これは私の父が体験した話です。
私の曾祖母がなくなったのは今から十数年前。その後を追うように曾祖父も間もなく亡くなり、孫の中でも長男である私の父親が法事の一切を取り仕切っており、一家に二つの祭壇があるというなんとも言えない状況でした。
そんなある日の深夜、父が自室で職場から持ち帰った仕事をしていると、一階からなにやら足音が聞こえたそうです。
私の家は二階に家族全員の寝室があるので、当然だれもいるはずがありません。
すこし手をとめ、その足音に聞き耳をたてていると、廊下をいったり来たりしているような気がしたそうです。
父は直感的に、これはきっと曾祖父母のどちらかだと考えたそうです。
しかし、そこまで大きくはない家ですので、すぐ下を徘徊されているとなると父も平常心を保つので必死であったそうです。
しばらく足音に耳を澄ますと次第にひとつだった足音が二つに増えたように感じたそうです。
その二つの足音は次第にその歩く速度を速め、いよいよ聞くに絶えないものになってきたそうです。
父が下階の様子をみにいかんと腰をあげた瞬間に、廊下を踏む音が階段を踏む音に変わったそうです。
「上がってくるな!」父は気付けば恐怖心でそう叫んでいたそうです。
階段脇の非常灯のみがぼんやりと照らす下階を睨む父は、しばらく得たいの知れない何かに無言の牽制をしていたそうです。
滑稽な構図ではありますが妻と子供が眠る二階にソレを寄せ付けんとした父の勇敢な行動でもあったのかもしれません。
それ以降は足音もやんだそうです。
あとから父は、おそらくあれは曾祖母が曾祖父を追いかけていたんだろうと言っていました。根拠はありませんが生前の曾祖父母を知っている私からすれば納得もできるような気がしました。
作者オバジータ
乏しい文章力が目立ちますが、これに似た話を体験したかたまたは知っているかたがいれば是非とも教えていただきたく存じます。
#gq2015