何だか、可笑しなことになっているような気がする。
・・・先ずは状況を整理しよう。
「木葉。」
「何ですか?」
「・・・お前、誰に会いに行くって?」
さっきは両親とか聞こえたが、もしかしたら聞き間違いかも知れない。
俺の質問に、木葉がキョトンとしながら答えた。
「両親です。お父さんとお母さん。」
断言されてしまった。しかも説明まで。
いや、待て。前に自分が聞いた情報が間違っていただけなのかも知れない。
若干焦りながら尋ねてみる。
「けど、木葉の両親って・・・。」
「え?・・・ああ、はい。生きてませんよ。死んじゃいました。」
間違ってなかった。
死んだ両親に会いに行く為に家出・・・。
アウト。完璧にアウトだ。
こいつ、そう言えば学校で嫌がらせに遭ってるとか言ってたし・・・。
俺の背中を一筋、冷たい汗が伝って行った。
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「一緒に来てくれませんか?」
木葉が少しだけ眉を潜めながら言う。
「いや、一緒に行くって言っても・・・。どうやって。」
お墓参りとかかも知れない。希望を捨ててはいけない。だって、まさか木葉に限って・・・
「海です。海に行くと会えるみたいです。」
お墓参りルート消えた。
海か・・・。
「あの、こんなこと聞くのもどうかと思うんだけどさ、木葉自身、こういうことするのって・・・。」
「・・・ああ。初めてですね。そう言えば。」
何処か遠い目をして、木葉が笑う。
笑い事ではない。
「何て言うか、中々決心が着かなかったんです。怖いって言うのも勿論なんですけど、何て言ったら良いのか・・・。申し訳無くて。」
「ほら、今まで僕、祖父に育てられて来たでしょう?散々迷惑を掛けておきながら、結局の所、両親のことを忘れられずにいる。祖父からすれば、理解はして貰えるとは思いますが、やはり、良い気持ちはしないでしょうから。」
染々とした様子で語る木葉を、俺は何も言わず・・・というか、何を言っていいのか分からずに見ていた。
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「真白君のお陰です。」
唐突に飛び出た自分の名前に、少なからず動揺した。然し、動揺している俺には御構い無しで、木葉は言葉を続ける。
「此の一年、本当に楽しかったんですよ。」
「両親に会いに行く、ちゃんとした理由が出来ました。自分の中で、やっと気持ちが固まったんです。」
にこり、と微笑みながら言葉を一旦切り、木葉は改めて此方を向いた。
「一緒に来てくれますか?」
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「・・・其れって、俺が行かないって言っても、木葉が行くことに変わりは無いのか?」
「ええ。」
「例えば、俺が行くなって言っても?」
「はい。」
「大人になるまで待つとか。」
「嫌です。」
「行ったら絶交でも?」
「・・・此ればっかりは、僕も本気で決めたことなので。」
「そっか。」
何となく分かっていた返事。
覚悟を決めた。
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「俺も行くよ。」
そして、何としても止める。
「・・・ごめんなさい。」
俺の決心を知らないだろう木葉が、潜めていた眉をカクンとへの字にして笑った。
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さて、此の時に文字通り決死の決意をした兄ではあるが、其れが全くの無駄であり勘違いだったことが分かるのは此処から凡そ三十分後、もう後戻りの出来ないバスの中であった。
作者紺野-2
別名、チビ兄達の暴走編・・・。
どうも。紺野です。
此処の件、得意気に語っていた猿兄がすっごくうざかったです。勝手に勘違いして勝手に覚悟決めて何ドヤッてんでしょうね全く。