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人間は孤独にとても弱いとよく言いますが、
それを証明する実験が戦時中にドイツで、行われたそうです。
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実験自体はとてもシンプルなものです。
1年間、10人で共同生活を行ってください。
そう実験の参加者には伝えました。
と言っても、10人のうち参加者(被験者)は1人で残りの9人は実験の協力者です。
食料やトイレ、風呂など生活に必要な最低限のものは揃っていますが、娯楽となりうるものは一切ありません。
それぞれの部屋が与えられていますが、日中は大きな部屋で一緒に過ごすことが決められています。
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参加者は初めは緊張しているようでしたが、段々と仲良くなっていきました。
実は事前に、次第に仲良くなっていくようにと協力者にお願いしてあったのです。
参加者には毎日、夜には簡単な日記を書いてもらっていましたが、最初「緊張している」と書いてあった日記には「いい人たちだ。実験が終わった後も友人を続けたい。」と書いてありました。
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ここで、実験は次の段階です。
「参加者を一人にするように」と実験協力者に指示をしました。
参加者が話しかけても無視をする、決して目を合わさない、話しかけない。
ただ、それだけです。
参加者ははじめ、戸惑っていました。
なぜ自分が無視されるのか?
何か怒らせるようなことをしたのか?
そんなことが日記には書かれてありました。
大きな部屋では他の参加者(実際は実験協力者)たちが楽しそうに話しているのを寂しそうに見ていました。
そのうち、自分を無視する人たちへの怒りを日記に書くようになりました。
その頃から参加者に笑顔が消えて、大きな部屋では実験協力者たちに苛立ちをぶつけるようなことをするようになりました。
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次第に参加者には落ち込みや無気力が目立つようになっていきました。
支給されていた食事も残すようになり、夜も眠れないようでした。
それまでは無視をされても他の参加者(実際は実験協力者)たちに話しかけていた参加者でしたが、全く話しかけようとしなくなりました。
日記には、段々と自分を責めるような内容が書かれるようになっていきました。
次第に参加者からは表情がなくなり、ぼんやりとしていることが多くなりました。
そして、日記の内容は「早く実験が終わってほしい」から「死にたい」へと変わっていきました。
自分の部屋から出てこなくなったため、アナウンスで大きな部屋に行くようにと指示をすると、奇声を上げて部屋で暴れまわりました。
そういう時でも、無理矢理に大きな部屋に連れて行きました。
また、急に泣いたり叫んだりと奇行が目立つようにもなりました。
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それでも、実際は続けられました。
もう日記を書ける状態ではなくなっていました。
感情を失ったようにずっと一点を見つめ全く動かない時間が長くなっていきました。
自分で食事を取らなくなったため、点滴をしました。
排泄も自分で行わないため、おむつをしました。
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そして、実験を開始してから1年が経ちました。
もうそこには実験前の姿とはかけ離れた廃人のようになってしまった参加者がいました。
その後、参加者には治療が行われ、次第に元の生活が行えるようになっていきました。
それでも、参加者には実験のトラウマがずっと残ってしまったようです。
それから、何十年も経った時に、ある大学で心理学の研究の一環として、この実験の参加者にインタビューをすることがありました。
参加者はその時、「今でも人が怖いと思ってしまう」と言っていたそうです。
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この実験に参加したのは50人いますが、そのうち上記のように、ひどい状態になったのは2人だけです。
ですが、他の参加者のうち29人も、無気力や落ち込みなどのうつ症状が現れました。
そのうち、7人はかなり重く、治療が必要なほどでした。
そして、参加者のうち1人は実験の半年後に自殺しました。
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この実験は、人間はいかに孤独に弱いか、それも特に集団の中での孤独に弱いのかを示す上で、とても貴重な心理学的実験であると、現在再注目されているそうです。
現代社会では集団の中での孤独を感じやすい状況は結構多いです。
これを読んでいる皆さんの中にも、そんな孤独を経験したことがある人がいることと思います。
そういった時に、この実験ほどじゃないまでも、苛立ったり落ち込んだりしたのではないかと思います。
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もちろん、この実験は嘘です。
ですが、現在、集団の中で孤独に感じている人は多くいます。
その人たちはひどく傷ついていることでしょう。
中には一生消えないトラウマを負う人もいるかもしれません。
自殺する人もいるかもしれません。
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皆さんには、この実験の協力者にも参加者にもならないで欲しいと思います。
作者x hiroko
読んでいただきありがとうございます。
孤独をテーマに書きました。
#gp2015