中編3
  • 表示切替
  • 使い方

継続する

夢の話をしよう。

nextpage

wallpaper:51

高校時代のある日、授業が終わり

地元の幼なじみと寄り道を楽しんだ。

田舎暮らしの僕にとって、電車通学中の

寄り道は大きな楽しみであり、時を忘れて

遅くまで出歩いたものだ。

nextpage

wallpaper:962

僕の地元は、工業地帯だ。

鈍色の工場は日夜問わず稼働し続けている。

夜になると電灯が光輝き、少ない街灯の

代わりを果たしつつ、工場はその存在感を

一層強めた。

nextpage

そんな景色を眺めつつ、少し遅めの帰宅を

済ませた僕は簡単な食事を取ると、風呂も

入らぬまま早々に二階の自室へと引き上げた。

布団に寝転がると同時に眠りに着いた。

nextpage

wallpaper:156

……

夢を見ていた。

祖父の家に家族で来ているようだ。

そこは、実際には祖父の家ではなかったが、

古めかしくも懐かしい、まるで住み慣れた

旧日本家屋のような佇まいだ。

nextpage

皆で食事をとっている。祖父の家に行くと、

いつも祖母が焼き魚を出してくれた。

その魚を食べていた時、祖父が口を開いた。

shake

「わしは奇病に感染した。もう長くはない。

この奇病は強い感染力を持ち、伝染する。

激しい痛みに苦しみながら吐血し、血便を

垂らし、絶命する。」

皆が泣いている。

nextpage

…気がつくと目が覚めていた。

嫌な夢を見た。トイレへ行くことに少し

抵抗を感じるが、生理現象には勝てない。

「じいちゃんはガンで死んだはずだ。

奇病な訳はない。おかしな夢だ。」

僕は怖くなると一人言を呟く癖がある。

用を済ませると早足で布団に入り、目を瞑る。

nextpage

祖父が亡くなった翌日から夢が再開していた。

皆の表情は暗い。祖母が口を開く。

「私も感染した。もう助からないよ。

もう、私に近寄ってはいけない。

あんたら迄、死に絶えるのはゴメンだよ。」

shake

wallpaper:1072

…さっきと同じ夢?ありえない。

初めての経験に違和感を覚えた。同時に、

背筋が冷たくなるのを感じた。

母の嗚咽が聞こえる。

nextpage

…2度目の目覚めだった。

草木も眠る丑三つ時。僕は目覚めたことに

安堵と後悔の入り交じった感情を抱いた。

怖い。未だ夜は明けない。

nextpage

眠れば夢が再開するだろうか。

次は誰が感染し、死ぬのだろうか。

別の夢を願いながら、眠りに落ちる。

nextpage

トイレから母の呻き声が聞こえる。

あの夢だ。

姉が泣きながらドアを叩いていた。

祖母が亡くなり、母にも感染した事を

僕は理解した。

「…開けたらダメよ。私で終わりにしよう。

近寄っては駄目。」

wallpaper:1072

扉の下、木製の床が赤く染まっていく。

やけに黒い赤色だ。そんな気がしたのは

床の経年の為だろうか。

nextpage

何故、継続するのか。

何故…何故…。

次は自分が感染するかも知れない。

この、嫌に生々しい空気は本当に夢の中か?

痛みを感じるのではないか。苦しいのか。

死にたくない…死にたくない…。

nextpage

恐怖に身を震わせながら、目を覚ます。

良かった…。自分の部屋だ。

wallpaper:786

カーテンの隙間から窓を見上げる。

空が明るみ始めていた。工場の煙突からは

煙が立ち上っている。朝だ。

身体がベタつく。大量の汗をかいていた。

昨日風呂に入らなかったことを後悔する。

朝、シャワーを浴びて早めに学校にいこう。

ふと、壁に目をやる。

wallpaper:74

容姿端麗な外国の女性歌手のポスター。

…昨日と表情が違う?

そう呟きながら、足早に階段を降りた。

nextpage

夏の寝苦しい夜の話でした。

Normal
コメント怖い
2
3
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

鏡水花様

ありがとうございます。
随分と前の話の為、記憶も薄れてしまいましたが
薄気味悪く、奇妙な夢だったと思います。

継続する事で恐怖が増していく様子を書きたかった
のですが、稚拙な文章になってしまいました。

返信
表示
ネタバレ注意
返信