けた、視界。
もう、パニックだったよ。
情けない話だが、俺は半ベソかきながら、何度も友達の名を叫んだ。
何度目か叫んだ時、返事があった。
雑音にも似た、何人もの声が同時に。
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sound:33
「「「おが…え……りいィィいィ〜〜〜」」」
作者キツネ
この後
気がついたら、庭で寝てました。
友達が言うには、俺はあの時窓から落ちたらしい。
ただ、足音については、何もわからないです