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短編2
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激務

「頭の後ろでずっと悲鳴が聞こえるんです」

あぁまた精神疾患か。

公衆電話から通報の時点で嫌な予感はしていたが、案の定だった。

通報現場に到着。推定20代前半の女性。自力歩行で救急車内へ。少なくとも急患ではない。

既往症に精神疾患があり、近くの○○病院へ通院しているとのこと。現在の主訴は不安感。

「あのね、かかりつけの病院は夜間見てないから。どうしても病院行きたいなら遠くにいくことになるけど。御自分一人で帰ってこれんの?」

その日11件目の出場。異常なペースだ。

深夜2時過ぎで疲労がピークに達している。

疲れが態度に出てしまう。隊長に気づかれると後で厳しく怒られてしまう。

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最近やっと隊長に認められ始めた。

こうして1日のうち何件かは全ての処置(患者を病院に搬送するまで)を自分に任せてくれるようになったのだ。

失敗はできない。

気を取り直しバイタル確認。数値的な異常はなし。少し脈が速い程度だ。

そんなことは意に介さず女は話し続ける

「聞こえませんか?ずーっと叫んでる」

聞こえねえよ。一緒にすんなよ。いや我慢だ。話が通じるまで我慢。

「あのね?俺の話聞こえてる?かかりつけの病院はやって」

突然

sound:39

「ギャアアアアアアアアァァァアアッッアァァァァッッ!」

……何だ今の。

怯えた様子で女が言う。

「聞こえませんか?聞こえたでしょ?ねぇ…」

確かに聞こえた。凄まじい悲鳴だった。

咄嗟に隊長達の顔を見る。だが何の反応もない。聞こえているのは俺と、この女だけのようだ。

「………聞こえませんよ。病院は行くの?」

平静を装い搬送の意思を確認する。何も聞こえなかった。俺には、何も、聞こえなかったんだ。

…結局彼女は様子を見るということで自宅に帰っていった。

救急隊員になって7年。これが始まりだった。

その後もたまにこういうことがあるんだ。

でも誰にも相談できない。狂ってると思われるしね。

まぁ最初の頃は怖かったけどもう慣れたよ。落ち窪んだ目で友人は笑った。

Concrete
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