あるところに「しんちゃん」と呼ばれる男の子がいました。
しんちゃんは一人っ子で、両親にとても可愛がられていました。
しかし、そんなしんちゃんにも弟ができました。
両親はしんちゃんよりも弟を可愛がり、そのことをしんちゃんはとても憎みました。
いつしかしんちゃんは弟をいじめるようになりました。
それでも弟にとってしんちゃんは、頼りになるお兄ちゃんでした。
そんなある日…
しんちゃんが5年生の時、弟が交通事故で亡くなってしまいました。
そのことをしんちゃんはとても喜びました。
「これで僕もお父さん、お母さんに可愛がってもらえる!よっしゃ!」
その後しんちゃんの思惑通り、両親はしんちゃんを以前のように可愛がるようになりました。
それから一週間が経ち…
しんちゃんにある声が聞こえてくるようになりました。
「し………ち……ぇ」
「し………ち……ぇ」
最初それを何を言っているのかしんちゃんは分かりませんでした。
ですが、その声は日に日に大きくなっていました。
「しんちゃん……ぇ」
「しんちゃん……ぇ」
しんちゃんは気づきました。
この声は弟のものだ。
そして、その声は
「しんちゃんまえ」
「しんちゃんまえ」
と言っている。と。
生活している中、学校へ行っている時も、お風呂に入っている時も、寝ている時もその声はずっと聞こえていました。
そんな生活が2ヶ月ほど経ったある日…
しんちゃんは携帯を見ながら横断歩道を渡ろうとしていて、その声が今までで一番大きく聞こえました。
「しんちゃんまえ!」
その声に前を見ると、
「ブーン……」
と、一台の大型ダンプが横切りました。
弟はこのことをずっと教えてくれていたのかと、しんちゃんは泣きました。
そして、今までの行動をとても悔やみました。
しかし…
その声はなくなるどころかむしろ大きくなる一方でした。
それだけでなく、しんちゃんの名前「しんじ」に変わっていました。
「しんじ、まえ」
「しんじまえ」
「死んじまえ」
作者maki-s
友達に教えてもらった話です。