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中編3
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K峠

私の住む処の近所にはK峠という峠がある。

此処は毎週末、ロードバイク乗りやリターンライダー達が各地から集まってぐるぐるぐるぐる走り回っている

それだけならまだ周辺の観光地も潤って万々歳だが、問題は夜中になると現れる「走り屋」の連中だ。

「俺たちは暴走族とは違う」と言うのが彼らの常套句だが、はたから見れば騒音を撒き散らし、夜中の山道をスピードを出して走り抜ける...暴走族と何ら変わりはないだろう。

そしてスピードを出しているので事故を起こせば大惨事となる事も多い、周辺の集落やみかん農家にとっては悩みの種だ。

今回はそんなK峠でのお話。

私は温泉へ行くのは1人が好きだ。

数年前のその日も私は1人で原付に乗り上の温泉へ行く為、K峠をゆっくりと走っていた。

この峠は道が長く所々休憩所が設けられていて、いつもおっちゃんライダー達に混じって休息を取る

そしていつもの様にタバコを吸い終わってまた、上へと向かう。

温泉へ浸かると若者らしからぬ「うぇぇ〜」と唸り声をあげて、此処まで登って疲れを洗い流す。

そして温泉も上がり、併設された土産屋で地サイダーを飲んで帰る、帰りは下りばかりで多少楽だ。

帰りは崖側が左になるので、高所恐怖症の私は若干車線の真ん中寄りを走る、そして件の休憩所に入る。

すると、おっちゃんライダー達の中に混じって1人、異様に生気のない人がいるのが見える

私は

「何かあったのか、まあ何かあってもやだし、話だけでも聞いてみよう」

と思い、その人に話しかける

「あのー、どうされました?もし暑さでやられたのならスポーツドリンクが...」

すると、他のライダー達が私に問いかける。

「兄ちゃん、誰と話してんの?誰もいないのに急に喋り出してびっくりしちゃったよ」

どうやら私は何かいけないものに話しかけてしまったらしい

「この暑さでおかしなったか?笑 まあこの辺は飛ばす車も多いから、原付は危ないし気をつけて帰れよ」

「はい、ありがとうございます」

なんだか怖くなり急いで帰路につく、その道中に以前あの峠であった事故を思い出した。

「あの時崖下に落ちてたバイク...あの時下の農家がカンカンに怒ってたのが強烈で忘れてたけど、あのバイクのライダーって、いや、まさかな...」

人間、嫌な考えは止まらないものであるので、必死に振り払い、家への道を下っていく。

そしてそんな事も忘れ、帰って安心して疲れがドッと出たのか、すぐに眠ってしまった。

夢を見た、あの峠だ、あの時見た人が下から手を振って何か叫んでいる。

------------あ-----t-----------------ありg------------

「はっ!夢か...何か言ってたな...あ...り....?ありがとう....?見つけてくれてありがとう...って事か...」

あの人は死んでからずっと彼の地に縛り付けられたままだったのだろう

だからか...私が話しかけた時微かに微笑んだように見えた、ただただ幸せそうに、人と関わる喜びを噛みしめるように...

後日、彼の地へ赴き手を合わせてきた。

どうやらそのライダーの霊は成仏したのか私の目の前に現れる事はなかったが

手を合わせているとまた

「ありがとうございます」

とはっきり声が聞こえた。

今でもK峠に行くと事故をしそうになってもギリギリで止まれたり、彼に守られているような気がしてならない。

そんなちょっといいお話でした。

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