此れは、僕が高校2年生の時の話だ。
季節は春。
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・・・・・・・・・。
始まりは、斎藤に押し付けられた、一匹の金魚だった。
彼が謎の祭りで購入したという其れは、小さなガラス瓶に詰められていて、蓋も開けなくていいし、餌もやらなくて構わない、とのことで、怪しいこと甚だしかった。
だが、そんな金魚を、僕は何故か日に日に愛しく思うようになった。
謎の体調不良に襲われ、金魚は刻々と何か可笑しな生き物へと変貌を遂げていく。
其れでも僕が金魚を捨てられなかったのは、一重にあの子に情を移していたからだ。
まぁ、結果としてその子を僕は飲み込んでしまった訳だが・・・。
無論、好き好んで飲んだ訳ではない。友人達に押さえ付けられ、無理矢理に飲み込まされたのだ。
かと言って、僕は彼等を恨んだりはしない。助けて貰った身なのだし、自分ではきっと、あの子を殺せなかった。
だけど・・・・・・なんだか、未練とか後悔とか、全く無いかと聞かれたら、そんなことは無かったりする。
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・・・・・・・・・。
「で、野葡萄君。突然来て長々と説明をするのはいいんだけどね。君は、一体何をどうしたいんだい?私に何の用なのかな?」
僕の言葉を遮り、烏瓜さんがニヤリと笑う。
「怒りたいなら好きなだけ叫べばいいし、寂しいならもちたろうを好きにモフりたまえ。ああ、感傷に浸りたいのかい?だったら、胸を貸そうか?」
大袈裟に腕を広げてみせる烏瓜さんを、僕は全力で睨み付けた。
「・・・猿毛が付きそうなので結構です。」
そして、僕の答えに小さく口笛をならす。
「君は本当に変な所ばかりあの狐目に似るなぁ。一周回って肝心してしまうよ。・・・でも、悪態を吐けるなら、まだ大丈夫だね?」
クスりと笑い、数回頷いた烏瓜さん。僕は眉をしかめながら、彼の方を見る。
「もしかして、あの気持ち悪い発言は、烏瓜さんなりの気遣いだったんですか?」
「違うよ。単にからかっただけ。ただ、君がそうであってほしいなら、そう思ってて構わないよ。」
ふふん、と鼻を鳴らす烏瓜さん。
そこはかとなく不快である。
「気持ち悪いので、からわれたということにしておきます。」
「重ねて《気持ち悪い》って言われるのは、流石の私も傷付くよ?・・・・・・機嫌を損ねたかな。じゃあ、もう一度聞こう。君は何の用で私の元に来た。」
態とらしい言い方だ。僕はもう一度、彼を睨み付けた。
「あれの正体を教えて貰いに来たんですよ。」
「あれ・・・って君の言ってた金魚のことかい?私だってそんなもの、現物を見なきゃ分からないよ。魚の化け物なんて此の世には其れこそ星の数だ。あんな少しの情報で確定なんて出来ないね。」
これまた大袈裟に肩を竦める烏瓜さんに、僕はあくまでも冷静に言う。
「しらばっくれないでください。あの化け物の対処法、二人に教えたのは貴方でしょう。口調から察するに、彼奴等はあれが何だったか知っていた。貴方以外に、誰が教えるって言うんですか。」
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「・・・君。知った所で嫌な気分になるだけだよ。其れでも、聞くのかい?」
ニヤニヤと笑い続ける兄の前で、僕は大きく頷き、深く頭を下げた。
作者紺野-2
どうも。紺野です。
やっと説明を始めました。と言っても、今回はざっとしたおさらいで終わってしまいましたが。
次回は、閲覧注意マークを付けることとなりそうです。お読みになる場合は、自己責任でお願い申し上げます。
其れでは、宜しければ、次回もお付き合いください。